稲井カオル, うたかたダイアログ 3, 2019
あれ……終わってる……マジか。しかもけっこう前。マジですか。おおぉ……もっと続けられそうに思ったけれどなぁ……むしろ延々と続けられそうな……逆に言うと、いつ終わってもおかしくなかったのはそうである、が……。
まぁ……非常に趣味性の強い漫画だったとは思う。それっぽい仲の男女がただひたすらだべるだけだからなぁ。それで距離感が縮まっていったりなんだりするの?っていうとそうでもなく。
実際、読んでいる間は楽しいのだけれど、思い返すと驚くほど話の一つ一つが印象に残ってないのです。まさにうたかたダイアログ。でも好きな作品だった……。
以下3巻こと最終巻感想。
まさしく、うたかたダイアログ
あー、終わっていた。ちょっとショック。地味に長く続いてほしかったのだけれど。まぁでも、かなりニッチ受けしそうな作品ではあったし、仕方ないのかなぁ。好きな人は好きになるけれど、だいたいの人は「……?」で終わりそう。
なにしろこの漫画、本当に何も起きないし。宇多川と片野がだべるだけ。それで何か二人の距離が縮まったりなんだりするんですか!?っていうと別にそうでもなく、つつがない日常をつつがなく終えていく感じ。
二人の軽妙なやりとりは読んでいて楽しいものではあるけれど、昨日友達と話したことをまるで覚えていないように、読み終わって思い出そうとするとビビるほど何も覚えていない自分に気づく。タイトルに偽りなしのうたかたダイアログなわけです。
最後までそんな感じで、最終話ですら、ちょっといい感じになって終わりだからね。ラブコメ好きの中でも人を選ぶような気がする。
祝福したいカップル
……なのだが、さすがにそれはあんまりだということになったのか(主に片野が)、描き下ろしでめでたく二人は付き合うことになる。高校以来の大学生カップル誕生。いいね。高校では付き合えなかったことになるが、まぁでも実質デートめいたことは高校時代にも散々しているし問題なかろう。
もちろん片野から告白するのだが、この告白シーンはちょっと珍しかったな。片野が告白失敗、出直しだ、と思っていたところに「片野さん 私に告白しようと思ってた?」という宇多川からの不意打ちパンチ。ただしそれは好意に裏付けられた言葉ではなく、片野の気持ちを軽くみていた故のこと。
その後、片野の気持ちが真剣なものであることを知り、さすがの宇多川も照れるのだが、これが作中随一の宇多川の照れであった。ここでの宇多川の台詞で
「正直言うと 片野さんが他のこと付き合ったりしたらあまり面白くないし
稲井カオル, うたかたダイアログ 3, 2019
本気で私に告白してくれてるんならありがたいと思う…
ていうか嬉しいです」
と、最後だけ突然ですます調になるところ好き。
まぁまだ手すら繋げていないのだが……。この分でいくと、これからいちいち中学生日記みたいなウブい感じで少しずつ進んでいくのかな、と、楽しみに思えるし、これから先の話も読んでみたく思える……。正直この描き下ろしのような話が本編でされていれば、もっと続いたんじゃないだろうか……。
もっとも、そうしてしまうとラブコメ分が劇的に上がってしまうので、もはや「うたかた」とは言えないものになってしまうのかもしれないのだが、そこはこう、うまくやってほしかったような気もする。贅沢な話だろうか。
まぁでも、一つキリのいいところではあるしな。もっと読みたかったとは思うけれど。お疲れ様でした。良い漫画でした。
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