作・金田陽介。2015年1巻より2017年4巻。記事書いてる間に5巻出てしまった。
楽しめた。3巻時点では、よく出来たラブコメだなー、以上の感想はなかったんだけれど、4巻で犬塚兄が出たあたりから俄然面白く感じられるように。
これまでのぬるい茶番とは違う、必死さがあり、主人公二人のロミジュリカップルが映えるようになってきた。うーん素敵。やはりラブコメはカプ萌えできないと。
あと蝉ドン笑った。以下3-4巻感想。
今までにない必死さがよかった
ええな。
3巻読了時点では、微妙な感じもしていたのだけれど。いや、面白くはあった。主人公は好漢だし、ヒロインは可愛いし、互いに一途だし、お邪魔虫多かれど、それぞれに人間味があって、胸糞悪い展開にはならないし。適度に山があって谷があって、二人は協力しながら互いに絆を深め合って……まるでお手本みたいなラブコメだなぁとかなんとか、思った。
ただ、こう、カプ萌えしなくって。犬塚とペルシアはお似合いの二人だとは思うけれど、たとえこの恋がダメだったとしても、二人共別に良き伴侶を見つけて幸せになりそうな気がする。多分2秒で見つける。既にいる。
ハイスペック故に安心感ある嫌味のないラブコメであった反面、それ故にこの二人じゃないと!っていう唯一無二感が感じられないジレンマ。アビとソマリのほうが割れ鍋綴じ蓋でカップリング的には面白かったくらいだ。
そんなわけで、なんだか微妙だなーとか思う反面、良く出来たラブコメだよなとも思い、それなのに面白いと言い切れないのは、俺の脳みそが溶けてるせいだろうか、なんて複雑な心境だったわけだ。
それが4巻で兄貴が出たあたりから、とても面白く感じられた。多分、ガチで二人の仲が引き裂かれかねない試練だったからだろう。これまでも二人の前にはいくつもの壁が立ちはだかっていたけれど、まぁでもなんとかなるやろ、という安心感があったのも事実。二人共ハイスペックで、人間関係にも恵まれていたしね。本家ロミオとジュリエットと比べるべくもなく、ずいぶんと甘っちょろいハードルに感じられていたのだと思う。
そこへいくと、兄貴はこれまでの生ぬるい茶番とは明らかに違う。本当に二人の仲が引き裂かれかねない、という緊張感があった。そして兄貴に嫌疑をかけられながらも、ペルシアの誕生日を祝おうとする犬塚と、そんな犬塚を案じるペルシアの姿には、今までにない必死さがあった。
クライマックスの犬塚とペルシアの決闘は、これまでの二人の関係の総決算。言葉と態度で周囲を騙しながら、互いの思い出と理解から、ただ二人だけがその真意を推し量ることができ、そしてその推量に命さえ賭すのは、ラブコメ的浪漫に溢れている。ここまでやられたら、さすがにくるわ。ここにきてようやく、この二人ええなぁ、と思えるようになったのである。ベタだけど。いい。
シリアスかつギャグ
まぁ展開自体は無茶苦茶もいいところで、特に決闘シーンのあと、壊れたロザリオを胸から出したときには本当に吹き出してしまったのだが、人並み外れてハイスペックな二人ではあるし、元より話はシリアスだが演出は基本ギャグの作風みたいなので、まぁ笑ってよいのだろう。わかりやすいところでは真顔で蝉ドンからの愛を語るシーンがそうだ。
↑のシーンなんかも、ペルシアがモノローグで世界観の背景を説明し、その中で自分への愛をぶつける犬塚の姿にペルシアが思いを馳せるシリアスシーンなのだが、なんで回想が全部犬塚が殴られているところなんだと細かく笑いを取りにきつつ、ギャグの演出でシリアスな必死さも伝わってくるという、昔のクレヨンしんちゃん映画のような味わい。本当に良く出来た漫画である。
兄弟対決というサブテーマ
また、犬塚が兄貴の目をかいくぐってペルシアの誕生日を祝おうとするのは、兄弟対決、兄弟愛、弟の自立という側面もあり、こういうサブテーマは深追いさえしなければ物語に適度な深みをもたらせるというもの。兄貴の弟に対する教育方針は明らかに過剰であるけれど、その教育を(人に任せず)自分の手でやっているというところから、厳しいながら弟への並々ならぬ愛情があることがうかがえる。そう、すべては愛故に。
↑犬塚とペルシアの決闘のあと、疑いが晴れたわけではないとしながらも、「追求はしばらくしない だから… 二度と あんなマネはするな…」と言葉を投げるのは、兄貴の厳しさと愛が端的に描かれたシーンだろう。露壬雄もまた、背を向ける兄貴の心をわかっている。
だから兄貴は最強のお邪魔虫であるけれど、決して胸糞悪くはならない良きバランスは健在。ほんとバランスのいい漫画。ペルシアに酷いことしたアビも、報復を受けつつ、人間としては成長することで、みんなハッピー、後味悪くならない。
力を失い、さらに60年代のバンドマンみたいな風貌になってもアビに変わらぬ愛情を注ぎ続けるソマリにニヤリ。メインカップルが映えるとサブカップルもより楽しめるもので。
やはりカプありき
カプとして映えると、日常シーンのラブコメも100倍映える。たとえば犬塚がてまりに抱きつかれているのを見た時のペルシア↓。
本巻の私的ベストショットなわけだが、それはそれとして、犬塚との関係が深まり、ペルシアの犬塚に対する気持ちが固まっているからこそ、この蔑みからも万感感じられようというもの。3巻までだったら、可愛いっすね以上の感想を抱かなかっただろう。やはりラブコメはカプありき……。
ということで、4巻は掛け値なく面白く感じられた。そうなると表紙も犬塚とペルシアのツーショットにしてほしいなぁと思うのだけれど、中々そうはいかないらしく。一人のヒロインをでかでかと表紙にするのは、野郎向けラブコメ漫画の悪習だと思う。そのほうが売れるということなんだろうけれど…なんだかなぁ。