『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました(漫画)』1巻感想:ノーストレスで愉快な生活したいですか?

原作 森田季節, 漫画 シバユウスケ, スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました

だいぶ前に読んでいたのだが、特に感想を書いていなかった。が、スピンオフ作品である「『ヒラ役人やって1500年、魔王の力で大臣にされちゃいました(漫画)』1巻感想:理想の上司、それはボーイ・ミーツ・ガールを超えた生々しき夢」の感想記事を書いたので、まぁこれも書いておくかと。というか、記事書かないと読んだかどうか忘れるお年頃なので😊

なんで描かなかったというと、女子しか出ないんだよねこれ。本サイトはラブコメブログであるので、女子しか出ないは通常射程外。なんだけれど、スピンオフだけ記事を書くのもなんだかなーと思ったので。

さて、俺がなろう系を読む時は、「作品の中核となる欲望は何か」という非常に嫌な読み方をする。で、本作についてだが、「安心で愉快な生活」といったところではなかろうか。

以下1巻感想。

目次

本来射程外だけども

この漫画を読んだのはだいぶ前なんだが、感想記事を書かなかった理由は明白、女子しか出ないから。で、それはスピンオフの「ヒラ役人〜」も一緒なんだけれど、なぜあっちは記事書いたのかと言えば、内容が俺の大きな関心ごとである「能力主義」と「リーダーシップ」に通じるところがあったからだろうな。

ラブコメは政治的なポルノだと思っている – 少年は少女に出会う」という怪文書でも書いたが、俺はラブコメを政治ゲームの一種と解している。その見方に則れば、ラブコメから外れても本サイトで取り上げたくなる作品というのはあって、まぁ本作のスピンオフがそうだったというわけだ。

が、本作についてはさすがに射程外。だから書かなかったんだろねぇ。書かなかったというか、書きづらかったというか。まぁでも、せっかくだからいまさら書こうかしらね。

ストレスのない安心で愉快な生活

さて、俺がなろう系作品を読む時は、「作品で描かれている欲望は何か」という嫌な見方をする。で、スピンオフのヒラ役人については「理想の上司」と考えたが、本作の場合はなんだろうか。「能力」だろうか。それはあるだろう。なろう系作品のほとんどは、何かしらの「能力」を求めている(誰かが「なろう系は現代の能力主義的価値観を色濃く反映している」というようなことを言っていたが、俺もそう思う)。「評価」だろうか。それもあるだろう。流行りの「スローライフ」だろうか。それもあるだろうな。

色々あるけれど、本作の欲望を一言で言うと、「ノーストレス」だと思う

もっと言えば、「嫌なストレスだけ回避」というほうが良いだろうか。吉良吉影のごとく、刺激のまったくない生活を求めているわけではないんだよね。刺激はほしい。ただ、それがパワハラ上司大登場とか未曾有の大災害みたいなのがダメなのはもちろん、「できるかどうかわからないけれど、最善を尽くして自分の能力を試す一か八かの賭け」みたいなのもノーサンキュー。

平たく言うと、「挑戦」はしたくないんです。あくまで自分にできることを、退屈にならない程度にやって、人々にもそれなりに感謝される、そういう愉快な生活が望ましい。であれば、できることは多いに越したことはないし、何より最強じゃないと、「外的」という最大の脅威に備えられない。バカにしてくるやつもいるだろう。それでは心の平穏が保たれない。というわけでレベルMAXが役に立つ。

出世や承認のためではなく、ノーストレスで愉快な生活をするためのチート能力。ただそれが天性のものだと、「才能を自分のことにしか使わないの?」問題が発生してしまう。この問題は深刻である。世界を救う使命を与えられかねない。したがって、能力は自身の努力で得たものである必要がある。しかし、ハードな努力はしたくない。

そして出来上がったのが、「低負荷のルーティンを愚直に繰り返していたら最強になった」という夢。その能力を使って「ノーストレスで適度に刺激もあるゆるゆるスローライフ」という浪漫。

これは間違いなく、現代的な夢の一つの形だと思う。みんな、金が幸せじゃないって気づいているんだな。セミリタイアが盛り上がる昨今、人々はただひたすら、安寧を求めているのか……戦争が起きているわけでもないのにね。幸せはどこにあるのやら……。

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