作・赤坂アカ。2022年全28巻。表紙は27巻がボーイズ。藤原書記はアイドルなので見切れている。本巻にて完結、最終巻。最終巻……。本作は2015年からで、本サイトで最初に取り上げたのは2017年の1月。本作の記事で「最終巻」の文字を打つと、何か込み上がってくるものがある。
本作は、このサイトで俺がもっとも絶賛した作品の一つだと思う。だからこそ作品自体は追いかけていたのだけれど、結局最終巻は3年積んだのだね。まぁ最終巻だけ積んだ作品はこの作品が初めてではないし、今も頭の中で浮かぶ最終巻積んでる作品はいくつかあるんだ。それは必ずしもネガティブなものじゃない。読めば終わってしまうという気持ちがあるんだ。それは客観を離れた主観的世界の話だ。ただ確かに、今すぐ読みたかったわけでもない、これもまた事実だ。
まぁでも本作については、ちゃんと最後まで読まなくては、とずっと気にかけていた作品ではある。2025年中に読み終えたかった。
以下全28巻感想。漫画を追いかけることは、読者にとってそれぞれの人生でもあるね。
前回

レビュアー泣かせのエンディングストーリー
四条家との話でもう一悶着あるかと思ったけど、回想でかぐやが土下座していたっぽいことだけが明かされて終わる。そのあとは完全にエピローグモードで、全2巻かけてエピローグを続けた感じだ。会長を見送って、そのあとはサブキャラ含めたそれぞれの完結編というか、締めの物語。
まぁなんということはなくて、会長はアメリカに行って若社長になり、かぐやは普通の女の子(?)になりました。あとみんななんやかんやいい感じです。っていうだけの全2巻。特に見るべきものはなく、完全に後日談でございました。さらに幕間に各キャラの解説文のようなものまであって、これやられるとレビュアーは書くことなくなるのだが、まぁ見ていこう。
ミコちゃんは邪悪
個別で見ていくと、印象に残ったのは会長アメリカ行き前日のときのミコちゃんだろうか。ミコちゃんは本作でも癖のあるキャラであった。会長に対して、かぐやがいなかったら会長の彼女は自分だったかもしれないと思わせぶりないう時の

この顔よ。ミコちゃんはこういうジョークが好き。自意識も自尊心も高すぎる。その裏にあるヘラ期である。好意的に言えば、これは彼女の信頼の証だといえば、まぁそうだろう。いやでもこれ本性が垣間見えているというほうが近いやろ。

(会長のからかい方に性の臭いを感じる)
かぐやの臭いセンサーは正確です。ミコちゃんは確かに会長とかぐやをベストCPだと思っているのだろうし、またそれを邪魔する気もないだろう。しかし性の臭いをばら撒いていることもまた事実。ミコちゃんはそれをやってしまうんです。石上たいへんだね……。
こんなミコちゃんは石上が引き取って、一応告白するしないバトルを繰り返すというめぞん一刻式循環型のエピローグが示されていたが、正直この二人の恋愛バトルはそんなに面白くなさそうで不思議だ。
早坂愛は働かない
あとは、最終回が唯一大学生だった早坂愛か。彼女にとって、青春という意味では高校までは違ったんだろう。裏方に徹してきたものな。藤原書記に甘え切っており、でっかい赤ちゃん扱いで完全に立場が逆転しているが、これも彼女なりに何かを取り戻しているんだろうか。
解説文によると高卒ニートになっているらしい。大丈夫か?ってかあの各キャラの解説文みたいなのをされてしまうと、感想書きは書くこととてもやりづらいんだけれど、早坂については解説文のほうが最終回、みたいなところがある。
まぁ既に一生遊べるだけの資産はあるのだろうし、また彼女のスペックならその気になればどうとでもなるかもしれないけれど、しかし時間の流れは残酷だけどなぁと思ったりなんだりもする。何もしないことで、逆に労働意欲がわいてきているらしいので、手遅れにならないうちに社会参加するとよかろうが、どうせならいっそこのままわけわかんないことしてほしい気もする。
あと大学生ミコちゃんが案の定許されない感じになっており、石上の苦労が察せられる。真面目な話少し家父長制発揮した方が馴染むんじゃない……石上には無理か。
成功者のカタログ
全体的に、彼らが社会的に成功している様を見せつけられると、なんだか少し鼻持ちならない感じはした。成功者のカタログみたいになってんぞ。そういやこいつら金も人脈も才能もチートなんだよな、と思うと素直に入り込めないお年頃(爺並感)。うーんこれはメリトクラシー。
まぁそうでなくても、漫画キャラの将来って、知りたい気持ちと知りたくない気持ちの両方があるんよ。彼らはどこまでもキャラクターで、本を開けばいつでも在りし日のままの姿でいてほしいし、その先は想像させて欲しい。そういう気持ちがある。なので、公式で全キャラの将来像が描かれたのは、愛を感じる反面、なんだか置いて行かれたような寂しさもまた感じた。
思い返すと
実際のところ、物語としては文化祭編で実質的には終わっていたのかなぁ、と思う。文化祭のキスがクライマックスであった、というのは偽らざる正直な感想だ。なのでまぁ、15巻だね。なんとなく15巻だったかなぁと思ったら本当に15巻だったわ。俺にとっても印象深い話だったらしい。

