『金田一少年の事件簿』犯人じゃない方の事件簿を読み直す10巻まで

第一巻が出たのは1993年。小学生の頃古本屋にあったのを立ち読みしてビビり散らかした金田一少年の事件簿、オッサンになった今読むと純粋に人間劇場として面白い。そして基本的にミステリーでありながら、その殺人の動機に性愛が絡んでいることもよくあるので、案外このサイト向きだったんだろうかと今さら思う。

まぁいまさらネタバレも何もないと思うが、当然のように読んでいること前提の記事。10巻時点では以下。

  • オペラ座館殺人事件(1-2)
  • 異人村殺人事件(2-3)
  • 雪夜叉伝説殺人事件(3-4)
  • 学園七不思議殺人事件(4-5)
  • 秘宝島殺人事件(5-6)
  • 悲恋湖伝説殺人事件(6-7)
  • 異人館ホテル殺人事件(8-9)
  • 首吊り学園殺人事件(9-10)

ただ今回は、各事件に語るのではなく、まずふわっと10巻まで読んだうえでの全体についてつらつら書いていこうかな。ってかそれだけ書いたらもう異様に長くしまってだね(いつものこと)。

あとラブコメ的には悲恋好きに刺さるのかな、と思ったりもいまさらした。だいたい皆さん恋の恨み、身内の恨み、なんならその合わせ技でやっとりますのでな……。

目次

はじめちゃんと美雪

当サイト的に金田一語るならやっぱりまずは金田一一ことはじめちゃんと美雪の主人公ヒロインカップルになるんだろうか。思い返してみると、後にも先にもなかなか類を見ない王道の幼馴染みップルだった気がする。サンデーでやっていたS(しんいち)K(くどう)と違って常にすれ違っているわけでもなく。昭和の残り香漂う平成初期の漫画ということもあって、男女観もあの時代を感じさせるもので、これはラブコメ的にはけっこう安心できる。この二人の中が少しずつ進んでいくのを心の拠り所にして読んでいた層は、存外多かったのではないか。適度にお邪魔虫も出てくるしね。

時代を感じるのは、特に金田一の身の振り方にあるかな。美雪に少しでも危害が加わるようなことがあれば、激昂し、またそのきっかけになった人、守れたのではないかという人に対してややキツすぎるほどに当たる。客観性を失うわけではなく、落ち着くと取り乱していた自分に気づく。このへんは悲恋湖伝説殺人事件ですっかり有名になったミスターSKこと遠野に対する態度への自己反省にも繋がっている。美雪はけっこう、自分のために金田一が普段見せない暴走をするのを、けっこう嬉しそうなところもあるんだよねー。

ただし、美雪を守り切れず怪我をすると、意気消沈してすっかりやる気を失ってしまう。その場合美雪はエイドリアンとなり「勝って!」と発破掛ける役割が求められる。

まぁ金田一は異人館ホテル殺人事件で秒で死んだ相棒佐木くんときも相当凹んでいるので、彼はそもそも友人知人が巻き込まれて死ぬことにナイーブではあるんだけどね。いやそんなの当たり前やろと思われそうだが、それは通常そうなんだけど、彼は何しろミステリー漫画の主人公ですから……。だいたいオペラ座、六角村、悲恋湖伝説、学園七不思議と学園関係者もここまで散々死んでいるしね。ただやっぱり、美雪については特別なのはそうだろう。

ミエナイチカラ

まぁ身も蓋もない言えば、金田一に主人公補正があるように美雪にはヒロイン補正がかかっているので、普段は特に意味もなくスカートがめくれる程度のことは起きるかもしれないが、命がかかるイベントについては奇妙な力で鉄壁のガード、ってなもんよ。

いつぐらいからか、最近のヒロイン補正はスカートのなびき方とかアングルとか謎の光とかそっち方面ばかりで、肝心の命に関わるようなものはに関しては「え?別に?」という感じだ。ヒロインの守護霊がヒロインの命よりパンツを守るようになったのは守護霊もwokeしてしまったのだろうか。これも世相だなぁ。もっとも本作の守護霊は命もパンツも守りませんがね。

