『まちまち』感想:幼馴染の関係と身長のコンプレックスを合わせた青春漫画

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かがみふみをのかぼちゃワイン幼馴染カップルの話。全2巻でちょうどよい長さ。

幼馴染という要素と、身長という男の(割と深刻な)コンプレックスを合わせて描かれた、甘酸っぱい青春。この漫画の面白いところは、幼馴染カップルが、「付き合った後」に課題(それも外部要因ではなく、多分に内省的)に直面していくところだろう。

以下感想。

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幼馴染の関係の変化

幸福な幼馴染カップルの話。そしてどんなに幸福でも、悩みはつきない、という話。幼馴染の男女で、互いに好き合っていて、しかもそのことをわかっている。やがて二人は正式にお付き合いもする。おいむっちゃ幸せやん、いちゃラブ漫画か、と思いきや、そうはならない。ここに、身体的なコンプレックスの要素が入る時、何も障害なんてありはしないのに、二人の関係は途端に難しくなる

しかもそのコンプレックスが、身長っていうね。ラブコメで、男の身長をコンプレックスとしてことさらにフィーチャーしている漫画は、あまり見たことがない。しかも、幼馴染ものだから、身長が「逆転」しているんだね。つまり、昔は男のほうが身長が高かった。

この幼馴染要素はなかなかうまく使われていて、「逆転」という二人の関係の変化を表す一方で、昔と同じことを繰り返すことで、「本当のところは何も変わってないんだよ」ということを確認する要素にもなっている。

でも、いくら本質的に変わってないと思っても、やはり気になるは気になるんだねぇ。しかも、このカップルは性格的には男が女をリードするタイプ。昔からそうだっただけに、関係の変化を常に身長という形で見せつけられているようだ。変わっていないところもあるけれど、やっぱり変わってもいるんだよ。もうただの子供じゃない。思春期なのだ。

彼女よりも背が低いこと

かがみふみを, まちまち
かがみふみを, まちまち

待ってろ 俺 毎日牛乳飲んでるから」←なにこれ泣ける。胸の大きさを気にして牛乳飲んでる女キャラ、なんてのはラブコメじゃちょこちょこといるし、それは一つの萌え属性だ。でもこれが身長気にして人知れず牛乳飲んでる男となると……やるせない!なんて涙ぐましいんだ。ねぇ。彼女より背が低い、これは男が自信を失くすには十分な理由だよねぇ……。

そのことが彼氏のコンプレックスであることを彼女もわかっているから、彼女も自然と猫背になる。それがまた、男のコンプレックスを刺激する。そしてそのことも彼女はやっぱりわかっているのだけれど、どうしても無意識に背が曲がる。そしてそれがまた……ああ悪循環。

そりゃね、周囲からすれば、君ら好き合っているのに、何をそんな、自信持ちーや!とは思う。このカップルを邪魔する人は作中誰もいなくて、それどころか二人の背中を押す友人しかいない。俺だってそうするだろう。そして、彼も彼女も、それをわかっている。わかっているのだけれど、ダメなんだなぁ。

かがみふみを, まちまち
かがみふみを, まちまち

↑こういう描写がね、うん。うまいよね。気にするなっていうのは簡単だし、気にするようなことじゃないなんてのは、頭では完全にわかっている。でもこれは、理屈じゃない。理屈じゃないんだよ。

三歩進んで二歩下がる果てに

コンプレックスが原因で、二人は互いに想い合っているのに、何度も気まずくなってしまう。気まずい状態になると、二人ともなんとかしようとするのだけれど、いざ顔を合わせるとうまくいかない。もどかしい。けれども、紆余曲折経て、二人は乗り越え、地固まる……とおもいきや、また同じようなことで気まずくなる。なんぼ繰り返すねん!

自覚があるらしく、作中男は「同じところをグルグルしているみたい」というようなことを言うけれど、でも、それはとても現実的かもしれない。コンプレックスって、そんなにスッキリ解消できるものじゃないよな。何度も何度も、打ちのめされて、乗り越えて、よしこれで大丈夫だと思ったらやっぱりまた打ちのめされて、その繰り返し。

まるで終わりのないループのようだけれど、でもそれは決して無駄ではなく。そうして、男・ゆうくんは一つの解にたどり着く。

「悩みって 乗り越えるもんじゃなくて なんて言うか 上手くつきあっていかなきゃいけないもんなのかなってさ」

おお……成長している……。しかもね、これは悩みと一生付き合っていくということで、それを彼女・高木と付き合っていくことと重ねあわせていて、それはつまり一生一緒にいたいってことで超恥ずかしい告白なんだよ!!

ここに至るまで、長かったけれど、よかったな。カップルものでありながら、背が低い、という深刻なコンプレックスを、幼馴染の関係の変化を通して描いた、面白い作品だったよ。

ただ一つ。高木の友達は……なんだろう、1巻おまけの話がえらい濃かったので、まさか同性愛的な?と思ったけれど、その後の展開見るとどうもそういうわけでもないみたい。でもちょっと「うおっ?」と思った。

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