『怪物王女』20巻(最終巻)感想:最高のボーイ・ミーツ・ガールだった

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20巻という長きに渡った王位継承争いにも決着がつく怪物王女最終巻。でも王位継承の争いは、この漫画の本質ではなかったと思う。ボーイ・ミーツ・ガールの総決算だよ。

以下ネタバレ感想ー。

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姫とヒロ、最後の戦い

王位継承の争いの結果は、要や延長戦である。進展があることは伺わせながらも、エミールの望んだように、姫が王になることはかなわなかった。王族の正体の肝心なところは、結局明かされず。そこまで踏み込む予定だったのかどうかはわからぬ。しかし、それは問題ではない。最後の最後、姫とヒロが共に戦うことにこそ意義がある↓。

光永康則, 怪物王女, 第20巻
光永康則, 怪物王女, 第20巻

姫の表情がええやん。かつてはヒロだけ死地から逃がそうとしたこともある姫が、最後の戦いだと、共に戦えと言うのがいいじゃないか。それだけ、成長したってことだ。

最初から完成されていた姫に対し、ヒロの最初ときたら頼りないの一言だった。コイツで大丈夫かよ?と姫の周囲ならず読者としてもそう思ったもんだ。資質があったことは示されるものの、それから長らく見習い時代が続く。それがいつの間にか、男の顔をするように…↓。

光永康則, 怪物王女, 第20巻
光永康則, 怪物王女, 第20巻

いっちょ前のことを言いやがる。そして、この宣言には血の戦士とか効力とか契約とか、そんなものではなく、一人の男として姫を護るのだと、そういう意志が感じられる。姫もまんざらではなさそうだ。

、次のページでは情けない姿を晒すのがヒロの愛らしいところである↓。

光永康則, 怪物王女, 第20巻
光永康則, 怪物王女, 第20巻

1ページ前でかっこよくキメたばかりなのにw 姫の「……」が笑いを誘う。未来のヒロは体つきや雰囲気からして、精悍な戦士であり、このようなミスもしなかろうが、この時点ではまだまだ経験不足ということなのだろう。

この後、ヒロは自分は驕っていたと反省する……しかしそのような反省自体が、1巻のヒロからは想像もつかないほど成長していることの証左でもある。心構えは顔つきにも表れる↓。

光永康則, 怪物王女, 第20巻
光永康則, 怪物王女, 第20巻

この顔は1巻の時のヒロには絶対にできなかった顔だろう。自分もその場に行かなくてはという決意に、どことなく憂いを帯びているような印象もある。憂いは、自分が今いるべき場所にいないからか、姫の安否の心配か、それとも戦いそのものについてか。わからないけれど、ただ、真剣な男の顔やね。14歳の顔と考えると、その過酷な生活がうかがえる。

ボーイ・ミーツ・ガールとして見ると

最終決戦の後、力を使い果たした姫は、王族の力を失う。そうして、再会したヒロに向かって、初めて自分の名前・リリアーヌを名乗り、自分をただの高貴な「女」と言う。

「だから ‥‥ヒロ せいぜい 懸命に仕えるが良い

一生‥な」

もう一生ってそういう意味にしか見えん!

もはや契約も何もない。ただ二人の信頼と絆がある。ここで、新しい関係が結ばれた。そこにいるのはただの男女だ。うむ……このために読んできたと、思えるよ。

本作は世の中のあらゆるB級を詰め込んだごった煮だ。けれど、姫のキャラクターの素晴らしさと、作者の引き出しの多さから紡がれる多様なストーリーが、ただのB級で終わらせなかった。そのうえでこの作品を魅力的なものにしたのは、王道をいく王道である、ボーイ・ミーツ・ガールの要素だ。やはり、姫とヒロの二人揃うことで、この物語は一気に昇華されたと思う。どう見ても釣り合わなそうな、主従関係すら不釣り合いな印象さえあった姫とヒロが、二人の男女の関係を思わせるまでになる過程が素晴らしい、最高のボーイ・ミーツ・ガールだったよ。

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