死んでも君が好き(看板に偽りなし)

まぁでも実際、死ぬような状況なんだから無様な格好しているほうが自然というものなので、大事なところだけ格隠した大人の事情を感じるしにポーズしていたら、それは純粋に興ざめだと思う。……といいつつ、金田一の死体には妙なエロティックさを覚えるものが多いことも事実だ。最初のオペラ座なんかで、水に浮いた先生の尻を未だ忘れられないかつての少年は今もきっと多いだろう。決してそれがいいというわけでもない、どちらかというと怖いのだけれど、目がとまってしまった、できればもう一度見たい、そこには知的好奇心だけではない何かの感情がある……。

これはどういう気持ちなんだろうな。生きている時に魅力を感じた身体が、死んでもそこにあるのかを確認したいのだろうか。なかったら消沈するのだろうか。あったら感動するのだろうか。そういう簡単なものではなかろうな。しかし見たいという禁忌の感覚はあった。

まぁオペラ座で土左衛門になった先生はやや特殊だと思うが、実際妙にトラウマとは別方面で少年の心に深く刻まれてしまったのではないか、というその場限りのヒロインはけっこういたように思える。

死んでも君が好きだった(切ない)

実際の事件自体は、小学生から多感な中学生くらいに読むと、本当にトラウマになる作品だと思う。僕は首吊り学園殺人事件は今でも覚えている。あと蝋人形のやつはドラマでも見て本当にこわかったちびるかと思った。今は何も思わない。

そしてこれは金田一の事件簿あるあるなんだが、「どちらかというち被害者のほうが胸クソ」パターン。「これは殺されて当然なのでは?」という事実が犯人時には金田一の口から語られていく。そしてだいたい「一番殺したかったやつだけは生き延びる」という謎の事実。あれだね、好きなものは後でタイプはよくないということだ。せっかく大がかりなトリックやるんだから楽しみたかったのかもしれないが。

犯人たちのトリックにかかる実情を大真面目に検証したスピンオフ、犯人たちの事件簿で明らかとなる。公式スピンオフの中でも圧倒的な存在感でなんなら原作食ったレベルじゃないのかというほどに、インターネットでは知らない人にまでミーム化している。特に以下はよう見る気がする。

  • やることが……やることが多い……(オペラ座)
  • S・KはS(全て)・K(殺す)……!(悲恋湖伝説)
  • やはり暴力……暴力は全てを解決する……!(今回取り上げたやつにはない)

暴力は全てを解決する……!はあまりにも汎用的に使われているせいか、どこかのタイミングで「冗談だとわかっているが……」と苦言を呈している人を見たこともあった。

個人的には「まぁまぁネットミームでございますから」と言いたいところだが、若い人もよく使うSNSであまり面白か敷く使われていると、価値観として取り込まれてしまうのではないか、という心配もあろうがね。

しかしそれ以上に一人の読者としては、「犯人たちの事件簿」のせいで本編の記憶が上書きされる問題のほうが深刻と言える。マジで悲恋湖伝説とか見た瞬間「S・K!S・Kじゃないか!」なってしまった。正直犯人あんまり覚えてなかった事件とかあるんだけど、顔見ると「いや犯人たちの事件簿で苦しんでたのコイツや」って思い出すパターンがある。パロディ漫画の影響力が強すぎる

つづきまして

そんなわけで、次から1つ2つあるいは3つくらいずつまとめて取り上げていこうかなと思う。

金田一少年の事件簿って今読み返すと、金田一くんの思考回路が完全に大人のオッサンのそれでシンパシーがすごいわ。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • テレビドラマも印象深いですが、原作もすごい続いてますねえ。個人的には同じ講談社の推理漫画なら『Q.E.D. 証明終了』の方がすきでしたが。

    • 漫画のほうもなんか色々なシリーズが出ていてよくわからない状態ですが、犯人たちの事件簿でもういいやという感じがあります笑
      Q.E.D. 証明終了は地味に積んでたりします(いつもの)

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