↑なんか物騒なこと言っているがファミレス漫画でありラブコメ。変人奇人の集うファミレスで今日も今日とて色が舞う。
基本情報
WEB版 WORKING!! | 作品紹介 | ヤングガンガン YOUNG GANGAN OFFICIALSITE
2016年2月18日現在第3巻まで。作者は安定の高津カリノ。Webで連載していた分のリライト。ほぼオール書き直しという豪華構成。サイトでは猫組という分類がされていて、犬組と分類される商業連載でアニメ化もされ有名なほうのWORKING!!とは別物。とはいえ人物的な接点はあるので、両方読んだほうが楽しめるのは間違いない。というか雰囲気一緒だしなぁ。でも犬組よりも出来上がるカップルに癖がある。犬組もたいがいだったけどこっちは「えっと祝福していいんよな?」と思わず聞きたくなってしまう。
ページ数は決して多くないものの、作者の10年が詰まっているんだなと思うと感慨深い。第3巻で本編は終わるが、4,5巻もオマケ的に続くらしい。実はWebにある分はまだ読みきってないんだ俺。作者ページで内容は読めるけれど、せっかくオールリライトしてくれていることだし、新刊の発売を楽しみに待とうかな。あと既刊のWORKING!! Re: オーダー に充実した後日談。
そういや斉木くんは韓国育ちだった気がしたけど、単行本読んだら特にそんな記述なくて、勘違いだっけ?と思って調べたらやっぱり大人の事情が絡んでたみたいね。こういう文化面に影響するのはなんだかなぁ。害もなかろうに。
そういえば全然関係ないけどファミレス漫画といえば昔ハイパーレストランなんてのがあったけど、あれも大概カオスだった。ほんとに全然関係ないな。
だいたいこんな感じ
類が友を呼びまくっているのか、変人奇人が集まるファミレスが北海道にあるようで、しかも変人奇人は惹かれ合うのかどんどこカップルが爆誕していく。とはいえ爆誕までに10年くらいかかっているわけだからそんなに爆誕ってわけでもないかもしれない。しかし色恋の香り漂うファミレスであることは確か。仕事しない奴もいるし態度が苦情レベルで済まないのもいるし、よく潰れないなぁこのファミレス。しかし本当に近くにあったらウォッチにしに行ってしまうかもしれん。そういう奇人変人マニアによって支えられているのかもしれない。
それはともかくとして、4コマでファミレス内の人間模様が描かれる。ストーリーらしいストーリーはないが、代わりに人間関係が進んでいく。
↑ちょうど男女の割合も半々くらいこともあり、色っぽい話も多い。もちろんこれはバレンタインの話。どいつもこいつもカップルになりやがる…ただそんなに素直に色っぽいかというと、それは果たしてどうか。このバレンタインはそんなに色っぽくなかったりする。
きっついカップル多めというか、本当に祝福してええの?と思わされる不思議なカップルが多い。というか女性陣の性格がなかなかキツイ。同じファミレスでもだいたいほっこりしている犬組とは偉い違いで、ちょくちょく殺伐とすることもあり、作者はやりたい放題やれたんだろうなぁという気がする。こっちのほうが作者らしさは詰まってるのかもしれない。
人物
主なカップル3組についてだけ。
東田大輔と宮越華
↑変なカップル。いやこの時点ではカップルではないが。周囲からはだいたいカップルみたいなもんだろうと思われていたろう。俺は思ってたし多分みんな思ってた。
宮越華はメシマズヒロインで、かつジャンルはポイズン系で命に関わる。しかし料理を作りたいという想いはあり、毎度ながらその味見役を東田が命懸けで行うという関係。その料理の地獄っぷりは、一癖も二癖もある他の女性陣すら絶句し、それを食す東田に一目置かせるほど。そんなこともあって、最初は華の強烈なキャラに押されるばかりだった東田が、いつの間にやら上位にたちクールに皮肉を飛ばせるようになるが、その代償として表情を失う。ウブだった東田を華が変えてしまった、今の東田を作ったのは華、というのが店内の共通認識の模様。
東田に殺人料理の実験台になってもらっている引け目と、東田の人格を変えてしまった自覚、さらに基本的に頭の回転速度の大いなる違いから口でも太刀打ち出来ないことで、華はどうにも東田に頭が上がらず、この手のやつでは珍しい男性優位のカップル。
