『男女比1:39の平行世界は思いのほか普通』2巻感想:雌豚たちの止まらないモノローグ

作・きっさー。2024年2巻。

なんだか読んでいてだんだんテンションあがってきた。

無粋なことだが、この作者さんは何歳なんだろう。IMOUTOブランドの強さとか昔の流行語やネットスラングがちりばめられているあたりに、同じ時代を駆け抜けた者の残り香を感じる

考えてみればこの世界観の根底にあるだろうヤンデレブームやそれに付随するような修羅場など、メインストリームとは言い難かったけれどあの時代に特徴的だった。メインになりきれないのは属性として強いということ以上に、ハーレムという永遠の超人気ジャンルと基本的に相性が悪い属性だったからかもしれない。そういえば、昔ハーレムとヤンデレは相性最悪混ぜるな危険と書いた覚えがあるんだが、それをマジでやったのがこの漫画(?)なのかもしれない

それ以上に、世界観に成熟した社会観とでも言うべきものが見え隠れしており、これはある程度年齢いってないと出せないように思えた、というのもある。

以下勘違いママの出番が少なくて少し寂しかったかれどANEとか妹ふれんず。が楽しかった2巻感想。

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楽しくなってきた

1巻を読んでいた時点では、ひたすらつづく濃いヤンデレ小ネタの終わらない数珠繋ぎに圧倒されてしんどかったという気持ちもけっこうあのだけれど、この2巻にもなると、読んでいて若干テンションが上がってしまった。多くのキャラクターが登場するが、誰がヒットするかにその人の性癖が出るだろう。

個人的には恥ずかしいANEとネットで真実の哀れな雌豚が好きだわ。

オットウト(夫+弟)の嫁

姉はまぁ完全に靄子姉さんです本当にありがとうございました。

オットウトとかいう響きがオットセイの略語を知ったんだけれど、これは作者さんの造語なのかそれとも界隈で使われている言葉なのかは知らない。少なくとも姉ログで見たことはない。とりあえずちぃ覚えた。

ナマモノで夢やっているだけあって想像力と言語能力に長けているのか、雌オーラなど謎の概念を作り出し、またその言葉には生理学的な比喩の多い本作において社会的なものが見受けられるのも興味深い。特に以下は感心した。

「妹は量産される可能性があるけど姉は数量限定」
「希少価値が維持されて値下がりしない」

妹インフレ理論笑う。これは実際に量産されてきたIMOUTOの歴史を知っているからこそ笑えるメタ的なものがある。作品単位でも12人量産されていたし、ラブコメ全体の中でも数多のIMOUTOキャラが生み出され、それは今も続いている。ANEブランドは昔からIMOUTOブランドに比べると押されがちなのは事実。

これは、ラブコメの男女観が基本的に古典的であることとも無関係ではなかろう。性別的にも立ち位置的にも守られポジ安定の妹に対し、姉は女でありながら社会的には目上という属性持ちで、立場が強い。この目上をたてる感覚と恋愛感情の相性が、男からするとちょっと悪いのはあるよね。もちろん昔から姉さん女房という言葉もあるくらいだから、決して否定的ではないんだけれど、言葉ができるだけ親しみがあるとも言える一方、言葉ができるだけ変わっているとも言える。

まぁこの人、弟が望むなら「理想の妹に成る」しお出かけスタイルでツインテ妹風味余裕なんですけどね。属性盛り過ぎ。

でも蒼がほぼ唯一「それなりに茶化せる相手」なのは、なんだかんだでちゃんと姉しているのかもしれない

妹の友達の雌豚

あと好きだったのが、妹・さくらの友達、ネットで真実の雌豚・灰塚美咲。デュフフ、フヒィ系の古より続くネット侍。本作でもっとも一人称拙者が似合うキャラ。

友達・さくらを非実在青少年的兄を慕う残念な子だと認知していたが、それを功を奏して(?)、さくらの承認欲求を満たすために蒼を紹介される。ここは地味にさくらの性格が出ているところだと思った。

そして実在青少年の兄と出会って5秒で雌豚化。

「わたしの下腹部が……骨盤のほぼ真ん中あたりから!訴えかけてくるよぉ!「このひと男ォ!」ってぇ……」

これは生理学的な言葉をレトリックに多用する本作の中では直球なんだが、その中でも印象に残ったのは何故だろう。その後、秒速で雌豚に堕ちるのも良かったが、雌豚属性とはまたニッチな……。ってかこの子もニッチな属性盛られすぎなんやで。かわいいの一言で脳内オホ声余裕。このオホ声雌豚は突然「おらっいけっ」とおらつくのと表裏一体。

