『さつてん!』1巻感想:顔に出ないレイチェルと顔に出るザックによる世界観とテンションのずれを楽しめ

原作・真田まこと、漫画・negiyan。2017年1巻。

何の予備知識もなく表紙がラブコメっぽいというだけで手に取った本書、「テンションとストーリーが全然ちげぇ」と随分攻めた漫画だなぁと思いながら読んでいた。後書きでそういうベクトルのコミカライズだったことを知る。世界観が「インディーズっぽいな」と思っていたのだが、原作は殺戮の天使という1万年と2000年前から存在してそうなタイトルのフリーゲームであったようで、なんとなく納得。

これは自分が原作を知らないからなんだが、前提がないために妙に読解力を要求されたラブコメ漫画。ただ知らないからこそ楽しめたのではないかという気もする以下1巻感想。

目次

ギャグのような真面目のような

まずなんで何も知らないのに手に取ったのかといえば、閉店セールしていたBOOKOFFでたまたま手に取ったからでしかなかった。表紙を見て「これはラブコメ」というそれだけの雑な観点でレジに持っていった。20円だったからさ……。ゲームのコミカライズとは知らなかったし、もちろん元のゲームも知らなかった。

結果としてラブコメには違いなかったんだが、世界観とテンションががあまりにも違い過ぎて、読解を要求された。1巻時点で読み取れたストーリーは「主人公二人・謎の死んだ目少女・レイチェルと殺人鬼・ザックが謎の建物から脱出する」で、これは脱出ゲームというのでもなく、リアルに命がけのため、世界観的にはバイオハザードとかホラーものに近い。実際ゲームはホラーのジャンルだったらしい。

しかしそれにも関わらず、テンションはギャグ。妙に既視感があると思ったら、アレだ、完全に「顔に出ない柏田さんと顔に出る太田君」だった

キャラクターもけっこう被っており、レイチェルは柏田さんだしザックは太田君。

まぁこの作品も決して有名とは言い難いので、知らんがと思われそうな気もするが、しかしタイトルと表紙でラブコメフィールドを駆け抜けてきた紳士淑女ならだいたい内容は察せられるだろう。それです。

「それです」じゃあまりにもあまりだから上記記事から画像を引用すると、こんな感じの作品だ。

東ふゆ, 顔に出ない柏田さんと顔に出る太田君 1, 2018

この絵柄とテンションで切った張ったの命のやりとりをしていると思えばだいたい間違いない。時期的には本作のほうが先だけどね。

ギャグの中にあるマジを取れ

そんなわけなので、読み始めてまず必要だったのは作品の世界がどこまでマジなのかを推し測ることだった。なにしろ何の予備知識もなかったから……。ギャグにしか見えないけれどこれマジで人死んでない?死んでる……。だったので、まぁ多分どうもやってること自体はマジっぽいとはわかったものの、しかし「これ連載でやっていたのは豪気だなぁ」などと余計なことも思ってしまった。

このテンションと世界観の差は面白いものの、読者側に相当のメタ知識と読解を求めるものだから、Web漫画のようなインディーズ感を感じた。謎の少女と殺人鬼が謎の建物から脱出するけど、肝心なことは一切明かされていない状態からのスタート、ギャグの中にあるマジを読み取っていけ、というスタイル。世界観自体もB級ホラー的な荒削りさがあり、後書きでコミカライズだと知って、調べたらホラージャンルのフリーゲームだったと知ってとても腑に落ちた。

また、内容自体は上記の柏田さんと太田君にも通じるラブコメがベースにあったため、性癖的な理由で読み進められたというのはある。主人公が女子二人だったら読めなかった可能性はあるかも。ラブコメは強し。

知らないからこそ?

ということで1巻読み終えたのだが、結果論だけれど、予備知識がなかったからこそ、ほどよく負荷をかけられて読み応えがあったような気もする。世界観のコアについては読み解けるギリギリを残しながらギャグ化されているため、読めば察せられる。

しかし、明らかに変な初心者向けではない登山口から入ってしまったという強烈な実感もあり、いったい本作を読み進めるのが良いのかどうか微妙なところだ。とはいえ今さらゲームやるか?というと多分やらないだろうし、また恐らくシリアス版コミカライズもあるのだが、それは出来の良さを保証するものでもない。というかジャンル自体が地雷原であるコミカライズにおいて、この手のギャグ化は案外楽しめるものが多い印象で、本作もご多分に漏れずなので、変に真面目な話を読むよりもこのままギャグ化だけ読み進めるのも一興かもしれない。

などと言ったがそもそも本作を手に取ったのがたまたま古本屋で安くなっていたのを目にしたからなので、この先続きを手に取る日が来るかは神のみぞ知る。古本屋で安かったからシリーズはもうちっとだけ続くんじゃ。

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