読み始めた時は、「男女比1:39の平行世界の俺と身体交換したったwwwww」とかいう設定の披瀝から始まって、女たちの心の発情シーンばかり見せられたもんだから、オイオイこれはまた……と思ったのもつかの間、どうやら入れ替わり前の自分はかなり防衛的な態度を取っていたことが徐々にわかってきて、「あー、なるほど、そっちかぁ……」と思うなど。この世界の男、人権ないんだろうなと思いました。
まぁ真面目に考えればそりゃそうなるよね。社会において、数は力なので。以下1巻感想。ハーレムは哲学、ハッキリわかんだね。
それにつけても、勘違い淫乱ママとかいうパワーワードよ。
オススメ文
今回は久しぶりに「管理人にオススメする」でございます。積ん読もオススメもたまっております……。
個人電子出版作品。
FAIさん
いわゆる貞操観念逆転物であり、王道なストーリー。電子ならではの色使いと独特なコマ形式は好みが分かれますがハマればとても良い作品です。
これって王道なんですか。実は貞操逆転物未だ読んだことないんですよね。そっちのジャンルだとそうなのかな。
コマ形式はこれ、pixivで見られるヤンデレ1枚絵シリーズみたいな感じですね。絵の癖もそんな感じ(偏見)。最初読み始めた時は400超というページ数をみて「これは無理かも」と思ったのですが、十数ペーじ読んだあたりで思想的なものを感じられて、存外面白く読めました。といっても、さすがに文字列全部をじっくり読めるほどではないですが……なにしろページ数が多い……。
内容はあるよう
さて、本作を読み始めた時の第一印象は「これまた素直な作品やなぁ」でした。男女比1:39というのがまず笑えるし、しばらくは登場する女性キャラたちが発情している内面をひたすらに見せつけられるので、印象としてはpixivにあるヤンデレ部文字数多めを単行本化してみました、みたいな感じ。
しかし十数ページも読むと、どうやら捻くれた思想的な作品であることが察せられました。というのも、本作は「平行世界の自分と入れ替わった」という設定なのだけれど、どうも平行正解の自分が不幸せな生活を送っていたことが窺えたので。なので、あー、これはもしかしてハーレムラブコメと見せかけたハーレム(哲学)思想編なのかと。真っ先に思い出したのは、このサイトだと何度かネタで取り上げている「鬼が出るか蛇が出るか」です。

この作品には、回想でハーレムの圧に潰されて壊されたと思われる先代なる者が登場するのですが、本作はそういうハーレムで壊される男を思わせました。
このへんのハーレム論については100カノあたりでも語っていることではありますけれど、ハーレムって男にとってしんどいはずなんです。ワンナイトならともかく、特別好きでもない女と生活なんてできないからね。増えればその分負担になるし。
真面目に考えると、少なくとも短期的には男に選ばれるという女側の競争を減らすので、女性優位だと思います(少数の男性に権力が集中するため、長期的にはその限りではないです)。実際、ラブコメでハーレム支持する人って、複数ヒロインが好きというより、ヒロインを切り捨てるのが忍びないからって人のほうが多いんじゃないですかねぇ。
まぁそういう実利よりも、現実的には倫理的なところが問題になるわけですが、極端な設定可能な漫画ではハーレムを正当化するやり方はいくつかあり、そのうちの一つが男女比の調整になります。某ながされたやつとか典型です。明言しなくても、実質的に同じような状況にしている作品は多いです(レギュラーキャラの男女比を調べよう!)。で、本作は男女比が1:39出有ることから、男女比調整系のハーレム正当化物語といえます。
これだけ見ると男に都合の良い世界という感じがしますし、最初はそういう感じかなと思いましたが、本作はもっと真面目です。男女比1:39が織りなす、絶対的な数の少なさからくる男性の人権無視が表現されています。まぁそりゃそうだよね、この世界における男性の政治力など皆無でしょう。しかも子供を産むのは女性という役割は変わっていないので、ますます男性は種馬としての消費物のような側面が強くなっているのではないでしょうか。
実際、本作の男はあまり幸福そうではないです。というより多分、不幸だと思います。これは非常に示唆的です。男女比1:1の我々の世界において、生涯未婚率は男のほうが圧倒的に高いことからわかるように、少なくとも性愛戦争では女より男のほうが激しいのですが、だからといって男女比で女性比率を上げすぎると、性愛戦争では苦労しなくなる代わりに、圧倒的な数の差で、男性の社会的な人権が失われてしまうんですねぇ。
作中で、男は働かなくても暮らせるとありましたが、これはこの世界で男の自立が難しいのと表裏一体と思われます。もっといえば、男には期待されている生殖という社会的役割があり、それ以外のことはやりづらいってことです。どっかで聞いた話でしょうか?そう、まさしく本作は正しく貞操逆転モノなんですね。
そういう話なので、タイトルや漫画のフォーマットとは裏腹に、本作は世界観で考えさせるタイプの漫画でございました。ただストーリーはないです。
勘違い淫乱ママでごめんね
ということで存外面白かった作品なんですけれど、まぁそんな彼是考えなくても、カジュアルにテキトーに読み流して頭のおかしな女性たちの淫乱ぶりを楽しむこともできます。っていうよりそっちのほうが真っ当な読み方の気もする。
正直女性たちはどれもどこかで見たことある感じなのですが、その中でも主人公の母こと勘違い淫乱ママ(35)は白眉です。
息子に自分を名前で呼ばせたがるガチ勢で、制服で息子をお出迎えして同級生プレイを迫るなど青春のやり直しに余念がない、精子バンクで主人公のことを産んだ、息子の生精子で孕むことを夢見る実質処女。正直他の女子たちは誰が誰だかという感じなんですが、この母だけは強烈な印象を残している。
息子が自分に欲情している!と思い込んでハッスルするママと、やっぱり若い子がよかったんだと落ち込むママの高低差位置エネルギーから何かパワーをもらえました。
正直2巻読みたいかと言うと微妙なところではあるんですが、この淫乱ママがこれからどうなっていくのかは見たい気持ちがあります。元の息子にナニをしていたかも知りたいところです。
コメント
コメント一覧 (4件)
マーなろうとかハーメルンに死ぬほどある設定ではありますが、漫画にして改めて読むと中々興味深いです。そして母のインモラルさがエグい(笑)。
記憶喪失になった息子を悲しむでもなく「それはそれで」と受け入れるどころか、人格の変化は生殖に都合が良いと肯定する母が本作一番のホラーですな。
ははぁ、Web小説系は昔ならきっと読み漁ったでしょうけれど、そうなんですねぇ……。
そういえば、記憶喪失の受け入れというところに、端的に彼女らの異常性が表現されていますね。
異常というより、それが普通なんでしょうね、この世界の。
個人的に貞操観念逆転作品は主人公が前世の価値観で無自覚に女性達に『普通』の応対をして知らず知らずの内に…と言った展開が定番かな、と感じてます。
天然主人公の言動に情緒を壊されていくヒロイン達の過剰反応をギャグとしても楽しめる作品でした。
なるほど、そういう感じなんですねぇ……以前にもサイトで貞操逆転については薦められたことがあるので(異種族レビュアーズの時に……)、そのうちにとは思っているのですが。
世界観自体が既にギャグというか笑えますしね。でもどことなく思わせるところがある設定だと思います。