最終兵器ママ

残念だったのは本巻では若い子に尺が割かれてしまったために勘違い淫乱ママの出番が少なめだったことだろうか。護衛の妄想系少女・美紅がデカパイを褒められただけで致命傷を受けるガラスのハート。裏読み過多と若さへの嫉妬という大人の負の側面を持つ。

青春のやり直しに強い執着を持ち、昨日は同級生、今日は後輩と遡っていくママに明日はない。少しでも指摘されると「こんな必死なママ恥ずかしいよねぇ」とボロ泣きするなどとても扱いづらい。実際このオバサン自虐は姉と妹も同情的であり、実際この世界における末路扱いなんだろうか。

そういえば娘に自分が果たせなかった青春をさせようとしているママはこの世界にもけっこういるようだが、この平行世界における一般的な教育ママなのかも。その中で、39倍の倍率を40倍にせんと現役ヒロインとして紛れ込む彼女は、この世界でもリスペクトされる戦士なのかもしれない。つまり制服は戦闘服うんぬんかんぬん。

男と女の700万年戦争

ということで、なんだか読んでいるとだんだん本作の世界観と自分の立ち位置のキャリブレーションが出来てきたからなのか、1巻と同じノリが続いているにもかかわらず、1巻の時より楽しめた。

本作は一見するとというか何度ガン見してもバカバカしい世界観なのだけれど、しかしこの逆転世界は、現実における男女のパワーバランスについても考えさせられるところがある。僕らは当世の教育において、ジェンダーフリー・男女平等というべき論を教わっているけれど、実際的に生きていれば、男女の生物的・遺伝的な違いを感じずにはいられない。現代はそれを口に出すのも憚られる時代だけれど、歴史を鑑みるに、男女観は常に変遷しており、正直トレンドに過ぎないところが大分あるように思え、多分どこかで揺り戻し(と感じられるもの)が来るだろうと思う。あるいは、もうきつつあるかもしれない。

男女は700万年前の猿人の頃から、もっとも古い対立軸であり共存する集団だ。それは生物が雌雄に分かれたときからの必然であって、雌雄の在り方は生物によってかなり異なるけれど、少なくとも机上の学問が教えるような本質的同じ存在には見えない。

まぁだからといって本作の誇張された女性像はかなり行き過ぎではあるけれど、しかし極端なだけにわかりやすくもある。多分男女比39:1だと全然違う世界になるというか、こういう狂い方はしない、なんなら秩序があるのではないか、とすら思われる。そういえばSF作品月は無慈悲な夜の女王の月世界は男女比10:1だった気がする。あの世界では多夫一妻として平等的な秩序があった。それに対し、女性のほうが多いとその世界は修羅になるのではないか、というのはなんとなくわかる。単純な一夫多妻にならないのは、男そのものの数が少なすぎて男の政治力が皆無だから。あと女は産めるのが本当に大きい。

まぁ、男女比は多分1:1が一番安定するんだろうね。職場レベルでも、男だけ、女だけだとけっこう極端になりがちだしねぇ。異性が一人入るだけで世界は本当に変わるのは不思議。それはオッサン・オバサンで良くて、本当に一人入るだけでもガラッと変わるのは、体感したことある人もけっこういるのではなかろうか。不思議だよね、男女。

3巻出てます

そんなわけで、存外楽しかったわけだが、けっこう疲れる漫画であることも確かで、既に3巻が出ているのだけれど、次にいつ読むかは不確定。ってか待ってたらKindle Unlimitedにきそう(乞食並感)。

ああそれにしても、懐かしい匂いがあちこちからする漫画だった。当てられて本記事にもだいぶ懐かしさを散りばめてしまった。これは時代を生きたものの責任だから(迫真)。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 確かにこの作者さんは語彙力の使い方が独特で面白いですよね。
    登場キャラは全員根底は同じ欲望を持ちながら出力の違いで上手く差別化し、主人公実は重たい設定の世界を天然を保ちながら素直に楽しめている絶妙なバランス。
    キャラの使い方も上手だと思いました。

    • 本作はほぼほぼ言葉で構成されているように思えます。漫画というよりは、言葉にイラストを載せたというほうが実態のような。
      大元がだいたい同じなのに出力の制御で違いを生み出しているのはなるほど確かにです。
      言葉がメインだからこそ変形で勝負できるのかなぁなんて思いました。

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