吉辺あくろ, お従兄さんの引っ越しの片づけが進まない 5, 2020
あ……終わってる。マジか……まぁ前回高帆告白しちゃったしな。
しかし最後は若干急だったな……でもあのおまるがしっかりフラグだったとは侮りがたし。
少女漫画みたいな表紙してるけど変態だからねこいつら。そうでないと成立しないカップル。
変態に変態をぶつけて中和するタイプのカップルであった。変態と変態はカップルとなってお互いカバーしあったとき、ただのちょっと変わった人たちにクラスチェンジする(してしまう?)のである。それは変態にとって救いなのか否か。
そしてなにげにラブコメ界では実はあまり多くない気がする従兄弟カップル。幼馴染はまぁ仕方ないね。以下最終巻こと5巻感想。どこまでも幸せハッピー大団円だったのに、なんとなく寂しさを感じたよ。
ここまでー
終わったか……そうかー…。残念な気持ちもあるし、まぁこんなもんかなぁという気もする。元々ストーリーよりはその場その場の小ネタで場を繋ぐタイプの作者さんだし。
成叶の体育祭でわびさびの話になった時、「どうでもいいけど「わびさび」っていう小惑星があるらしいよ」「へー」という本当にどうでもいい会話が1コマ挟まれるが、この別に面白いわけでもないただのウンチクが物語の進行上なんの関係もないというあたりに、この漫画らしさを感じるよ。
そんな感じだから、長く続けたところで何か深まったかというとそうでもなかったろうな、とは正直思う。絶対☆霊域も9巻まで続いたけど、半分の長さでも物語的にはどうってことなかったろうし。まぁそういうスタイルだよな。
変態と変態の化学反応
作者さんの作風はまぁ日常系なのだが、やはり特徴的なのはメインキャラにおける変態率の高さだろう。本作のお従兄さんこと藤嗣はもちろんのこと、主人公にしてヒロイン・高帆もまた弩級の変態であった。
というかまぁ、中盤以降については高帆の変態ぶりのほうが目立っていたかもしれない。なにかと藤嗣にスキンシップをはかろうとするし。

性に目覚めた中学生かよ。性に目覚めた中学生だった。
これはまぁ、藤嗣が平気で変態プレイをしているので、じゃあいいかと感覚が麻痺しているのだろうが、まぁ元々の素質が藤嗣をきっかけに開花したと見るべきだろう。
なにしろこの一家、全員変態だった。

父の衝撃の告白に言葉を失う高帆。そんな父の相手をしていた母ももちろん……。おまるってこれフラグだったんかい。ちょっと感心してしまったわ。
自分の親が変態プレイしていて挙げ句その時のグッズを後生大事に持ってるとか子供からするとグレる理由としては十分だと思う。だが高帆はぐれない。高帆は変態のサラブレッドであった。
一番ショックを受けたのは成叶で、「この家…変態しかいなかった」と遠い目をするのだが、藤嗣のプレイに平気で応えている時点でお前も相当だぞ。
変態が変態でなくなる日
そんな変態の二人がくっついて、めでたしめでたし世界平和……というたいへんハッピーな話ではあるのだけれど、最終話付近の怒涛の2話は、運びこそ静かでありながらやや異質なものを感じなくもない。
高帆から告白の返事を急かされた藤嗣は、自分は変態だから高帆に相応しくないと言う。高帆にしたらそんなの今更という話で、そんなことより藤嗣が自分がどう思っているのか、と声を荒げて問い質す。
で、高帆は半ばあきらめの境地だったわけだが、藤嗣は高帆に「好き」と返事をする。返事を先延ばしにしていたのは今の関係を壊したくない、言い出しづらいからで、となると自分は振られる可能性が高い、と高帆は考えたが、実際にはそうではなく、藤嗣は高帆の想いに答える覚悟が決まっていなかったのだ。
それはどうしてかというと、「自分は変態である」という負い目のためだった。藤嗣は明るくハッピーなポジティブオープン変態に見えるが、実は己の中に闇を抱えていたことになる。まぁだからこそ、同じような闇を抱えた百合厨の友人などがいるということなのだろう。
そんな藤嗣にとって、彼を受け入れてくれる高帆は「大事な人」だ。その好意には応えたいが、同時に応えていいのか?と引け目も感じる。もっと率直に言えば、自信がない。そこを、高帆に後押しされる形で、その想いに応えるわけだ。
そういう感じなので、高帆の好きと藤嗣の好きはちょっと違うのだろうなと思う。実際、高帆の妄想では藤嗣に自分を求めてほしいことが窺えるが、恐らく藤嗣は今後も高帆を情熱的に求めるようなことはなく、慈しむように愛でる感じになるのではなかろうか。まぁ趣味のSMプレイならハッスルするかもしれないが。高帆もそんな藤嗣が見たくてSMに走りそう。
まーね、読者的にはこんなエロい中学生がいるか!みたいな高帆だけれど、藤嗣にとっては妹的な存在……というかまぁ、ぶっちゃけ現実の女性らしい女性にあまり情欲を持てないのではなかろうかとすら邪推される。
両親に変態暴露するのは、高帆の想いに応えようとする自分を止めてほしかったのではないか、ともちょっと思う。それは高帆のためであると同時に、自分のために。が、なんとまぁ両親もまた変態であったという超展開で、彼は腹を決めることになるのだが。
「私は…そう、未来の君だ」とは高帆父の言だが、彼はきっとまだ奥底にその変態性を秘めているのだろうが、少なくとも良き父として振る舞えている。藤嗣はそれを「嬉しい」と言った。まぁ、そういうことか。
周囲に受け入れられたことで、藤嗣はやがて徐々にその奇行を落ち着かせ、まぁせいぜい高帆とSMするくらいになるのではなかろうか。高帆の変態ぶりも藤嗣相手限定であるし、周囲からすると、二人はちょっと変わっているけれどもなんてこともなく幸せハッピーなカップルに見えるはずだ。まぁ高帆はもうちょっと情熱的に求めてほしいなーと色々画策しそうだが、本質にはピュアなところがあるので、優しく撫でてくれるだけでも本当は十分幸せを感じられるのだろうし。
そうして受け入れられた彼とその周囲は、今をピークにして徐々に世界に溶け込んでいくのだろう。そこに在りし日の変態はいない。変態とは相対的なものだからだ。まぁ、彼の心の奥底で、きっと眠り続けることだろう。どこまでも幸せハッピーな大団円であるのに、なんとなく寂しさを感じるのは、きっと「私もまた…変態的ということさ…」。
変態たちに幸あらんことを。
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