作・林哲也。2016年1巻。もう2巻出ている。
今を時めくTSラブコメだが……想像以上に面白かった。エロスを全面に打ち出しているやつってほとんど地雷なので、あまり期待していなかったんだが、この作品は面白い。
TS、幼馴染(TSと男の娘は幼馴染もの多い気がする)、三角関係、ちょっとだけ人外、そしてソフトエロ……いろんな属性をぶち込むだけぶち込んで、しかもそれが機能している。恋愛要素あるからとりあえずラブコメって言っとけみたいなやつではない、れっきとしたラブコメで好感触。
以下1巻感想。
本当にラブコメだ
変な表現かもしれないが、本当にラブコメだ。触れ込みどおり、たしかにTSラブコメ漫画だった。この手のソフトエロ系の漫画って、ラブコメ要素がものすっごいおざなりなことが多々あるから、けっこう身構えていたのだけれど(だから去年買ってから、ずーっと積読してた)、ちゃんとラブコメで嬉しい。決して、エロ漫画とは言いづらいから恋愛要素あるしラブコメって言っとけみたいな漫画ではない(なおそのようなラブコメは"ちょっとエッチなラブコメ"というキャッチフレーズをつけられることが多い『「ちょっとエッチな」ラブコメの地雷風を浴び続けて思う – 少年は少女に出会う』)。いやーよかった。
絡み合う種々の設定
主人公・安藤了誓が女体化することの理由付けとして淫魔の設定が用いられ、淫魔故にソフトエロ展開になり、能力に振り回される様は見ていて楽しいが、それはやはり想いを寄せる幼馴染・姫咲に一途でありたいという願いがあるからこそ引き立つというもの。元の姿に戻るには、今の姿の異性と性的に触れ合わなければならないという倒錯。わかりやすくエロスな展開になるだけでなく、ラブコメ的に常に矛盾した行動が主人公に強いられるのが、とても面白い。
そして幼馴染は姫咲だけではなく、男の凰児もいて、それぞれ主人公の男の姿と女の姿にそれぞ想いを寄せるという、複雑怪奇な修羅場。これをシリアスにやられると相当つらいものがあるが、コメディタッチなのでまったく気にならない。淫魔設定というコメディカルなファンタジー要素がここでも効いている。
つまりこの漫画、笑えるくらい色々な要素をぶち込んでいるんだけれど、それらがちゃんと相互に機能しているんだな。TSをメインに、幼馴染とか三角関係とかソフトエロとか、さらに淫魔というちょっとした人外要素(といっても見た目はほぼ人間だから"人外もの"としての要素は薄いが…)まで入っているものの、それらが影響し合って、無駄がない。
王道とおざなりなテンプレの違いは、作中でその要素を活かせているかいないのか、だと思うけれど、この漫画はテンプレではなく基本に忠実と言える。結果、一つ一つの設定は目新しくないけれど、その組み合わせで化学反応が起きて、一つの新しい成果物に。
"ちょっとエッチな"描写がウリであるのはそうなのだろうけれど、たとえもっと作者さんの絵がよろしくなく、またサービスシーンがなかったとしても、ラブコメとして十分面白いんじゃなかろうか。続きが楽しみなラブコメ。
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