内山敦司, 世界か彼女か選べない 7, 2020
期待の修羅場ラブコメ。しかし……おー……これは、中々難しい展開になってきたなぁ……。
内容的にはだいぶシリアスで、クライマックスが近づいてきたのか、という感じがする。超常的な力や組織といった取り扱い注意の話も前面に出てきて、ノリの変わり方に若干ついていけない感もないではない。
主人公の光輝自身もついていけてない感あるし 笑。性ヒロインから正ヒロインにクラスチェンジしようとしている神堂さんと、約束された敗北を受け入れられない幼馴染の歩美の選ばれたいという気持ちがいよいよ切実かつ必死になってきたのに反して、光輝はなんだかんだ選ぶ側だからなのかちょっと余裕あるよね。
いったいどうなるんだろう、というより、どうするんだろう、という気持ちになるのは我ながらオタクっぽくて嫌だ。以下7巻感想。
変わるおっぱいさん
神堂さん変わったよね。最初はただのおっぱいさんだったのに、すっかりヒロインになってしまって……恋する乙女の可愛い姿が激増し、一方でサービスシーンが激減したのは、ラブコメ漫画として示唆的に思える。ラブコメってそういうとこあるよな。
むしろサービスシーンが増えたのは歩美のほうか。劇のことで光輝に「選ばれなかった」と思い込んだ歩美は、そのことが受け入れられず、強引に体を重ねようと光輝に迫る。その姿はなかなか圧巻。で、それを見て「許せない」という感情が萌芽した神堂さんは、心的負担で倒れた歩美を介抱しつつ、このまま"力"を抜き取ろうかとさえ考えてしまう。
そうすると歩美は死ぬことになって光輝が悲しむが、自分が癒やせばいい……と考える神堂さん、その後はっとして何を考えているのかと自戒するものの、本音が思いっきり出てしまったシーンだろう。海で恋と友情を選べと歩美に言われた時には、選べないよと俯いていたが、もう心情的には完全に恋に傾いてしまったようだ。これは光輝に「選ばれた」と思い込んだことも多いにある。
世界と彼女の関係変化
実際には、光輝は神堂さんではなく歩美のことを選んでいる。というか、光輝は実は一貫して「彼女」つまり歩美を選び続けているのだよなぁ。とはいえ自分の恋愛のために世界の危機はあまりにも重たいし、また当の歩美自身に光輝と付き合おうという気がないので、モラトリアムが発生しているだけで。
歩美が光輝と付き合わないのも、光輝のことを好きではないから、ならまだ諦めもつくかもしれないのだが、実際は歩美も光輝のことを憎からず思っているのだけれど、自分が幸せになってはいけない、という気持ちを抱え込んでいるから、では光輝もとても諦めきれるものではなかろうしね。
なので、光輝としては世界を丸く収めつつ、なんとか歩美と一緒になる道を模索していたわけだ。別にタイムリミットがあるわけでもないし。
が、そうこうしている内に神堂さんはいよいよ光輝のことを本気で好きになってしまい、またその様を見て歩美も心穏やかではいられない。最初こそ光輝にちょっかい出しているだけという感じだったので、そんなノリで近寄るなと脅しかけるくらいだったが、本当に好きだから近くにいたい、という態度で来られればもう何もできないわけだ。
むしろそれは光輝のことを想えば歓迎すべき話。が、実際にやられてみると歩美は「取られたくない」という気持ちが抑えられない。
ここまでの話は、「彼女を選びたいけれど世界滅亡はキツイし彼女にその気がない」光輝と、「世界滅亡は困るし歩美ちゃん好きでもいいから私と付き合って3人でおもしろおかしく生きましょう」な神堂さんと、「光輝のことは好きだけれど自分は(光輝と付き合って)幸せになってはいけない」と思い込んでいる歩美の、三者三様の想いが絶妙なバランスを取っていたことで、ニヤニヤできる三角関係修羅場ラブコメが成立していたわけだ。
おっぱいさんが体で迫って光輝が鼻の下を伸ばす、でも心は歩美、という状況は、三者の想いの重なり合うちょうどよい台風の目みたいなところだったのだな。
で、そのバランスはもはや崩れてしまっている。歩美は「自分は付き合えないけれど、だからといって光輝が誰かと付き合うのも耐えられない」という自身の本音に気づいてしまった。だからハッキリと「歩美ちゃんより私を見て」と光輝を独占しようとし始めた神堂さんに対して焦りを感じる。
それでも、無意識下では光輝は自分のことが好きだろう、という自信があったと思われ、そのためになんとか自分を保てていた。だから劇のことで光輝に「選ばれなかった」と思い込んだ時には相当のショックを受け、強引な行動を取らずにはいられなかったわけだ。そしてそれは、もはや神堂さんにとって許せることではなかった。
そろそろ光輝も気づこうな
世界と彼女の関係が変化したことで、光輝ももはやノンビリしてはいられなくなった。が、そのことにまだ光輝は気づききれていない(気づきたくない?)。
なので、これまで「男にとって都合のよい2号さん」的なポジションで笑っていたおっぱいさんが、突然歩美ちゃんばかりみないで私を見てーとか私の気持ちを考えてーとか叫びだしたり、幼馴染が泣きながら迫ってきたりするのに大いに戸惑っている状況だ。
まぁ、さすがに次巻では気付かされるのだろう。ただ気づいたところで、光輝の気持ち自体は前述したように実は最初からブレていない。このままいくと誰も幸せにならなさそうだが……どうするんだろう。
それにしても、どうなるんだろう、ではなくどうするんだろう、と思うのは、結局物語というのは人の手によって紡がられている、ということを知っているからなのだが、なんだかいかにもオタクっぽい嫌な感想だよなぁと我ながら思う。
コメント
コメント一覧 (2件)
天使ちゃんが神堂さんを揺さぶる場面が多かったですが結末を考えると…。
天使ちゃんは可愛いし、歩美に出来ないことをやってくれたんですが、自分は最後まで今ひとつ感情移入しきれませんでした。