『ふだつきのキョーコちゃん』7巻(最終巻)感想:兄妹は続く

まさか最終巻だったとは。Amazonのスターがいつもより低いのと、目次のサブタイトルで、だいたいどうなるかがわかってしまった。そしてだいたいそのとおりだった。ほへー。

以下ネタバレ感想。

夢の終わりと真っ当な兄妹愛

ちょっとこの漫画のことを誤解していたなと思う。からかい上手の高木さんもそうだけど、一時の夢を切り取り標本にして永久保存するような、そういう作品だと思っていた。違ったのか。ちゃんと結論出すとは思わなかったよ。

展開そのものに特に目新しさや意外性はなくて、今までの話を考えると「そうなるわなぁ」という話。ただ、それをちゃんと描いたところが驚き。夢は夢のままで終わらせるんだとばかり。が、ケンジと日々野は正式にお付き合いすることになった。つまり、夢は終わり、真っ当な兄妹愛が残った

こりゃ確かに最終回だ。これ続けたら、次はもうキョーコが彼氏作って、兄妹が自立するのを描くしかないよなぁ。いや、それはまったく正しい姿ではあるけれど、ちょっとそんなに読みたくはないかな。それでも兄妹の絆は続くわけだから、本来的にこれはまったく正しい、文句のつけようがない、真っ当過ぎるほど真っ当な兄妹愛、なんだけれど、なんだけれど!ラブコメの兄妹萌えは、兄妹愛と異性愛の鬩ぎ合いが楽しいわけで。だから、この話はここでおしまい。

夢から覚めたのは意外ではあったけれど、綺麗な終わり方だと思う。

夢の残り香は多少生々しい

それにしても、ケンジとキョーコの関係自体は、実は1巻からあまり変わっていないね

ヒカリの話とか、今回影も形も出てこなかった(カゼで寝込んでいる描写はあるが)会長の話とか、ラブコメ的な盛り上がりを見せた割には、本筋であるケンジとキョーコの関係にあまり絡んでないという(物語の構成としてはちょっとアレかも?)。それで、話はそれなりに長く続いた割に、ケンジとキョーコの関係の変化自体は限定的だったんだな。そういう関係が止まっている印象だった為に、夢を切り取った作品かな、と思っていたんだけど。

関係に大きな変化がないまま、兄に彼女が出来たということで、これまでの関係に無理にでも一つ線を引かざるを得なくなった。最後の最後まで、リボンを外さないとケンジを言祝ぐことができなかったのは、そういうことだろうと思う。キョーコはケンジと日々野のことを心の中で整理できているわけではなく、多分、今後もできないんじゃなかろうか。

もちろんキョーコは日々野のことを良い人だと思っているだろうし、兄を任せてもよいとも考えてはいるだけれど、感情的な蟠り、しこりはあるに違いない。そして日々野もまた、それを感じ取っていることだろう。

この微妙な関係は、それはそれで面白い。ケンジとキョーコを完全に自立させて、キョーコが素面でも二人の関係を喜べるような、そういう終わらせ方もできたはずだけれど(そしてそれが一番真っ当な兄妹愛であるけれど)、それをしなかった。この続きがあるとすれば、社会的な要因も織り交ぜて、小説でありそうな男女の機微の話になりそうやね。多少、生々しくもある。

思っていたのとはちょっと違ったけれど、これはこれで。

他の記事

ふだつきのキョーコちゃん の記事

山本崇一朗 の記事

日常もの の記事

兄妹・姉弟もの の記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です