作・鳴見なる。表紙誰かと思った。泣きぼくろで確認。
基本的には石原巻なのだけれど、やっぱり紗月が断然可愛いなー。愛情の深さもベクトルも異常すぎるし紗月エンドでええやん。
妹の出番がなさすぎてちょっと残念。妹の出番がないと、直人のキャラもなんか薄い。やはりこの男はシスコンがアイデンティティだから……。
以下3巻感想。
石原さんの過去と徳井
本巻はまず石原さんの過去が明かされる。キモイケメンにストーキングされていた悲惨な過去、言いたいことが言えず優等生こじらせていることでの自己嫌悪。なるほど。
うーん、この程度なんだろうか。いや、キモイケメンにストーキングされていたという話はひどい話であるし、確かにトラウマになるには十分な理由だと思うのだけれど、なんかもっと凄惨なのを想像していた。もうバレたらお嫁にいけないくらいの 笑。むしろなんもなかったことが確認されたうえに、許容することの決意という人間的成長までついてきたって、もう普通に優良物件である。もっと本質的にわけあり優良物件なお人かと。
なにより、徳井の石原への想いがよくわからない。どうも、紗月の直人に対する想いに似たものを秘めているようであるけれど、今明かされている石原の過去から、徳井がそのような気持ちを抱くようになった理由にはたどり着けない。
だいたい、キモイケメンにストーキングされるようになったきっかけ、つまりキモイケメンから異常に共感されたという事実、キモイケメンが誤解していたというだけじゃなかろう。なんかまだあるんじゃないかなぁ、と思うのであるが。
やはり直人と紗月の関係がキーか
基本的には石原の謎に迫る!という巻であったが、可愛かったのは断然紗月。イケメンストーカーにウザいとハッキリ物申し、ケリを入れる姿は男惚れ。
直人に対する気持ちも、恋人になりたいとかではないと言いつつ、自身の恋愛感情については言及しない。というか、どう見てもないわけがない。直人に突き放されていれば、あくまで自己満足として直人に尽くすこともできようし、もとよりそのつもりであったらしい。その時点で異常な愛情である。深すぎるうえに方向性がおかしい。
そして、思いのほか優しくされてしまい、そうなるとそれ以上を求めてしまう自分を押さえきれないだろうと直人に告白する。それも、「大事なものを壊してしまうかも」というなんとも不穏な表現で。だから、もう優しくしてくれるなと警告する。だが絡むのをやめる気もさらさらないらしい。
確かに、直人の紗月に対する態度は曖昧である。しかし紗月は直人にとっては初恋の人であるし、少なくとも今現在紗月には色々と世話になっているのだから、過去の蟠りはあっても、なお憎からず想うのは当然とも言える。直人自身心中複雑な想いがあるのであろうし、このことについては、あまり責められないような気がする。
とはいえ、直人が今の紗月の気持ちに、本当に気づいていないとも思えないのであるが。紗月は直人に対してキスしたり、押し倒したり押し倒されたり、エロティックな行動をするけれど、直人は紗月を軽い女じゃないと考えているのだから、自分への並ならぬ想いには気づけて然るべき。どうも、紗月と向き合うことを拒否している感じ。それは、直人が自分自身の気持ちと向き合うことを拒否しているということでもあるのかもしれない。なんだろうな。やはりこの二人の関係が、この話の一番のキーっぽい。
でも直人が紗月と向き合ったら終わりなのかというと、そういう話でもなさそう。うーん謎だ。
アイデンティティが妹
ところで今回存在感がなかったのがブラコン妹であるが、それに合わせて直人のキャラも薄くなった。2巻までは、中々面白い奴だなと思ってみたいたのであるが、本巻に関しては、ラブコメでよくいる優柔不断系の無個性優男っぽい。彼のアイデンティティはシスコンなのだなとよくわかる。そのことは彼自身認めており、だからこそそれではまずいと行動するようになったわけだが、その結果キャラも薄くなった皮肉。
物語においても、シスコンが石原との縁を作ったのもシスコンであるが故だし、脱シスコンを目指すこの男が今後どのようなキャラ性を会得するのか、それともやはりシスコンは不治の病であるのか、これは多分紗月との関係にかかっているのだろう。
ラブコメとしては非常にアンバランスなのに、ワクワクさせてかつ時々ニヤニヤもさせる。面白い。
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