田口ホシノ, お嬢様の僕 4, 2019
表紙は誰?と思ったら新キャラだった。しかも妹系。小学生。若い。足が眩しい。
妹系といっても実妹ではなく、従兄弟です。親身になって育ててくれた従兄弟のお兄ちゃん大好き、なアレ。でもお兄ちゃんのほうは俺が育てた可愛い妹、なアレ。
というとテンプレっぽいのだが、妹ちゃんの恋愛的な意味での好意にちゃんと気づいて、「あー……」とブルーになってしまう、のはちょっと珍しいかもしれない。
みのりの好意についても明確に気づいているし、朴念仁が標準スキルなことが多いハーレム系漫画において、ありそうでないところを突いてくるなぁと思う。
今にも修羅場りそうな関係なのにも関わらず、相変わらず安心感のあるラブコメ描きなさる。このバランス感覚がすごい。テンプレートを紙一重で上に行く感じ。以下4巻感想。
前回記事

一見テンプレートだけれど
「まがつき」読んでいる時にも思ったけれど、この作者さんの描くラブコメは、設定自体はいかにもテンプレハーレム漫画っぽいけれど、読んでみるとテンプレ感を感じさせないものがある。まがつきは、一つひとつのお話やそれぞれの関係が丁寧に描かれているからかなぁ、なんて思ったのだけれど、本作の場合はちょっと感想が違って、もちろん丁寧だとは思うのだけれど、設定自体も少し外してきたな、と思う。
この漫画はハーレム系ラブコメに分類されると思うのだけれど、この手の漫画においては、主人公は朴念仁でヒロインは臆病、というのが定番。ヒロインが自分の気持ちに正直で告白するとか、主人公が察しのいいやつで相手の気持ちに気づくとか、そんなことされちゃ嬉し恥ずかし寸止めラブコメは成り立たないわけだ。なにかと弾みで告白、ないしそれに準じる何かがあれば、いいタイミングで花火やら電車やらがやってきて大事な一言をかき消す。ラブコメでは世界のすべてがラッキースケベには協力するのに、肝心の告白には全力を邪魔をする。それが野郎向けラブコメ世界の謎セオリー。
全員好意自覚系の妙
が、本作ではそのセオリーを外してきた。みのりは好意を隠さずハッキリと養太郎に告白する。もちろん難聴で聞こえないことも超解釈されることもなく、しっかり恋愛的な意味で好意を告白されたと、養太郎も理解する。一方で、翼もまた好意を告げるが、それが恋愛的な意味かは微妙……と思いきや、今回出た新キャラの妹に「恋でしょ」と一蹴されるっていう。
いやね、実際読者からしてみたら「それ恋じゃなかったらなんなんだ」という感じなので、変にそこ引っ張られても困る。困るんだけれど、そこを引っ張るのがこの手の漫画のセオリーだと思っていたので、凛子がちゃんと指摘したのは面白かった。
凛子は凛子で、養太郎のこと好きだしね。歳の離れた従兄弟で、養太郎にしてみれば可愛い妹、凛子にとっては初めて意識した異性、ということで、ラブコメにありがちな非対称性の関係。これはこれで定番……なのだが、周囲から「そりゃ違うでしょ」とハッキリ指摘されて、「いつまでも可愛いだけの子供じゃなかった」「凛子に申し訳ないことをした」「凛子の気持ちを勘違いしていた」とブルーになる様は、なかなかありそうでない感じだと思う。
エロスな描写はセオリーどおり
……とまぁ、あくまで心理的な描写や展開は丁寧にしつつ、プールではみのりが裸体を晒して胸を触らせるなど、躊躇わないエロスな描写についてはラブコメのセオリーを貫徹する潔さである。「逃げるわけにはいかないじゃないか」という気持ちで胸を揉みしだくってどういうことだよ。
ラッキースケベどころか確信的スケベ。そこまでやったら付き合えよって思うけが、「すぐに返事は……できないけど……」「うん それでいいわ」って。いや、みのりがそれでいいならなんとも言えないんだけどさ。
ここで養太郎が即答できないのは、やっぱり翼様に気持ちがあるのだろうか……という感じでもないんだよなぁ。養太郎は、ただひたすら戸惑っているみたい。で、最後は「ただの!仕事!(翼様に)特別な感情とかないから!」とつい口を滑らせてしまい、ヒロインズから「アウト」の誹りを受けて次巻どうなる。
修羅場になりそでならないハーレム、だが……
ここまで皆、明確に好意を自覚して、しかもそれを表に出していたら、修羅場になりそうなものだけれど、ヒロインたちの間に不思議な絆ができているのが面白い。結果、いかにもな寸止めハーレム設定の漫画よりもよほどハーレムしているという不思議。まがつきの時もそうだった……しかしまがつきはヒロインズのほとんどが人外だったのに対し、こちらは皆良識ある人間。うーん、どうなるんかねー。

コメント