作・金田陽介。2018年9巻。既に10巻出ている。1週遅れ。読む方が既におっつかないのに、週間連載ってほんとすごいね。8巻だいぶ前に読んだけど感想書くの忘れちゃったよ。
そして9巻は犬塚家のお家騒動、というより兄弟喧嘩。なので出てくる面子が非常に限られているのだが、、、今までの話で一番好きだったかも。どうも俺は、この漫画で一番好きな展開は犬塚兄弟のやりとりらしい?ってかほんと家族もの弱いな俺。
そして表紙の子はまた犬塚側のヒロイン。犬塚はペルシアと固定カップリングなのに、ヒロイン増えるなー。以下ほとんど9巻感想。
歴史は繰り返す?
本巻は丸々一巻、犬塚家に犬塚とペルシアが一つ屋根の下。なので、学園の愉快な仲間たちはほとんど出てこない構成。そのうえペルシアはほとんどジュリ男の姿でいなくてはいけないので、まぁこれはこれでマニアックな良さはあるものの(っていうか俺はジュリ男の姿のほうが好きだったりなんだり…きっとそういう人はけっこういるはず)、ラブコメとしてはちょっとばかり厳しい展開かもしれない。
犬塚の妹的キャラとして朱奈が登場して大暴れするのは、そういう事情も反映していたりするのだろうか。犬塚といい感じな女子がまた一人。犬塚とペルシアは完全に固定されたカップルであるにも関わらず、これ以上ヒロイン増やされても失恋確定であるだけになんだかちょっと切なさを感じなくもない。可愛いけど。可愛いだけに。妹ポジション気取っているけれど、その感情は明らかに男女のそれと思われるものなぁ。。。
色々たいへんでも、この犬塚家編はやらないといけない話だったのだろう。今回、犬塚の母とペルシアの父が、かつて恋仲であり、そのために学園を追放されたという事実が明らかにされる。これは重大。
となると、このままいけば歴史は繰り返す……という感じだが、犬塚とペルシアは親世代よりも一回り強い意思を持っており、かつ周囲に味方がいるという大きな違いがある。お国の事情も当時よりはマシになっていることだろうし。それにまー、よくできた二人なので、なんだかんだいってなんとかなるんじゃないのかねー、なんて一読者としては呑気なことを思う。
ファミリー劇場
そこで最大のお邪魔虫、犬塚兄貴こと藍瑠(すげー名前)が颯爽と登場するわけだ。この漫画はこの兄貴が出た時が一番盛り上がると思うんだが、それはやっぱり、実際この二人にとって(今の所)最大の障害だからだろう。
で、ここから先はファミリー劇場。犬塚は兄貴が背負わされた重責を知り、なぜ兄貴が犬塚の名を守ることに拘るのかを知る。それは尊敬する父の意志であり、同時にそうすることが大切な家族を守ることだったのだが、それが年端もいかない少年にとってたいそう苛酷だったことは想像に易い。今だって、自分が少しでも折れれば犬塚家は汚い大人に蹂躙されてしまう、くらいの気持ちを持っているだろう。
自分も含めて、すべてに対して厳しい犬塚兄は、もはや母に対しても「うっとうしい」だの「失せろ」だのと言ってはねつけるようになってしまう。そうでもしないと、優しい母に甘えてしまいそうになるからだろうか。だが、それでは家を守れない。
弟に対する態度も、この苦しい状況の中でも強くあってほしいからなわけで、何よりも大切に思っていることには違いない。にも関わらず、ついに、この兄は守るべき弟に対して、勘当と恋人との別れの選択を迫るようになってしまうわけだ。犬塚母が、自分が不甲斐ないから、藍瑠が一身に苦労を背負い歪んでしまったと嘆くのも無理はない。それでも、藍瑠がどんな想いでここまできたのかを知るが故に、母は何も言えないのだ。
逆に言うと、弟の露壬雄が歪まず真っ直ぐに育ったのは、藍瑠が守ってきたからとも言える。藍瑠は自分の抱えるプレッシャーを弟に悟らせることさえしなかった。露壬雄もそれがわかるからこそ、母同様自分のことを不甲斐なく思い、そして兄に打ち勝つことで、兄を救おうとしたのだろう。
それをペルシアもわかっていて、犬塚が戦うのは自分のためではなく兄のためだ、というのだが、それはあたっているにしても、兄と戦う露壬雄を支えているのはペルシアの存在である。ペルシアがいるからこそ、露壬雄は立っていられるわけで、つまりこれはファミリー劇場でありながらしっかりラブコメ正統派。
そしてついに、藍瑠は露壬雄の渾身の頭突き(!?)で倒れるのだが、これはまぁ気持ちで負けたというところか。露壬雄の「今までありがとう」で不覚にもうるっときてしまった↓。
ええ話やんけこら……。なんかもうこのまま藍瑠死にそうな感じしなくもないが。しかし、この漫画で一番好きなシーンかもしれないこれ。ラブコメっぽくはないかもしれないが、ラブコメの下敷きがあるからこそのこのシーンやからね。ありがとうの吹き出しで潰れてるけどちゃんとペルシア見守ってるからね。
長男のプレッシャー
ところで藍瑠のケースは極端にしても、まだまだ長男、それも第一子だったりすると、どこの家でもそれなりのプレッシャーはあるんじゃなかろうか。昔何かの本で、長男のほうが高学歴になる傾向がある、という記述を読んで(確か昔流行ったマイケル・サンデルの本の一節だったよーな。。。)、末っ子の自分は「ほんまかいな」と思ったのだが、実際そんなニュースもあったらしい(参考記事「Firstborn, middle child, or last-born: Birth order has only very small effects on personality -- ScienceDaily」この記事は第一子は統計的に若干良い傾向がある程度の話。そしてこの記事はロケットニュースで知った 笑→「第一子は他の兄弟よりもわずかに頭が良い傾向があるという調査結果が発表される / 親の “やる気” が一つの要因? | ロケットニュース24」)。日本でも兄弟と学歴の分析があって、「http://nfrj.org/nfrj03_2006_pdf/nfrj03_200602_14.pdf」には
男子ではとくに中年と若年コーホートで出生順位の遅い者ほど平均的には教育年数が短いこと、が示された。
平沢 和司, きょうだい数と学歴に関する基礎的分析
なんて記述もあった。
基本的な家庭環境、遺伝的な影響がほとんど同じ兄弟間で、もし本当に統計的な差が生じるのだとすれば、それはまぁ、「長兄たるもの」そういう意識が働いた結果、といえるんじゃなかろーか。それは社会が求めるのかもしれないし、知らず知らずのうちに家庭も求めるのかもしれない。まして長男だったらねぇ。21世紀とはいえ、人の意識なんてそうすぐ変わるもんでもないしなぁ。
まーとはいえ、基本的には個人差で埋もれる話ではあるのだけれど。ま、典型的な話として。
このサイトやっていて思ったけれど、どうも俺は案外家族ものが好きらしい。家族大切にしているキャラは無条件で好感度上がる。藍瑠のお相手に、朱奈はどうかしら。。。いいと思うんだけど。
しかし兄貴という最大の障害は、この件で今後はニュートラルに動くと思うんだが、犬塚とペルシアの仲はどうなるのだろうか。あんまり国がーって話大きくされてもちょっと困るような。どうなるのかな。ってかもう10巻出ているー読まねばー。