↑動物が美少女になってやってきた!見ての通りマジで牛だよ。動物ものは数あれど、これはなかなか生々しい。姿形がかなり動物寄りであるし、さらに性を真正面に描いた本作では獣姦というストレートな言葉も出てくる。
基本情報
全5巻。2010-2011年連載。作者はゴトウユキコ。思春期を描いた漫画だが、それにしても変化球。人外ものとしての側面もある。
だいたいこんな感じ
少年・森山清晴は童貞を極め、ついに家で飼育している牛・ウシハルに美少女を見た。ヤバイヤバイと思いながらもずぶずぶと深みにハマっていく。ケモナー歓喜の思春期爆発漫画。
題材そのものは、ありがちっちゃありがちかもしれない。飼ってるペットが美少女になりましたとか、二次元界じゃよくある話(こう書くとなかなか狂ってるが神話の時代から続く妄想でもある)。でもそれが、美少女に見えるのが自分だけで、かつハッキリと性を意識するとどうだろう。脳裏をよぎるは獣姦というタブーである。
ウシハルは牛なので、普通に搾乳とかされる。ウシハルが美少女に見えているため、必死に他の人にそういった行為をさせまいと清晴が頑張る様は、非常に滑稽。周囲と主人公のギャップをコメディ調にして面白おかしく話は進む。進むものの、牛をマジで性的対象として捉える清晴、冷静に考えると笑えない。
やがて、同じような事態に陥った人生の先輩の話などから(どんなことにも先輩がいる、人には浅くも歴史あり)、ウシハルが美少女に見える条件に、「童貞」があるらしいことがわかる。童貞力によって、獣が美少女に見えるのだ。さすが童貞だ。童貞パワーすげぇ。
ということは、美少女に見えるからといって、一線を超えると、それは他者から見れば獣姦以外の何者でもないうえに、清晴自身にとっても、まるでこれまでのことすべてが甘い夢であったかのように、目の前から消え去ってしまうわけだ。これは辛い。
一線超えると死ぬ系人外美少女自体は二次元には割といるかもしれんが、本作においてはウシハルの姿形が獣よりで生々しく、また周囲の人間から見た時にそれが牛以外のなにものでもないことをことさらに強調されるので、合わせるとなかなかどうして救えない設定である。
清晴は大いに悩む。誰がなんと言おうと、目の前の牛はどう見ても愛らしい美少女で、確かに行動そのものは牛だけれど、自分に懐いているし、コミュニケーションだって取れる。本当に愛おしい。それは初恋だ。
頭の中では牛だとわかっていながらも、ウシハルの艶めかしい身体のラインにドキドキする思春期の劣情、ウシハルを愛おしく思い一緒にいたいと思う初恋の純粋さ、しかしどこまでいっても本当は牛なんだという自覚、だからといってどうにもできない切実さが、獣姦というキツイ言葉をキーワードにして進められる。
ウシハルの可愛さはもちろんだが、思春期の男子というのが、いかに不安定で、また必死な生き物であるのか、本作を読むとよくわかろうというもの。
後半はやや錯綜気味であり、作者も悩みながら描いたであろうことがうかがえるのだが、難しいことはおいといて、思春期の必死さを楽しみ、懐かしむ漫画。
総評
牛に美少女を見るとはあっばれな童貞ぶり。すべての男子は清晴と思春期に敬礼。
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