『レヴァリアース』を語りたい:30年経ってなお残る純愛の余韻

レヴァリアースは語り継がねばならない(使命感)。5年に一度くらい突然読みたくなる漫画の一つ。

比較的新しい(?)作品について語ってきた本サイトでは、もっとも古い作品の紹介となるだろう。何しろ1巻の初版が1994年、30年前。金のない小学生だった俺は数多のBOOKOFFを渡り歩いたものだ。なぜ2巻しか置いてないんだBOOKOFF。

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ノリも絵柄も当時という時代の空気が存分に反映されたものであるため、今読むとちょっとつらいかもしれない。ただそれを差っ引いても話の筋は読めるし、また設定が個人的にラブコメ好きにはめちゃくちゃ刺さるものだと思うので、以下全3巻紹介あるいは単なる語り記事。読んでない人も考えたネタバレに配慮したものになります。ただしコナン=新一レベルのことは言う必要があります。

目次

変わる変わるよ時代は変わる

本サイトではだいたい2010〜の作品について取り上げてきたのだけれど、もっと昔の作品についても掘り下げて後世に継いでいかなければならないのではなかろうか、などと殊勝なことを思ったわけではないのだけれど、今回は現在本サイトでは一番古い単行本1巻が1994年刊行作品となります。

絵柄といいノリといい、当時の時代の空気がたっぷり詰まっている。当時を駆け抜けた人ならば「ああ懐かしい」で済むかもしれないが、そうでない場合はかなりつらいかもしれない。そこはなんというか、文語文を読むような気持ちでというか、時代考証の一環と思って読む必要はあるだろう。

まぁそれについては読むのが一番早い。ほんの一部を切り出しただけでも「あっ(察し)」といったところだろう。

マンガ図書館Z, 夜麻みゆき, レヴァリアース 1

改めて通読したところ、やはりノリについては「そんな時代もあったね」と特に笑うでもなく思った。それでも話の筋自体は意外なほど追えたのは、知っているからばかりでもないだろう。ノリにさえ振り落とされなければ、しっかり読める作品と思う。まぁ正直言うと細かな世界観の設定語りについてはもはや目が滑るんだけれど(著者の作品の場合むしろそこが好きという人も多いんだが……)、ストーリーを追う分には適当に流しても特に問題ない。

重要な世界観の設定は2つだけ

本作を読む上で重要となる世界観の設定はせいぜい2つだ。

  • 最近魔物が暴れ出した
  • 僧侶と魔法使いは対立している

これだけだ。これさえわかっていればどこからでも読める。今にして思うと、これしかないからこそ、全3巻というストーリー漫画としては決して長いとは言えない巻数の中で、高い満足感と余韻を残す作品になったのかもしれない。

もちろん作品の世界観を醸成するという観点では、その他の細かな設定についても大きな役割を果たしているんだけれど(実際、本作の魅力の源泉である)、それらはなんとなく流す程度でも十分に感じられる。

そのうえで、取り扱われているビッグテーマとしては、ざっくり「人間と魔物の共生」「宗教的対立」「英雄」「家族」あたりがあるだろうか。中学生男子に大いにウケるやつだが、実際のところ深く考え出すと答えのない難しい問題だ。ただこれらについて結論めいたものを出すわけではなく、最終的に主人公二人(と1匹)の絆に落とし込まれる構成になっている。

男装女子と女嫌い

そしてその主人公二人、ウリックとシオンの関係こそが本作の要とも言える。

夜麻みゆき, レヴァリアース 1, 1994

この二人は表紙を見る限りは「男の子2人」に見える……が、片割れの黒髪・ウリックは女の子である。男装女子です。しかも武闘派男装女子です。そしてもう片割れの金髪・シオンは女嫌い(というより女が苦手というべきもの)です。

これは今にして思うとフェチ全開な設定だと思うんだが、あまり見ない設定でもある。武闘派男装女子くらいはちらほらいるが、その組み合わせとしての女嫌いはほぼ見ない。男向けのラブコメだと男嫌いの女はよくみるが、その逆はあまりみない。と思ったが、少女漫画だったらけっこういたりするんだろうか。女嫌いのイケメンが自分だけ好きになる、って少女漫画のほうっぽい。実際本作は少年向けと言って良いと思われるが、読者層には女性比率高そう。

しかも、男装女子であることは、同じ旅仲間に明かしていない。今見ると「さすがにわかるだろ」と思わなくもないが、とりあえず設定的には「女の子であることは秘密」である。この状態でラブコメやるのはかなり厳しく、実際本作はラブコメには入らないだろう。

そういうわけだから、この二人の関係は単なる恋愛関係とは言いづらい。特にウリックはそもそも「恋愛」という概念自体を理解できていないだろう。それにも関わらず、ラブコメ好きに刺さると思われるのは、やはり二人がどこまでも男女だからには違いない

決して明確に描かれないながらも、そう思わせるものがある。これは本作の特徴で、何一つ明確にしないまま、あらゆるテーマをウリックとシオンの関係に落とし込んだところに、本作の余韻がある

たったの全3巻で、王道のファンタジー作品としては「ラスボス」に相当するところまで物語が進むのだが、不思議と急展開という気はしない。あとがきによればもとより3巻と予定していたらしいし、これがちょうどいい長さということなのだろうが、それにしても筋がしっかりしていたのだと思う。だからレトリックこそ90年代全開ではあるものの、令和の時代でも話を追える。そして限られた話数の中で展開したからこそ、30年たって今なおやまない余韻を残しているのだろうと思う。

……と、さすがに古い作品なのでまず「読んでない人」も意識した書き方をしたつもりだが、結局読んだ人向けの記事かもしれない……と思いつつ、ネタバレを気にしない感想記事はまた後日書きます。感想記事っていうか、多分「ウリックとシオン」の関係にフォーカスして書くかな……。

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