『マンガでわかる統計学』漫画系の参考書はラブコメの穴場

高橋信, 井上いろは, マンガでわかる統計学
高橋信, 井上いろは, マンガでわかる統計学

↑このしょうもないやりとり、垢抜けないヒロインが参考書漫画のいいところ。参考書漫画はベタベタなラブコメを展開していることもあり、実はラブコメの穴場(ジャンルによるし、最近の流れは微妙なんだが…)。特に本作はプロローグのサブタイトルが「トキメキ統計学」w

この垢抜けさがいいんだ。以下、あくまで「ラブコメ」としてレビュー。

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基本情報

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2004年刊行。作者・高橋信、作画・井上いろは。姉妹書として回帰分析編と因子分析編があるが、そっちは未読。そのうち読むつもりなんだが、回帰分析編がラブコメ感薄そうでうーむ。

もう10年以上前の本だけど、今でも本屋行くと普通に置いてる。数学系の本棚行くと絶対ある。なかなか稀有な漫画。

オーム社って、何故か微妙に自分とこで電子書籍化してくれている本もちょっとあるんだけど(オーム社 eBook Store)この本は残念ながら電子化されていない…。

なお作画の井上いろはについて調べたら、大昔ギャグ王で連載していた少年探偵彼方という漫画の作画をしていたと知り驚く。いや、読んでないんだけど、ギャグ王だから作品自体は知っていた。マジか。

だいたいこんな感じ

ちゃんと漫画してる

これ大事。世に溢れる参考書漫画は、漫画とは名ばかりのイラスト多めなだけの参考書であることが多い。だから、参考書漫画を読むときはまず「ちゃんと漫画かどうか」が一つ大きな評価基準になるが、この漫画はとてもいい。さすが、ずっと本屋に置かれ続けているだけあるわ。

漫画の面白さで学習のモチベーションを高め、必要な情報も漫画の中できちんと提示する、というのが理想的な参考書漫画だと思うけど、この漫画はまさしくそのお手本。珍しいよほんとに。

ストーリーを軽く。主人公・高津るいが父親のイケメン部下・五十嵐とお近づきになるべく、父親に統計学のカテキョを紹介してくれと頼んだところ、やってきたのは憧れの五十嵐ではなく、冴えない見た目の眼鏡男・山本マモルであった。るいはめげずに、山本を踏み台にして五十嵐と近づくべく、統計学の勉強を始める…。

というしょうもない理由で始まるが、山本の授業を受けていると、なんだかんだで好感度が上がっていき…というお約束の展開。ひねりとかなんもなしだがそれがいい。ヒロインも適度に野暮ったくて適度に可愛い↓。

高橋信, 井上いろは, マンガでわかる統計学
高橋信, 井上いろは, マンガでわかる統計学

↑昔の漫画であることを加味してもやや古い絵柄だと思うが、参考書漫画だとそれも一つの味に感じられる。ここまでの苦労もそれなりにあることもあって、笑顔が百倍可愛い。

また、退屈になりがちな授業内容を少しでも緩和する一環なのか、るいは記事冒頭のようなオヤジギャグを言っては自己嫌悪に陥ることもあるが、学校の先生のつまらない冗談は通常の千倍面白い法則により、これもまた魅力的である。

しかもサービスシーンまであるんだ↓。

高橋信, 井上いろは, マンガでわかる統計学
高橋信, 井上いろは, マンガでわかる統計学

↑この絶対に必要のないブルマ。読者サービスです。これにより、ヒロインが可愛くないという仮説は棄却される。教科書にあるちょっと性的なイラスト・写真は通常の千倍エロい法則により、なんだかすごく嬉しい。

こういう読者サービスがあるのは、統計学の本を読む層を想定してのことだろう。たとえばジャンルが栄養学とか、どちらかというと女性が読みそうなやつの漫画だと、まずこういうシーンはない(そもそも絵柄が萌え系ではない)。

もちろん、統計学の内容自体もざっくりと学べる。偏差値の出し方、推測統計学と記述統計学の違い、代表的な分布の形、データの基本的な関連の調べ方(単相関係数、相関比、クラメールの連関係数)、そして最後に独立性の検定。こういった内容を、たとえばるいがクラスメートとやったボーリングの点数、テストの点数、または読んでいる女性誌のアンケート内容など、漫画に関係する題材からこなしているのがとてもいい。それは学習の内容を身近に感じられるという効用もある。

さすがに演習量の少なさなどはどうしようもないが、イメージをつかむことができて、それは教科書を読む時に強い味方になってくれるはずだ。

というか、この漫画の素晴らしさはちゃんと漫画しておきながら、ちゃんと基礎的なところを学べるところである。途中でちょっとしんどいと思っても、二人のやりとりがなんだか楽しいので、とりあえず先を読もうと思える。そしてやりとりを読んでいると、たとえその意味がきちんと理解できなくても、漠然とイメージができる。理想的。

それもこれも、ベタベタなラブコメのパワーだ。先に述べたとおり、別になんてことのない、るいと山本のやりとりが、見ていてなんだか楽しいんだ。るい本人は認めずとも、二人が少しずつ接近していることが、回を重ねるに連れて読者にはわかる。いいねぇ。

また、一番最後の最後、著者の略歴や出版社の住所などを記している奥付に、しれっと1コマエピローグがあるのがまた、漫画としての愛を感じられていい…。

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