SM……というかなんなのか。ヒロインの佐渡はサディストというよりはサイコパスに見えるが。江村くんは……マゾっちゃマゾなのかねぇ。
うーん、この1巻だけだと評価がかなり難しい。とにかく佐渡が江村をいたぶって、江村がそれをひたすら悦ぶという、SMとも言えない不思議な話がひたすら描かれるばかりだからだ。
この不可思議さは、江村の心理のなぜをほとんど描かないことによって生まれていると思う。そして、これは恐らく最終的には描かれ、佐渡と江村の心も交差する時が来るのではないかと思われる……が、どうなるかはわからないし、正直この手の変態漫画は結局普通に落ち着いちゃうのが多いんだよねぇ……。
全3巻であるし、今後の展開次第ではどう転ぶかわからないが、しかし……1巻はKindle Unlimitedにラインナップされていたから手にとってみたものの、金出して2,3巻読みたいかというと、うーん。正直600円出してはうーん。
以下1巻感想ー。
SMとは
一般漫画でSMを標榜したもので、本当に最初から最後までSMを描いたものは少ない。特に少女漫画っぽいやつだと、奇をてらったのか性倒錯を全面に出した話も見るが、だいたいどれも「最後は純愛に落ち着く」という印象だ。
で、本作もご多分に漏れずSMっぽくはない……のだが、かといって純愛でもない。が、恐らくラブコメではあろう。というか、ラブコメじゃないとこの手の話は成り立たない。佐渡と江村が異性同士だからこそ成り立つ話である。
佐渡は美人の設定だが、江村にとって佐渡が美人であることが重要なのかどうかはわからない。佐渡のスカートの中を覗き込んでいたようにも見えるので、佐渡の容姿も彼にとっては重要なのだろうか。よくわからん。
説明しないことによる空気感
とにかく江村はよくわからん。佐渡は「これサディストっていうかサイコパスじゃね」というくらいの加虐趣味ではあるものの、他人をいたぶって悦ぶのは、程度の差こそあれ所詮猿に過ぎない我ら人間が備えた本能的な快楽である。
それに対し、いたぶられて悦ぶというのは中々理解に苦しむ性癖である。江村は何者だ。しかも、本作において佐渡の心理描写はそれなりにされるが、江村はほとんどされていない。かなり謎めいている。いや、その時の心理は描かれているのだが、その心理の「なぜ」が描かれていないのである。
1巻時点においては、この江村の心理の根源をまったく説明しないことにより、よくも悪くも作品に不思議な空気が醸成されている。こういう作品の反応は大きく分けて2つあり、「わけわからん」と理解に苦しんで低評価する者と、「いや、これは深い……」などと勝手に深読みして高評価する者である。
書き方からわかると思うが、俺は前者に近い。俺は、説明を放棄してそれっぽい空気を出すだけの作品を好まない。底の浅さを隠しているだけの雰囲気漫画だと思う。したがって、現時点において本作に対する印象も良くはない。
が、評価が難しいと思うのは、「描写する気がまるでないわけでもなさそう」、と思えるからだ。本作についてはけっこう描写していることもある。とすれば、今はまだ謎掛けの途中なのかもしれない。
佐渡は案外頑張っているし江村の目は案外厳しい
3話以降、佐渡はけっこう江村をいたぶるために準備を頑張っている。それは佐渡にとって、「本当に私のことが好きなのかしら」と疑ってしまうつまらないプレゼントに比べると、よほど心のこもった行為なのかもしれない。佐渡は己の歪んだ欲求をかなえているようで、案外江村のことを考えている。
一方で、江村がどれだけ佐渡のことを考えているかはわからない。佐渡のことは好きなようだが、その根源がわからないし、佐渡のために何かしようという感じでもない。江村にとって、佐渡はあくまで「好きな餌をくれる飼い主」でしかない。実際、佐渡が何か提案をしても、その意図がわからない間は非常に冷めた目をしており、餌の良し悪しをじっくりと見極めようとしているように見える。
つまり、決して佐渡の一方的なものではなく、この二人は常にお互いを値踏みし合っているわけだ。
だからこそ、最後の誕生日の花火で江村が見せた笑顔と、そんな江村を眺める佐渡の間には、どこか心の交差するところが見て取れて、「ふむー」と俺も考えてしまったわけだ。これはまさに、ラブコメ的な心理的距離の接近に他ならない。
ラブコメの難しさよ
しかし難しいのは、こういう心の機微をあまり出してしまうと、「なんだよ結局ただのラブコメじゃねーか」と鼻白んでしまうことである。なんて我儘なんだ読者は。読者こそ真のサディストである反省しろ😊
まぁでも実際、そのパターンは多いのである。ラブコメにおける心理描写のなぜは、ミステリーの種明かしのようなもので、話の根幹でありながら、わかってみると「なーんだ」となってしまいがちだ。
ということで、1巻時点で二人の関係に面白さを感じないわけではないものの、600円だして2,3巻買えるかというほどでもなく、うーん、どうすっかなーという煮え切らない感じなのであった。中古で安くなっていたらポチるかも。
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