『ふだつきのキョーコちゃん』兄妹と異性の境界線上を攻める絶妙な距離感

山本崇一朗, ふだつきのキョーコちゃん, 第1巻
山本崇一朗, ふだつきのキョーコちゃん, 第1巻

↑妹に血を吸われる兄貴と、兄貴の血を吸う妹の、兄妹愛というにはちょっと近すぎるような気もするけどやっぱり兄妹愛の範疇の気がする、絶妙な距離感にニヤニヤする漫画。

基本情報

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2016年2月25日現在第6巻まで。作者は山本崇一朗で、からかい上手の高木さんでも一部で有名。

だいたいこんな感じ

シスコン兄貴札月ケンジは、可愛い妹キョーコに虫がつくのが心配で仕方ありません。可愛い妹は普段は生意気ですが、その正体はキョンシーであり、怪力かつ定期的に人の血を吸わねばいきていけず、またお札の役目を果たしているリボンをほどくと自分を制御できなくなります。兄貴は妹のこの秘密を守るために頑張っているのです。そして妹は、封印を解いた時だけ、本能のまま、兄貴に素直に感謝することができるのです……。

はいはい兄妹もの兄妹もの…という感じに見えるし、兄妹ものとしてはなかなか捻りの効いた設定で面白いな…とは思うものの、これが単純に兄妹ものなのかというと、どうか。いや、これが正しく兄妹ものと見るべきなんだろうか。

とにかくこの二人、あくまで兄妹の枠組みの中でよろしくやっているし、またその枠を壊すようなことはこれからもなさそうだなぁと思える。なんか、二人とも将来はちゃんと家庭を持ち別々の人生を歩みながら、それでいていつまでも仲の良い兄妹であるような、そんな感じがする。

でもじゃあ、まったくその気がないのかと問われれば、そうとも言い切れないのもまた事実。兄貴は普通に他に好きな女がいるものの、妹のほうに好きな男はおらず、妹に好きな男なんて作ったり、また兄貴の恋を本当に成就させて妹にそれを受け入れさせたら、この漫画は多分終わる。なんでさ恋愛なしの兄妹関係だったら関係ないでしょってのは理屈であって、やっぱりそれは関係あるんだ。じゃあやっぱり愛さえあればお兄ちゃんでも(略)系統なんじゃないの、って言われるとやっぱりそれも違う。

山本崇一朗, ふだつきのキョーコちゃん, 第1巻
山本崇一朗, ふだつきのキョーコちゃん, 第1巻

↑は兄貴の想い人が家に来て一緒に勉強始めた時の妹の反応。なんてあざっといんだろうね!そりゃ可愛いわ!これはつまり兄貴が好きな人に呆けてキョーコのことを蔑ろにしたことについて拗ねてるんだけど、この理由付けがまたうまい。異性愛の領域に踏み入れることなく、見事に兄妹愛の枠組みで異性愛に対抗しているわけだ。作者のこのバランス感覚はすごいのぅ。

そもそも愛情の区分なんていうのは考えみるといい加減なもので、何が兄妹愛で何が通常の恋人としての異性愛かっていうのは難しい。その明確な境界線はない。けれどそれはやっぱり一緒にはできない

この微妙な距離感、関係こそが、本来の二次元的兄妹ものにあるべき姿のように思える。兄妹愛と異性愛の境界線を攻めるのがよい兄妹ものじゃなかろうか。一線を越えた背徳的な兄妹愛も一つのジャンルではあるけれど、やはりそれは背徳であって正統とは言えんだろう。そういう風に考えると、これは正統派の兄妹ものである。そしてなにが一番いいって、シスコン兄貴のシスコンぶりである。特に周りに自分がいかにシスコンじゃないかを説明している時のシスコンぶりがいい。とてもいい。

山本崇一朗, ふだつきのキョーコちゃん, 第1巻
山本崇一朗, ふだつきのキョーコちゃん, 第1巻

↑ついに全校放送で自分がシスコンではないと主張し始めるケンジ。そしてその釈明の内容はどうみてもシスコンであった。可愛い。

ところで全然関係ないけど、表題に「萌える」という表現を使おうとしていたが、なにか古臭い感否めず表現を変えた。便利な言葉ではあるのだけれど、最近はさすがに死語の香り漂う。○○萌え、萌えおこし、みたいに単語の一部になっているものはともかく、単体としては使いづらくなってきた昨今。言葉のもつニュアンスは時代と共に変遷していくけれど、かつては流行語にもなっただけあって、萌えという言葉も時代の荒波には逆らえないか。でもこういう、からかい上手の高木さんもそうだけれど、なんというか限られた一瞬を切り取って延々と続けるような作風に一番合う言葉って、やっぱり「萌え」に思えるんよな。

そういえば全然関係ないけど、ディーふらぐの主人公も名前ケンジだったね。そんであれも、普段は生意気だけどテンパるとお兄ちゃん呼びになる可愛い妹を持っていた。あれの兄妹関係もなかなか…(一昔前ならここで「萌える」をさっと繋げられたんだが最近はやりづらい。さりとて他の言葉も思いつかず)。

総評

あるべき兄妹萌えの姿かもしれん。

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