山本アリフレッド, 理系が恋に落ちたので証明してみた。 7, 2020
いいわぁ。オキシトシン出まくりですわ。この漫画幸せになれるわー。
理系をテーマにした漫画ってたまにあるけれど、漫画としての面白さを追求すると理系的に浅すぎ、かといって理系的に深すぎると漫画として面白くないみたいなジレンマに陥ることが多い印象だったのだが、本作は非常にバランスがよい……どころか、理系的要素と漫画的面白さが相乗効果で引き立てあっているね。ゆうきゆう以来の衝撃だわ。
この漫画、現在進行系でジャンルを開拓していると思う。
登場人物は情報系でありながら、生理学の領域にも踏み込んでいるのは作者さんこの漫画のために勉強し直しているんだろうなーとか思えて好感持てる。ちょいちょいためになるから小憎らしいわ。人間死ぬまで勉強、やね。
あ、そういえばアニメ化したんだっけ。アニメ化おめでとうございます。けっこうこんなんがきっかけになって理系を志す人って、案外本当にいると思うよ!つくづく人類のためになる漫画だね。以下7巻感想。
ジャンルを開拓している
オキシトシンという新たな指標を手にしたこの漫画の快進撃はとどまるところを知らない。今まさにジャンルを開拓していると思うわこの漫画。過剰な演出をしつつも、オキシトシンの波動(※そんなものはない)とかにべもない註釈の自己ツッコミが理系っぽくていいな。いいバランスだ。
なにげにためになる
読んでいて地味にためになることあるし 笑。クロモブラニンAって初めて聞いたよ。ストレスの指標になるんすか。確かに検索すると、臨床試験の論文とか引っかかるわ。アフィリエイターどもの知識が及ばない領域らしく、まとめサイトとか一切引っかからず、古き良きGoogleが垣間見れる。ってかつくづくアフィリエイターどもはネットを破壊したよな。
ノルエピネフリンって何かと思っていたらノルアドレナリンのことなんやね。ためになるわ。バソプレシンも知らなかった。一夫一妻のネズミ(プレーリー・ハタネズミ)がいるとか衝撃だったし、バソプレシンの有無で一家を守ったり浮気したりと行動が変わったとか、すげー示唆的な研究だと思って普通にもっと知りたいと思ったわ。
バソプレシンについても検索結果が真っ当で、これもアフィどもがいない頃のネット。WIREDあたりがとりあげていたりするのはさすがではある(「男性の離婚遺伝子」は存在するか|WIRED.jp…2008年の記事かい)。これも、アフィリエイターに目をつけられた瞬間に検索つかいものにならんくなるからね(まぁ学術の領域はGoogle Scholarという有り難いものもあるのだが、もう少しラフに、ガチすぎない程度にためになる情報ってのもほしいんだ)。
オキシトシンという強力な指標を得ながら、他の指標を持ち出して、多面的な結論に導いていくの、とても理系的でいいね。いや、理系的というより、論理的というべきか。理系だろうがなんだろうが、大切な姿勢だよな。恋愛状態→愛着状態で指標が異なる恋愛3年説は俺もなんか納得だわ。オキシトシン出れば幸せってんなら、覚醒剤打ってセックスすんのが最高の幸せになっちゃうしね。そんなわけないよね。
幸福とは、快楽ですらないかもしれない。たとえ苦しみしかなくても、そこに意義があると思えば、人は時に命を懸ける。それが人間ってもんだろう。だから、快楽の凄まじさを認めつつも、刹那的な快楽に流されないために、みんな頑張ってるわけで。
みんな知っているんだ、幸せすらも、必ずしも人生の意義ではないということに(幸せこそすべてと唄う坂本冬美の幸せハッピー「(52) 坂本冬美 HISライブ 幸せハッピー 2006 - YouTube」は名曲だと思うし大好きだけれど、言葉を額面通りに取る歌でもないと思っている)。
良いラブコメはいつでも、ラブ以外の何かが素晴らしいと思うんだよ。それは多分、素晴らしい人生ってことなんだ。
理系的要素と漫画のシナジー効果
