『湯神くんには友達がいない』1-6巻感想:道徳の時間はこれ読ませたらいい、きっと教室気まずくなる

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作・佐倉準。2012年1巻。2017年5月現在、11巻まで出ている。だいぶ前にまとめ買いしていたのをようやく積読消化。

友達が"少ない"ではなく"いない"。0と1の間には越えられない壁がある。深刻度が違う。

閉鎖的な学校空間の人間関係を、孤高のぼっち湯神くん中心に描いた作品。色々と懐かしい気分に浸れる。なんか道徳が科目として必修化するらしいけど、教材決まらないならこれにすればいいんじゃないか 笑。

ラブコメ的に美味しいかと言うと、そういう作品ではないのことを念頭に置きつつ、恐らく一部のラブコメ好きの琴線に触れる。俺はまぁ微妙かなぁ。以下6巻までの感想。

目次

孤高のぼっち

多分人生3回目の、孤高のぼっち湯神くんを主人公に、恐らくヒロインのような気がしなくもないちひろ他愉快な仲間(?)たちによる、あまり輝くしくないが時々青春している生々しい学校生活。

主人公の湯神くんはもちろんだが、他見渡しても誰一人として正しい人がおらず、みんなで手を繋ぎ身体を寄せ合ってなんとかバランスを保っているのがリアルだと思う。そしてその輪の中には、本人たちの意志はともかくとしても、湯神くんもしっかり混ざっている。

この手の話は、説教役というか指南役みたいなキャラが作者の代弁者として出て来ることもあるが、あれは本当に興醒め以外の何物でもない。だがこの漫画にそんなキャラはいない。強いて言うなら、野球部の(前)キャプテンが人格者に思えるが、そういう役どころではないし(6巻までだとモブに近い)。

そうそう、湯神くん野球部でエースってね。野球部のエースって、普通なら学校ヒエラルキーの最上位に位置する。しかも湯神くんは勉強もできる。見た目も爽やか。本来なら素晴らしい学校ライフをエンジョイできるはずだ。

だが湯神くんには友だちがいない。これが性格故であることは、もはや言い訳できない。

けれども、湯神くんは嫌な奴ではあるかもしれないが、悪い奴ではない。むしろ、その性根はどちらかというと正義漢に近い。真面目で、ルールを重んじる。理不尽な目にあって困っている人がいれば救いの手を差し伸べる。

そんな彼がどうして周囲に馴染めないのかと言えば、それは一言、「空気」を読まないからである。共同体における暗黙の了解に従わない。そしてそれが、この日本社会で生きていくにあたり致命的な性質であることは、この国で生まれ育った人間ならば誰しもが理解できよう。誤解を恐れずに言えば、我が国において、その場の「空気」は憲法にも勝る

学校内の一人治外法権

そんな湯神くんの存在は、ほとんどの人にとってはイライラさせられるものだが、ある種の人間にとっては、どこか痛快な存在でもある。それは、その共同体に馴染めない人たちだ。学校でいえば、いわゆるスクールカースト下位の者たちである。

現に、友達が少ない転校生であるヒロイン(だと思われる)のちひろや、引っ込み思案で学校においては中々評価されない歴研(文化部の地位の低さはいまさら言うまでもない)の部長・八重樫などは、湯神に対して好意、ないし敬意のようなものを抱いている。

湯神に苛ついているのは、もっぱら学校内でうまくやっている人間。湯神は実力があるうえに、共同体の不文律には従わないが、公のルールにはきちんと従う。これほどやりづらい相手もいない。正面切って非難すれば、返す刀でバッサリ斬られる。そうして、湯神に対しては無視・嫌がらせなどの形で不満が噴出するのだが(その中に先生まで含まれているのは情けないが現実的である)、ほとんどの場合本人は意に介さないので、もはや一人治外法権状態

現実にも共同体の不文律に従わない一匹狼みたいな人は、それなりの規模であればどんな共同体にもいるよなと思う。そういう人の存在って実はけっこう重要で、やはり共同体の構成員の一人なのだ。タイトルは湯神くんには友達がいないであるが、なるほど彼に社会通念上の"友達"と言える人はいないかもしれないけれど、少なくとも"孤独"ではない。老後は知らんけど。……湯神くんだけじゃないよな、それ。

ラブコメ的には

まーでも、案外寂しくない老後を過ごしそうな気もする。湯神くんそっくりとされるおじいさん、「化けてでてこないかねぇ」なんて思われるくらいには、少なくともおばあさんには慕われていたみたいだし(湯神くんの母には、着物を来た湯神くんにおじいさんかと思ったとビビられているあたり、あまり好かれていなかったっぽいが)。湯神くん自身、家族から困ったやつだなぁとか苦労するぞとか思われているだろうが、嫌われてはいない。

だから、湯神くんにもロマンスの可能性はある。それがあるとすれば、やっぱり、本作の多分恐らく一応ヒロインと思われる気がしなくもないちひろ。読者の神視点だと湯神くんよりよほどイライラさせられることしばしばのちひろ。

こうは言ったけれど、湯神くんとちひろの組み合わせ、琴線に触れる人いると思うな。残念ながら今のところ俺にはちょいと微妙だが、時間をかければ、煮干しのように味わい深いカップルになるかもしれん。そのへんはちひろ次第かなぁと思う。湯神くんは良くも悪くも完成しているので、どういう関係性になるかは、ちひろの動き方次第かなー、と。

似た者同士ということであれば、女版(劣化)湯神であるところの藤沢さんも、出会い方さえ間違えなければ案外うまくいっていたような気がしなくもないのだが、湯神と藤沢さんは全然カプ萌えしないんだよね……。

この作品でそんなラブコメ展開があるとは思えんのだが(あるとすれば最終巻の気がする…)、そういう作品の中に萌えを見出してこそのラブコメ好きとも思う。

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