作・若林稔弥。2017年10巻。気がつくと積読。
青春爆発系漫画にも色々あるが、この漫画ほどこっ恥ずかしいという言葉が似合う作品もそうあるまいと思う。読んでいて、何か心臓がむず痒くなるような心地になることしばしば。文化祭ってのはやっぱり一大イベントなんだなぁ。
カップル乱造漫画だが、カップル同士の関係もそれぞれあって、人物相関を把握するだけで一苦労だ。というかできてないわ。
学校生活がフィーチャーされたことで、昔のダダ甘から甘酸っぱい寄りになってきたような感ある。以下9-10巻感想。
進化する恋愛群像劇
よくもまぁここまでキャラクター作ったもんだなぁと、巻末のキャラクター紹介見るたびに思う。正直既に把握しきれていない。こちとらRPGなんてやろうものなら、2分前にいた村の名前がもはやわからない。それどころか、ヘタしたらパーティーメンバーの名前すら忘れかねない。まして数十人にも及ぶ漫画のキャラクターなぞ覚えられるわけがない。
…という状態ではあるのだけれど、確かにキャラクターの名前こそ把握できていないものの、キャラクター同士の関係はなんとなく覚えているのだから不思議だ。これは、人間の記憶のメカニズムとも関係があるのかもしれない。その人が誰か、よりも、その人"たち"の関係のほうが覚えやすいと思う。多分、人間にとってそのほうが重要な情報だからなんだろう。人間は集団の生き物なのだ。
そしてあらゆる関係性の中でも、恋愛関係ほど楽しいものはない。やはり、人間にとって最も大切な関係の一つだからだろう。それだけに、重い関係でもある。「他人の恋愛なんか見て何が楽しいの?」とはよくあるラブコメ批判だが、それは逆で、むしろ他人の恋愛だから気兼ねなく楽しめるというもの。自分事やったらそうそう楽しめんわ。だいたい現実の関係とかたいがいシンドイやん。そんな面白くもないし。
そこへいくとラブコメの関係性は実に理想的だし楽しい。本作だと、個人的には王道の幼馴染カプの話が好きで、二人で照れ隠しに茶化しあったり変顔しあったりしているのはニヤつける。あと王道といえばバンド野郎とミス・ワビサビなんぞは、見ていて心臓がむず痒くなるような錯覚を覚えた。多分これは恋愛的関係というだけでなく、十代のバンドという青春感が合わさったためだろうと思う。
まぁ一番好きなのは、ちょっと王道からは外れた砂川と戸田の能面カップルなのであるけれど、9,10巻だとなんだか他カップルとの関係の中で若干埋もれたような気がしなくもない。そういや戸田砂川がメッセンジャーとなって、修学旅行で煽られていたぽっちゃり女子と餌付け男子の話は、見ていて微妙に心が痛むんだが、この二人、男のほうの気持ち次第だと思えていて、確かに異性として意識していないことはないと思うんだけれど、この後も恋愛的に好きになれるのかなぁと思うと、なんだか厳しそうな気もする。割と甘くない話も多くなってよなぁ。
とまぁ、お気に入りのカプあれば、見ていて心配になるカプもあり、またそんなカップル同士の関係がまた深まり、さながら東京の地下鉄のように狭く細かく入り組んできている。既に俺の脳内メモリを完全にオーバーしているのだが、11巻はさらにこんがらがるんだろうか。