赤坂アカ, かぐや様は告らせたい 15, 2019
丸々一冊白銀とかぐやのラブ・ストーリーという贅沢な構成。会長が氷のかぐやの心を溶かすまで。いやもう溶けているんだけれど。
これまで虚勢を張り続けいていた二人が、痛々しいほどに己を曝け出す様に、青春の眩い光を見た。二人の感情の吐露は、この物語のネタバラシ編のようだけれども、人の感情という曖昧なものに正解も真実もなく、解き明かそうとすればするほど闇は深まるばかりの深淵。その一人で歩くにはあまりにも暗く果てしない道を、この二人は共に歩むらしい……ラブコメ浪漫がここにある……。
この作品読むと、なんかこう生きててよかった思う。。。そして次の巻が出るまでは頑張って生きようと思える……。以下15巻感想。
氷かぐやの氷を溶かせ
本巻は何と言っても氷のかぐや姫。多分俺以外にも多くの望んでいた人がいたであろう、氷かぐや編である。1巻丸々かけて、会長と氷かぐやのラブ・ストーリーが展開されるという悶絶してしまいそうなほど贅沢な構成だ。
氷かぐやといっても既に攻略済みであるから、もっぱらデレ編。なにしろ彼女は会長からキッスしてほしい。
↑いつものかぐやからは見られないクールな表情からのデレありがとうございます。っていうかキスをキッスって言うのずるいわ。ツンデレ先輩もキッス派だしなんなん。っていうかツンデレ先輩は可愛すぎるから石上くんにもらってやってほしい気もする。
そんな可愛い可愛い氷かぐや編だが、これはかぐやのもっともデリケートなところに踏み込む話でもある。なぜならば、氷かぐやはかぐやの自己防衛が最も顕著な形で表出した人格だからだ。それはかぐや自身を守る攻撃的かつ防衛的な人格であり、同時に極めて優秀だが共感性に乏しい故、周囲を傷つけてしまうことを事前に防ごうという、不器用な優しさの人格でもある。
まぁあんな教育を受けていてなお相手を慮ることができるのだから、共感性に乏しいとは言ってもその性根は優しいのだろうね。もちろん、人を傷つけることで、傷つけられた相手に自分も傷つけられるから、というのはあるだろうけれど、その傷を開き直って受け止められるような、無感情な人間では決してないわけだ。
そうして生まれた氷かぐやは、人の善意や優しさを避けるようになってしまったので、初めの頃に会長がした優男的アプローチはアウトオブ眼中であった。皮肉なことに、初めてかぐやが会長を意識したのは、一念発起した会長の「勝負しろ」という一方的な敵意故だ。
二人の過去に想いを馳せる
ここから二人のバカバカしい恋愛バトルが幕を開けることになり、その物語は大層俺らを楽しませてくれるものなのだけれど、しかしその奥底にある二人の物悲しさには想いを馳せずにいられない。
まず氷かぐやは、善意を信じられないが敵意は信じられるという非常に悲しい状態であるし、会長にしたって、あの才能の塊みたいなかぐやに挑む原動力を辿っていくと、母親に拒絶されたという幼少期としてはこれ以上ないほどに悲惨な過去がある。
会長は割と家庭環境には恵まれていたと思っていたのだが、会長兄妹がまっすぐに育ったのはどうやら親父さんの教育の賜物らしい。あの親父さんが未だに諦めきれない女性なら、素敵な女性なんじゃないかと思いたいが……うーん、そうでもないってことなのかなぁ。
俺を悶絶させまくったあの素晴らしいラブコメ話の数々の背景が、こんな重々しい設定だったとはね……いや、だからこそ面白かったのかもしれないな。そしてこれだけのドラマであれば、真正面にその話をシリアスに描くっていう構成も考えられただろうに、あの副題を再募集する羽目になるくらいアホみたいな恋愛バトルに落ち着かせたのだから、いや本当に素晴らしいとしかいいようがないよね。
完璧なキスシーン
本巻ではついに、虚勢を張り続けた会長と、己さえも騙し続けてきた氷かぐやが、互いに痛々しいまでに本音を曝け出すというラブロマンス。もちろん、それでもすべてを見せたわけではない。情けない自分を見せたくないという会長、すべてを見せてほしいというかぐや、どちらも決して間違えたことを言っているわけでもなく、これはまぁ個人の恋愛観が如実に出る一大論争テーマです。本巻でも医者と看護師が熱くなって語っていたけれど、実際居酒屋で盛り上がれる話ではあるね。結論がない。
なので、別にこれはどちらが正しいって話ではないんだな。実際、才能溢れるかぐやと、努力肌の会長では、考えに違いがあって当然。かぐやは己の力と意志には自身があるから、ありのままの自分が受け入れられることを渇望するわけだけれど、会長はそうではないからね。きっと相手を幻滅させてしまう、という憂慮のほうが先にくるわけだ。まして、相手はあの四宮かぐやなのだから。
議論の結論がどうってそういう話ではなく、重要なことは、そんな考えの違う二人が、互いに本音を曝け出し、その末に、クリスマスの夜の公園で、ぎこちなく肩を寄せて、なんてことのないキスをする、というのが……ええ、最高でした。はい……。コマ割り小さくしやがって……余白が贅沢じゃないか。
このできすぎたキスシーンを二人のファーストキスにしなかったのは、なんとなくわかる。二人のファーストキスはウルトラロマンチックだったけれど、わけもわからず大人のキスをやっちまっていて、これはまぁ失態なんだけれど、でもそういう無様さが、ラブコメ浪漫的には逆にアリだなぁ、と。このキスシーンは完璧すぎるからね。その後の、会長からもらったプレゼントの箱に入っていた布地で髪を結んで、氷かぐやからいつものかぐやに戻る流れまで、なにもかもが完璧だった。この完璧さ、ファーストキスだったら逆に鼻白んだかもしれない。やはり作者さん天才か。16巻も楽しみすぎる……。
ところで萌葉は薄い本向けだよね
どうでもいいけれど藤原妹の萌葉はなんなんだろうか。会長に手錠をクリパでプレゼントってこれ割とヤバい子だよね。これは作者さんの性癖が出ているんだろうか。
同人版の人、せっかく藤原姉妹好きみたいだし、彼女の歪んだ性癖に会長がハメられてしまう……的な展開をやってみてもよいのではなかろうか。大荒れ必至かもしれないが……でも早坂ヒロインが許されるなら萌葉ヒロインも許され……るのか?まぁ早坂ほどの需要はないかもしれないけれど、正しく同人版になる気はする。そしてなにげに手錠プレゼントしてブチギレる会長妹が可愛かった。同人版はどうせならこのへん攻めてみてほしいなぁ。
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