逆にいうと、ここからは徐々に俺のトーンもダウンしていって、最終的には積読、になってしまった感じ。
同じように、長いこと積読した末に読んだ作品としては、謎の彼女Xなんかを思い出す。

本作はかぐやが普通の女の子になる過程を描いたものだが、謎の彼女Xも、特殊なヒロインが普通の女の子になっていく過程を描いたものだった。ボーイ・ミーツ・ガールの王道の一つなのだろうね。そして謎の彼女Xも最後の方はマンネリであった。ただ感慨が余韻となって強く残った作品でもある。
謎の彼女Xがほとんど彼と彼女の話であったのに対し、本作はもっと多くのキャラで、もっと多くの表現したい世界があったのだろう。世界が広がった分だけ、彼と彼女の関係、という観点ではどうしても密度が薄まる。これはトレードオフだね。
特に一人一人取り上げてのエピローグに1話ずつ使ったのは、愛を感じる一方、作者さんのいう「かぐやが『普通』を目指す物語」に収まっておらず、別世界の物語がいくつも展開していた、とは言わざるを得ない。それは良し悪しというより、そうなっていた、という感じだ。
想い出がいっぱい
一方で、積読していたとはいえ、いっときは絶賛し読むのが楽しみであった本作のラストを見て、思うことはやはりある。感慨深さはあるんだ。だって、この作品が連載されたのは2015年、このサイトで取り上げたのは2017年1月、そしてもう2025年12月、初めて作品を取り上げてから、ほぼ9年近く経っている。この9年、本当にいろいろなことがあったよ。
社会的にも大きな変化があった。本作は平成後期の文化・価値観が非常に色濃く出ているように思う。男女の距離感や、何が良いとされて、何がイケてないのか。エピローグは特にそれが如実に出ていた。一方2022年とは、世界的なパンデミック騒ぎや戦争を経て、その雰囲気が少しずつ変わっていく時でもあった。狭間の時期だ。その意味で、28巻当時本作は既に古くなりかかっていたかもしれない。変化は今も続いており、これから大きく変わるだろう。2010年代に成功とされたものは何か、後年になって懐かしく思い返されると思う。そして恋愛の価値観、あり方も。
一方で僕にとっても、劇的に環境が変わり続けていた時期だった。そして2022年は特にしんどかったので、サイト自体更新がだいぶ滞っていた時期だった。もう少し時期が違ったら、積読しないで全部読んでいたかもしれない。
作者も作品も読者も、みんな同じように歳をとっていくんだねぇ。大きな時代の流れと一人一人の小さなしかしかけがえのない流れの中で、その時その瞬間に作品との関係は生じる。それを言語として固着するのが、感想であったりレビューであったりする。
だから作品や自分の記事を読み返すと、社会や自分がなんとなしに見える。そして色々なものが変わっていき、確かなものなどないんだなぁと思う中で、どこまでも古典的なボーイ・ミーツ・ガールだけは、これはなんだか、ずっと確からしいと思えた。
本作は、俺が後年思い返した時に思い出される作品の一つであると思う。皆さんお疲れ様でした。

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