作・海月れおな。"くらげ"れおな?と思ったけど、ページめくったらUMITSUKIとあったので"うみつき"らしい。でもTwitterみたらkreonaってなってて、kってクラゲのkなんじゃとか思いつつ、UMITSUKIらしいので"うみつき"で。
恋する美少女、それは萌え漫画においてあらゆる罪状を免罪する萌え記号。その免罪符さえ効力を失いかねない、軽度の知的障害すら疑うその行動に読者はドン引き。
いわゆる要介護ヒロインは昨今珍しくないが、ファッションセンスがやばいとか、食べ方が異常に汚いとか、粗相をするとか、言動が幼稚に過ぎるとか、要介護レベルが生々しい。
可愛いは正義。萌え漫画を読む人間は少なからずそのポリシーを持つが、そのポリシーを根っこから揺るがせるチャレンジングな作品。これほど主人公が羨ましくないラブコメがあっただろうか。面白かったわ。以下1巻感想。
ポンコツとか残念とかそんな次元ではない
主人公のことが大好きな美少女の幼馴染。萌え漫画じゃよく見る設定だ。にもかかわらず、ここまで主人公のことが羨ましくない、というよりよくこのヒロインを相手にできるなと感心すら覚える。
ポンコツというけれど、そんな可愛い言葉で表すには、あまりにも汚い(物理)。そしてその汚さが生々しい↓。
彼女が机にこぼした液体を口で舐め取りだしたら、百年の恋も冷めるわ。全体的に液体なんだよな。汚さが。生々しさの要因の一つはそれだろうか。謎の彼女Xの涎のように、ある種の芸術性があるわけでもなく、ただただ汚い。
この子コップの中に入れたコーヒーと砂糖、牛乳を口でぶくぶくして混ぜるしな。汚い。主人公・翔太はこれをポンコツラッシュと表現するが、ポンコツなんてそんな生易しい次元ではない。
もうとにかくいちいちひどい。本当にひどい。服装にコダワリがないださいオタクでさえも、並んで歩くのがためらわれるだろう壊滅的ファッションセンス、靴を脱ぎ散らかす、食べ方が汚い、こぼす、舐める、幼稚園の我儘な子供のような幼稚で浅はかな言動…。昨今は要介護系ヒロインも珍しくないが、それにしてもここまで酷いのはさすがにいない。
こんなのに付きまとわれる幼馴染の主人公・翔太には、羨ましさをまったく感じないどこか、むしろ同情の念すら沸く。クラスメートからは、幼馴染との仲を囃し立てられるというより、生暖かく見守られているようだ。しかし、幼馴染の醜態に妙な責任感を感じているとはいえ、この男はなんだかんだいいつつも、世話を焼くのが嫌いではないのだろうとも思う。
ちょっと話は逸れるけど
この漫画を読んだら、昔2ちゃんねるで見た(VIPとかなかった頃、ほんとに昔だよ)、知的障害の女の子とヤった奴の話を思い出した。好きでもなんでもないけど、障害あるから簡単にヤれたよ、そしたらやけに懐かれて、めんどくさいけど、なんか可哀想だから付き合ってるっていう、そういう話。
匿名掲示板の書き込みであるし、本当かどうかはわからんが、ネタにしても最低な話だ。しかも語り口がいちいち露悪的で、その女の子をバカにしているのが見て取れたものだから、胸糞悪く感じた人がたいていのようで、コメントのだいたいが叩きだったと思う。
でも、その行間に捻くれた愛情が俺には感じられた。何かプレゼントをすると、異常に喜んでそれを延々と取っておくから、ナマモノはあげられないんだよ、みたいなことをぼやいていたのが印象的だったな。
表現は相当捻じ曲がっていたけれど、それは愛情の一つの形だったのだと思う。愛を嘲りの言葉で糊塗しないと、気恥ずかしくって表に出せない、そんな哀れな青年だったのだろう。そして、理解できないが故に、女の子はその愛を無邪気に信じることができたのだろう。そんな風に思えた。それはすごく運命的で、幸福なカップルじゃないだろうか。
同じように感じた人もいたようで、罵倒の中に紛れて、暖かいコメントをする人もちらほらいた。
ネタだったにしてもだ、あのログはとっておきたかったな。語り主は最後結婚までしていたはず(それを言祝いだ人は少数派だったが)。今もネットの海のどこかにあるんだろうけれど、もう見つけることはできまいな。何度か探そうとしたけれど、ダメだった。若干記憶を美化しているところもあるだろうし、見つけられないほうがいいのかな。あの話に愛を感じられた人なら、この漫画はいいだろうな。
試される萌え漫画
もっとも、この漫画の主人公・翔太は、あのスレッドの語り主と違ってひたすら面倒見のいい優しい(優しいという言葉に説得力のあるやつは中々いないぜ)男である。翔太が好青年だから、この漫画は案外あっけらかんとしている。手料理と称した、ビニル袋に入れたお茶漬けを食べてあげる翔太は優しさの塊だと思う。しかもちゃんとおいしかったよって言ってあげるんだよコイツ聖人か!また、ヒロイン・早菜恵は本気を出せば高校受験でそれなりのところ(翔太と同じところ)に受かることができるようなので、明確に知的障害というわけではない模様。
なんにしても、試される萌え漫画であることは確かである。面白かった。
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