本作における看板カップル的存在のはずだし、多分いちばん人気もあると思うのだけれど、その関係は果たして純粋に恋愛感情と言えるのかよくわからん。とは言っても、東田が殺人料理を口にするのはたとえ本人が認めずとも根っこに華に対する好意があるからに他なるまいし、そんな殺人料理を引け目を感じながらも東田に食べさせようとする華にもほのかな想いはないでもなかろうと思いつつ、だからといって毎回毎回瀕死になりながら料理とその味見を繰り返すこの二人は傍からみるとなかなか不気味なカップルである。この先もちゃんと続くんだろうか。続いてほしい。
なお二人共スタッフとしては有能である模様。
足立正広と村主さゆり
↑これまた変なカップル。いやこの時点ではカップルではないが。足立のヘタレっぷりと村主さんの静かな怖さ。男側がずっとビクビクして女を避けて、女側は無表情ながら男のそんな態度に若干傷つきつつ、負のオーラでさらに追い詰めてしまいがちであるも、お互いなんとなく気になって離れられないという、不可思議な関係から始まっている。なので、カップルになるまでの過程には非常に緊迫感があり、一触即発状態が続き、なんというか心がズキズキくることが多かった……足立さん……。でも個人的には一番好きなカップル。
霊感体質で普段は無表情だが、笑顔が半端ない村主さんと、その笑顔を見てしまって以来胸が苦しくなるんだがその感情をどうしていいのかわからない足立さん。二人共高校を卒業しているはずだが、お互いそういう経験がないのか、東田宮越カップルよりもなんだかウブい…いや待てよこれ、ウブいっていうのか?うーん?
上図の通り、村主の笑顔にやられて以来村主のことが気になって仕方ない足立なのだが、その感情は恋情というよりか畏れに近いものがあり、まるで祟り神にでも気に入られたよう。足立は村主のことを化物か妖怪の類のように見ている節があり、妖怪に無自覚に惚れてしまった男と考えると、なんだか彼の行動が割とわかるような気がする。でも男にとって女は妖怪みたいなものというどこかで聞いたような説を採用すると、煮え切らない彼の態度にも共感覚えることができようか。
足立は基本ヘタレで、考えすぎて身体が動かないタイプだが、それだけに腹くくったときは強い。ここ一番ではきっと村主をリードするだろうと思う…が、足立はきっと恐妻家になるんだろうなぁ。
進藤ユータと鎌倉志保
↑歪なカップ…カップル?ん…?どうなんだ…どうなんだろう。なんというか、カップルというより、男と女という感じ。片想いをこじらせて人格が歪んだ女の子志保と、その想い人であり片想いの相手で、借金を盾にして歪んだ愛情をぶつけられ続け、やはり歪んでしまった進藤ユータの、歪んだ男女関係。
いやほんとに、進藤は父親の借金を着せられた為に、借りた消費者金融のボスの娘さんである志保に文字通り頭が上がらないのだが、その関係をベースに、志保は自分の想いを受け入れなかった進藤をただひたすら、金の力を背景に何年にもわたっていじめ続けているという、割とハードな設定。その扱いはリアルに酷くて、志保は進藤を人扱いすらしない↓。
このカップルばかりはなんぼなんでも結ばれんのとちゃうか?いや結ばれたとして素直に祝福できるやろか?と思うのだが、それでもなんだかんだで落ち着くところに落ち着くのである。なんといっても、志保が進藤に執着し、キチガイじみた執念でいじめ抜くのは、そのベースに愛があるからだ。まさに愛憎、憎さ百万倍。作中で、嫌われるとわかっていながら好きで仕方ない相手をいじめ抜く彼女は、ドSというよりもはやドMと評されるが、その通り。また、形はどうあれ自分に対して強烈な想いをぶつけ続ける志保を、進藤は憎みながら突き放しきることができない。
やっぱどうにも、この二人をカップルなんていう浮足立った言葉で表現するのは抵抗があるなぁ。やっぱアレやな、最初に言ったとおり、男と女やな、これがしっくりくるわ。まだ若いのに演歌の世界みたいやな。
総評
なんだかんだいいつつ安心と信頼の高津カリノではあるものの、カップルの変さが一段と際立つ本作。ほっこりできるかは微妙なところだがハラハラはできる。それでいながらラブコメに必要なものは揃っているのが小憎らしい。らくがき漫画リライトも楽しみに待つことにするよ。
っていうかまだWORKING!!について書いてないのに、先にこっちの記事を書いてしまった。
コメント