『からかい上手の(元)高木さん』1-2巻感想:幸せのお裾分け

原作・山本崇一朗。漫画・稲葉光史。2017年1巻。

もちろん現・西片なのであるが、それにしても現在進行系のラブコメとしては衝撃のスピンオフじゃなかろうか。くっつくまでの過程を描くものが多いラブコメ界隈で、原作も終わっていないのに、ある意味"ゴール"を先に描くという。しかも自分で描くんではなくて、別の人が描くという。なんという。

絵柄といい話のノリといい、原作と比べても違和感がない。公式二次創作ではなくて、正統な続編という感じさえする。

西片家の幸福な姿に見ているこちらも幸せになれる。以下1-2巻感想。

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衝撃

スピンオフにも色々あるけれど、ラブコメ原作でまだくっついていない二人の、結婚して子供まで生まれた未来の家庭を描くって、けっこうな衝撃だ。このへんの事情は下記の記事に担当編集者のインタビューが載っていたが、別に作者がやりたいと言い出したわけではなく(そりゃそうだろうけれど)、企画ものであったらしい。

山本崇一朗先生コメント付き!担当編集者が語る『からかい上手の高木さん』アニメ化&スピンオフ誕生秘話 | rooVeR [ルーバー]

まーね、確かにラブコメとはいえ、別に三角関係が構築されているわけでもない、確定カップルのいちゃラブものなので、「将来西片と高木さんはくっつきます!」なんて「コナン=新一」ばりにバレにもなっていないネタバレなんだけれど、それでもやっぱり驚きだ。

原作者直々ではない以上、二次創作の枠を出ないかもしれないけれど、やっぱり公式の重みはあるわけで、先に将来像を描かれると、どうやってもそれ以上のことは原作ではできなくなるわけだから、普通に考えると、原作にとっては大きな大きな縛りである気がする。まぁ逆に言えば、原作でわかっていないことについて、本作には強い制約がある、とも言える。

なので、マジか大丈夫かと若干の心配もありつつ読んだのであるけれど……問題なく面白いわ。ってかこれほんと原作者ちゃうの、っていうくらいに絵もノリも雰囲気もよくよく原作踏襲している。そして、原作に影響を与えない範囲で……つまり、割とどーでもいい日常の話ばかりで、これがとても楽しい。考えてみれば、原作もそうだった。帰り道、石ころ蹴って帰るだけで一話になる、そんな素敵な漫画だったわ。なにも起きないのに、いや何も起きないからこそ、日常の平穏の中にあるちょっとした変化が心に染み渡る、そういう稀有な漫画だからこそできた企画なのかもしれない。

幸福な家庭

そんな素敵な原作という高いハードルを、本作はしっかり越えることができたらしい。

娘がまんま高木さんと西片を足して2で割った感じなのがまず素敵やわ。見た目は高木さんをベースにしつつ、表情は完全に西片。性格は……お父さん寄り?未熟さ故に母にしてやられていることが多いからそう見えるだけかもしれないけれど、成長したとして、かつての母のような小悪魔っぷりが出せそうに見えないので、やっぱり父寄りか。でもアクティブさは母譲りっぽい。将来どんな男と付き合うんだろうね?男版高木さんみたいな人だろうか。

そんな娘を囲む、父と母。その幸福な家庭を見ていると、なんだかこちらまで幸福な気分を味わえるのだから不思議だ。幸せのお裾分けという言葉がこれほどピッタリとくる漫画があるだろうか。

この漫画を読む人に原作を知らない人がいるとは思えないけれど、原作知らなくても十分に楽しめそうだから、これはいいスピンオフなんだろうな。むしろジャンルがラブコメから家族ものになった分、より幅広い客層にアタッチできそうだ。しかし、表向き家族者っぽかったとしても、その奥には在りし日のラブコメがある。西片が娘と一緒になって、かつての高木さんにイタズラを仕掛ける姿なんてのは、やっぱり原作の二人の姿を知っているからこそ、感じられるものがあるよな。

スピンオフとはいえ、そこそこ続いてほしいな。

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