単なる理系あるあるではなく、理系的要素が存分に活かされて漫画としても面白いってのはこれすごいことで、個人的にはゆうきゆう(メンタルヘルスだから医学だけれど)以来の衝撃だと思う。
実際ギャグのキレがだんだんゆうきゆうっぽくなってきていて、本巻の筋トレ漫画内漫画とか完全にゆうきゆうのノリだなとか思っていたら、オマケページで思いっきり名前出ていて笑ったわ。この漫画好きな人はきっと好きだから読むといいよ。ラブコメ要素は微妙だけれど。
……マンガでわかる心療内科は、療先生とひめるさんのラブコメ絶対需要あるのに……読者のお便りでも期待されていたのに……描いてくれないんだろうなぁ……。こがね兄妹のラブコメは描いているあたり、ラブコメ自体は好きそうに思えるんだが……あすなを差し置いてひめるとくっつくのは問題だったりするのか?でも療先生は絶対ひめるさんが好きだよね……って、ああ関係の話をしてしまった。
リアルな大学事情
研究室は情報系だし、多分作者さんも情報系だと思うんだけれど、生理学の領域に踏み込んでやっているのいいよね。きっとこの漫画のために勉強し直しているんだろうな。頑張る人は応援したくなるね。俺も頑張らないと。
遠心分離機の話があったけれど、個人的にこの装置は内視鏡と並ぶコロンブスの卵というかアホの発想だと思っていて、原理は単純で言われてみれば確かにできるけど、え、やる!?みたいな。
「胃の中がどうなっているのかわかればなぁ」
「カメラ飲めばいいじゃないですか!」
→内視鏡爆誕
「成分ごとに分離させることができればなぁ」
「振り回せばいいじゃないですか!」
→遠心分離機爆誕
みたいな。
で、その装置自体はすごいんだけれど、それを使うことがすごいかといえば、それはそんなことはなくて、使うこと自体は誰にでもできる。遠心分離機を使った分析の工程は俺も何度かやったけれどただただ苦痛だった。そういうのが嫌で、ナマモノ扱わない方向に走ったのはある。
っていうかそっち系は危ない研究室も多かったしね……ピペット土方で調べるとこの国の闇の一端が窺えます。10年以上前からすげー問題になっていたのに、いまだに言われてるってことは、状況変わってないんだな……。
アニメ化したし、この作品がきっかけになって理系志す人ってマジでいるんじゃないかなと思うし、それは素晴らしいことなんだけれど、生物・生理・脳科学・生命科学系あたりは注意しようというか、基礎化学や生物・生体が絡むやつは、研究内容と実際にやること、主な就職先をマジでよくよく調べてください(本気で言っています)。
パラメータを決めるもの
まぁ俺はもうとっくにそんな時期は通り過ぎて、というか生身の恋愛もせずにラブコメ読んで「オキシトシン出るわ〜」とかほざいているわけで、そんな自分の人生に思うところはないでもないのだが、しかしまぁ楽しいのだから仕方がない。
だいたい恋愛ばかりが人生ではない、というとラブコメサイトで言うことか?と思うが、前述したように良いラブコメというのはラブコメのラブ以外の何かが素晴らしいのだと思っている。そういう漫画は、たとえ恋愛の話をしていても、人生に対して示唆的なところがあると思う。今回であれば、後輩ちゃんの恋愛相談に乗る雪村とか。

「その友人に言っておけ
山本アリフレッド, 理系が恋をしたので証明してみた。 7, 2020
その数値を決められるのはお前だけだと」
名言いただきました。
そうね。たとえ式を作ることができても、最後は何かしら、仮定に基づくパラメータが必要であったりする。それは実測に基づくこともあれば、経験や何だったら勘に基づくこともある。
恋愛を解き明かす方程式があるとは考えられないが、もしあったとしても、最後のパラメータの決定は、自分の心に聞くしか無いだろう。恐らくは、その決定できないパラメータこそが、その人そのものであり、人生観であり、世界観なのだと、そんなことを思う。
証明する恋もない、俺の人生方程式のパラメータが決まるのはこれからだ!
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