永遠に積んでるバンブーブレード読もうと思ったら何故かセトウツミ読んでた。いくらなんでもこれはラブコメじゃないよねそうだね。
まぁそうなんだけど、定期的に読み返したくなる漫画の一つセトウツミ。高校生男子・セトとウツミの二人がひたすらだべってるだけの作品。当サイトはラブコメ漫画の感想サイトなので、この漫画を取り上げるのは違うやろとは、外形的に、いやあらゆる角度で正論なんだけれど、ただなんとなく思うことは、多分俺が漫画に求めているものは結局こういうものなんだろうということだ。なので、このサイトで取り上げることも俺にとっては間違いではないんだけれど、一般的には間違いですはい。
以下、2013年から2017年の全8巻でかけぬけたセトウツミについて語る記事。12年前の作品にネタバレ配慮などない。とりあえず絵しりとりの話は6巻です。
今さら読んだ話
そもそも何故今さらセトウツミを読んだのかというと、冒頭に書いたとおり永遠に積ん読していたバンブーブレードを読もうかなと思ったからだ。バンブーブレードならば当サイトでも特に違和感がない。トップページの記事一覧の中にもよく馴染むだろう。しかしセトウツミはどう考えても馴染まない。そしてなぜバンブーブレードからこのセトウツミに飛ぶのか、わかる人はいるかもしれないし、いないかもしれない。
まぁ別に大した話ではなくて、バンブーブレードを読むなら、その前に原作の土塚理弘の過去作である清村くんと杉小路くんとを読みたい気がした。地味にこれも積んでいた。20年以上前の作品だ。永遠に積んでる。世代だったとはいえ、20年以上前の少年向けギャグ漫画を今の俺が読めるかなぁ……なんて思いながら読み始めたら、これが存外面白い。まぁ確かに古臭さはあるけれど、当時連載していたほとんどの漫画は今読むととてもつらい気持ちになるのに、この漫画は面白い。
しかもベースは野郎二人の会話劇なのに、不思議なものだなぁ……そういえば野郎の会話劇といえばアレがあったな、セトウツミ……。
……で、気がついたらセトウツミ全8巻全部読んでしまったという。
会話劇
そもそも会話劇とは俺が勝手に言っているだけでそういうジャンルがあるわけではないけれど、まぁだいたい何を言っているかの想像はつくかと思われる。これは俺が好む形式の一つで当サイトで取り上げた中だと『うたかたダイアログ』あたりがザ・会話劇として思い浮かぶ。

この記事は2018年の記事だが、この記事内でも地味にセトウツミのような〜という形で本作に触れていたりする。ギャグのクオリティ自体はセトウツミのほうが高いけれど、真っ当に男女ラブコメなので当サイト的にはうたかたダイアログのほうが好ましい。ってかまぁ、男女だとどうしてもラブコメ要素が主体になるので、そりゃそうだと言えばそうかもしれない。
男女でギャグみが強い会話劇だったら位置原光作品が良いかも。

まぁいずれにせよ、BLでもなく野郎二人が話すだけの漫画はさすがにラブコメといえず、なので本作を今まで取り上げていなかったのだけれど、最近結局自分が求めているものってなんだろうと思った時、セトウツミの要素は外せないように思えた。で、このサイトは自分にとっての軌跡みたいなものなので、本作を取り上げるのも自分としては正当化されるよう
流れで魅せるタイプ
ということで、ここまで肝心のセトウツミの情報量が、「セトとウツミという野郎二人が会話している」以上ないのはどうかと思うので、さすがにそろそろ本作について語りたいところだが、これがなかなかどうして難しい……。いやだって、マジで野郎二人が話しているだけだから……。しかも、ほぼほぼ流れで笑わせるタイプであるため、これ一発でわかる特徴的な1コマみたいなものがない。
流れで笑わせるタイプの漫画は有名どころでもけっこうあって、たとえばクレヨンしんちゃんなんかはケツだけ星人などの一発ギャグの印象とは裏腹に流れで笑わせる漫画だ。こういう漫画は、コマの一つ一つに書かれているものよりも、コマとコマを繋ぐ流れが本質であるため、その一連の流れを掴まないと面白さがわからない。しかもその流れが重数ページの一話まるまるだったりするので、1コマ切り抜き引用しても「これおもろいの?」ってキョトンとなってしまう。なんなら面白くないという誤解すら与えてしまいそう。
なので、本作の楽しさを知るにはKindleのサンプルで最初の話を読んだらいいと思います〜終了〜。
……で終わってしまうと本当に意味がないし、そもそも別に本記事はセトウツミの紹介を目的にしていない。2025年にそんなことしてどうする。ただセトウツミにみられる要素に、俺の求める何かが一つ、確かにあるんだよなぁ、と思うんだ。
触れないことによって、触れられないものに触れる
セトウツミは一応ギャグ漫画に入るのではないかと思われるが、彼らの笑える会話で描かれているリアルはけっこう笑えないものが多い。離婚、徘徊老人、スクールカースト、家庭内ネグレクト……こういった重い背景をベースに、軽やかに、しかし一線を越えない抑制をもって語られている。この抑制が良いギャグ漫画にはあるものだと思う。ギャグは滅茶苦茶なようだが、実際には「これ以上、いけない」のラインがある。しかし、そのラインの直前に面白さがある。くだらないだべりから、生々しさが勝って笑えなくなるライン一歩手前に迫る起伏が、俺の手を次のページに向けてめくらせる。
本作では多くのタブーに近い問題が語られるが、家族問題は特に重要で、セト・ウツミの両者ともベクトルは違えど家庭の問題が抱えており、話が進む中で少しずつ見えていく。そしてそれが最終話まで繋がっていく構成のため、いかにもどこからでも読めそうな漫画なのに、実は最初から通してよまないといけない。本作は日常ものに見えて、その本質はストーリー漫画に近いように思う。実際、本作の多くの小ネタが、最終話の爆発に繋がっていく。
くだらない話をしているようで……実際くだらないのだけれど、その背景には真に迫った切実さがある。その奥には踏み込んではいけない闇がある。その闇はあまりにも生々しいものなので、触れてはいけない。しかしその人の本質に迫るものだ。その闇を、触れないことによって触れている。そうして特別な関係が築かれていく。
俺はそういう話を読んだ時、少し、人間というのも捨てたものではないなぁと、いうようなことを感じているかどうかは知らないが、ま、好きなんだね。言葉を主体として、人間のシビアなところに触れないことで触れる、そういう関係がいいんだろうな。初期のかぐや様なんかもそんな話だったと思う。

ラブコメ漫画の感想サイトなんてものを10年近くやってきて言うことでもないんだが、ラブコメではないからこそ、俺が求めているものの一つが、セトウツミにはわかりやすくあるように思えた。
ニヤニヤしません(残当)
まぁでも、あれです、ニヤニヤはしないです。そりゃそうだ。これ見てニヤニヤするやつは脳が腐ってる。……けっこういるのかしら。なんだろうね、ニヤニヤして満たされる何かも確実にあるから、本作は俺が求めるものの一つでは確実にあるけれど、すべてではないのはそう。ま、だからこそ、あれこれといろいろな作品を読んでいるわけだが……。
またそのうち、思い出して読むんだろうな。そう思える数少ない漫画の一つであることは、確かです。
コメント
コメント一覧 (2件)
セトウツミ面白いですよねー
バンブーブレードの感想も楽しみにしてます
セトウツミ地味に何度か読み返しています。絵しりとりの話は完全に内容覚えているのに、読み返して声をあげて笑った自分に驚きました
いつかバンブーブレードまで辿り着きます多分……