作・師走ゆき。2013年刊行。花とゆめコミックス。少女漫画はあまり親しみがないけれど、「不老姉弟」が面白かったので作者買い。
いわゆる男女入れ替わりもののラブコメ。強面男子と陽気で明るい女子の組み合わせは定番だけれど、その入れ替わりということで、ちょっと変化球。表紙はキラキラしてるけど、本編はそんなにキラキラしてない 笑。
一巻読み切り以下感想。
入れ替わりは定番だが王道
明るくて人気者で、クラスの中心人物の姫野こまちと、凶悪フェイスかつ豪腕、不器用な性格故に恐れられているけれど本当はいい奴な鬼瓦望美の入れ替わり系ラブコメ。顔が怖くて恐れられている系男子は、男向け・女向け問わずラブコメでは出現率がやたら高い気がする。本来の性格が誤解されて皆に距離を置かれているタイプは、特別な関係を築きやすいしね。ただ、ヒロインの場合は避けられるパターンだけではなく、高嶺の花パターンもあるけれど、野郎の場合それに相当するパターンはない気がする。
閑話休題。キャラクターの設定は定番やなと思いつつ、入れ替わりネタということで、うーんこれも定番であるなぁなどと思いつつ読んでいたのだが(大人になるのはいややね)、話の運びがスムーズで、すらすらと楽しく読めた。わんテールや不老姉弟を見ても、この作者さんはなんてことのない話を読ませるのがうまいなーと思う。それはつまり漫画として面白いってことなんだろうな。
話の内容は、見た目とは裏腹にとってもいいやつの鬼瓦の魅力に気づいた姫野が、なんとかして皆にその良さをわかってもらおうと奮闘して空回り、でも最後は互いを思いやる気持ちで乗り越えるよ!人を見た目で判断しちゃいけないよっ!と全般的にやや道徳的なのだけれど、それがあくまでコメディカルに、実に漫画らしく描かれているので、読んでいて楽しく、一話一話の読後感もいい。
黙ってれば美少女と言われる姫野は、鬼瓦と入れ替わった後、普段どおりに明るく振る舞うことで、鬼瓦が皆と打ち解けあえるようにと頑張るけれど、普段どおりやっているにも関わらず、なにもかもがうまくいかない。姫野ビジョンではちょっとした冗談が、鬼瓦の姿でやることによって、シャレにならない脅迫まがい、いじめまがいに受け取られる。一方、鬼瓦は普段通りのことを姫野の姿でやると、姫野は女子力アップで男にモテるのであった 笑
同じことをしても、外見が違うだけで周囲からの受け取られ方がまったく異なる。これは道徳的な一大テーマだ。それを、ラブコメを基調にギャグ混じりで楽しく読めるんだから、面白いだけでなく考えさせられるところもありの、正しく少年少女向け。男女入れ替わりだけど、それに基づくいやんなネタは相当控えめなウブウブだし、あまりダーティーなネタもないしね。入れ替わることで、今まで知らなかった友達の嫌な面に触れてしまう……とか、そういうつらいのはない。みんないいやつ。
姫野と鬼瓦はお互いを補えあえるナイスカップルなので、ラブコメ的にも素敵。1巻読み切りの程よい長さで、さくっと楽しめたわ。この作者さん外れがないなぁ。長編ガチ少女漫画っぽいので二の足踏んでいたけれど、高嶺の花読んでみようかしら……。
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