作・田口ホシノ。今回で終わりかもしれないなと思ったが、まだもうちょっと続くみたい。次巻完結。
この漫画、ハーレム漫画のお手本といっていいかもしれない。もうすぐ終わりそうだなぁという気配と、最後の最後どう転ぶかわからないという点で、ちょっと様子見だったのだけれど、この分だといい感じで終わりそう。
以下12巻感想。
祟りという言い訳なしの関係
今回ついに祟りが解けた。ということで、一気に物語はラストスパートに入ってしまうんだろうか?とちょっと心配していたのだけれど、そんなことはなかった。むしろ、「祟り」という言い訳が使えなくなった状態でなお、織姫たちは八助とどう絡むのかという、本当の人間関係を築こう、というところで本巻がまるまる1巻費やされる。
この漫画はこういうところが丁寧だなぁ。それに、祟りが解ける、なんて大事はさらっと流しながら、その後の人間関係についてはわざわざ1巻費やして描くのだから、力の入れどころを実によくわかっているというかなんというか。この漫画で祟りとは神とはみたいなのをシリアス調で長編やられたら誰得よな。大切なのは、八助と織姫たちの関係であって。
祟りがなくなったことで、一緒にお風呂などの言い訳もなくなってしまい、寂しくなった八助が女体化する話、面白かった。女体化もこの手の漫画じゃさほど珍しくもないかもしれないけれど、その女としての主人公に対し、同性として鬱陶しさを感じるヒロインズの構図↓が面白い。
こういう時ひなたとあかりは気が合うが、織姫でさえだいぶ辟易としている模様。ヒロインたちはヒロインたちで、ひなたを中心にそれなりに良好な人間関係を築いており、その同性同士の忌憚ない関係は、八助との男女関係とはやはり違うようだ。男の八助は、女としては馴染めなかった。
性転換も今となっては定番のネタであるけれど、ここで適当に仲良しにせず、女同士の難しさなんてものが描かれるのは、やはりこの手の漫画として一つ抜きん出ているところだと思う。
それでいながら、ちゃんとエロースとコメディも忘れていない。また、ヒロインたちのもとに戻ってくれという痛切な叫びは、やすこがうざいという気持ちもあれど、やはり男女の関係を築きたいというベースも見え、ラブコメとしてもおいしい。
ここからは、株を落とした八助が、嫌われまいと奔走する文化祭、織姫のためのお祭りと、やはりどれも定番のネタながら、丁寧に感じよく描かれているので、「祟り」とか抜きで、八助を中心に皆の関係が本当に深まっていくのを感じる。
基本に忠実なハーレム漫画
正直言うと、この漫画の第一印象は良くなかった。ハーレムもののテンプレだなぁと。ただ読み進めていくに連れて、これはテンプレというより基本に忠実というべきだなという風に思えてきた。
何が違うんだと言われると難しいが。ただ、テンプレ的なおざなりさ、適当さがない。そして、ハーレムものとしてやっていいこと、ダメなことがよく練られている感じ。テンプレものはそういうところが雑で、色々な要素を相性とか考えずに適当にぶち込むだけだから、設定が活かされなかったり、内容が薄かったし、要素と要素が衝突して変な味になったり、そもそもハーレムというより複数カップリング状態だったり。
その点、この漫画は丁寧だ。「祟り」の設定は物語の核を担うと同時に、八助のハーレム生活の言い訳にもなっていて、シリアスとエロスをうまいこと混ぜ合わせる良い下地になっている。また、ハーレムものは「一夫多妻状態」に対しいかに言い訳するかが道徳的な課題だが、法律の及ばぬ存在であれば(倫理的にはともかく)問題がない。それもあって、前巻の新キャラ・人間ヒロインももの登場は「え?」と思ったものの、引っ張らずにさっと引っ込めるあたり、しっかりしている。
主人公の八助も、エロ系ながらも嫌味がなく、時には男気も見せるハーレム系としては割と理想的な主人公だ。今回は特にそれがよく出ていて、祟りが解けて一時的にぼっちになり、素直に寂しがる姿は愛らしかったし、文化祭のパンチラライトの話では、自ら制裁を受け消し炭になることを選び、「これでいいんだ」うむ、八助はよくわかっている!
主人公がちゃんと主人公しているハーレム漫画はいい漫画。
人一人をとっても、また全体の人間関係を見ても、とてもよくバランスが取れている。次巻の終わり方によっては、藤村くんメイツ以来の本当に薦められる安心のハーレムかもしれない。
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