『黒井クンは恋愛ができない』感想:色々間違えた俺ガイル

作者・井冬良。2014-2015年。全2巻。元々のタイトルは2年G組千坂千陽彼氏募集中。

恋愛学園というぶっ飛んだ設定と世界観をベースにした、B級ラブコメでしたな!一言で言うと色々間違えた俺ガイル。三角関係、修羅場ものとしての色彩も濃い。以下感想ー。

目次

恋愛至上主義をネタにしたぶっ飛んだ設定

ある日学校全体が突然恋愛脳に侵されて、恋愛至上主義になり、恋愛偏差値の低いものは人として扱われない恋愛戦争の戦場になりましたとさ。…というわりとぶっ飛んだ世界観の話。元々ラブコメは恋愛至上主義的になりやすいが、それを極限まで極端化させましたという感じ。

主人公はその学園に通う恋愛嫌いの男、タイトルにもある黒井くん。無気力系。親が恋愛脳で、恋愛スパルタ教育(なんじゃそりゃ)を受けた反動で恋愛嫌いになったという、これまたぶっ飛んだ設定。

実質ダブルヒロイン

ヒロインは実質的にダブルヒロイン(途中からトリプルヒロインの様相を呈する…連載が長期化すればトリプルヒロインで固まっていたかもしれない)で、黒井の幼馴染・なごみと、なりゆきで黒井に告白されたのをきっかけに即惚れてしまったツンデレチョロイン・千坂。なごみがストレートに可愛い幼馴染ヒロイン↓。

井冬良, 黒井クンは恋愛ができない, 第1巻
井冬良, 黒井クンは恋愛ができない, 第1巻

一コマでわかる圧倒的可愛さ。しかもいい子。耳塞いでんじゃないよ!

一方、千坂はいわゆる残念系に入るだろうか↓。

井冬良, 黒井クンは恋愛ができない, 第1巻
井冬良, 黒井クンは恋愛ができない, 第1巻

黒井が水に濡れたなごみをフォローするのを見て、嫉妬して自分から水をかぶりわざとらしい構ってアピール。ウザ可愛いということで。千坂は素直じゃない割にジェラシーは人一倍で、黒井が他の女とイチャイチャすると露骨に嫉妬心を露わに対抗手段に出る。

なごみは巨乳で千坂は貧乳という、この手のものではお約束の対比もある。恋模様が基本的に修羅場的で楽しい。

とダブルヒロインであるが、元タイトルが「2年G組千坂千陽彼氏募集中」であることからも、恐らく本来のメインは千坂のほうだろう。が、時流を反映した○○クンは××式のタイトルに変更され、千坂千陽の文字は消え、代わりに男の黒井が前面に押し出される形に。

これは読んでみると、なるほどという感じがする。確かに、この漫画で一番特徴的なのは、良くも悪くも主人公格の黒井である。その黒井の恋愛嫌いさは、朴念仁というより単に他人の気持ちに無頓着なだけにも見え、ヒロインを軽んじる態度が好きになれなかったが、本作の方向を決定づける珍しい特徴であるのは間違いない。また、それをフォローするような、恋愛覚醒設定もあり、これはなかなかおもしろかったのが、残念ながらあまり活かされず。

そしてまた、対抗ヒロインの幼馴染・なごみがストレートに可愛すぎたせいか、千坂がメインヒロインとして押しきれなかった感じだ。実質ダブルヒロイン状態なので、千坂のみをタイトルに入れるのは厳しいわなぁ。

想像だけれど、元々の趣旨としては恋愛嫌いの黒井と、ツンデレチョロインヒロイン千坂が、いかにしてくっつくかという話で、なごみはテンプレ当て馬幼馴染キャラだったのではなかろーか。作中においても、なんだかんだで黒井と千坂の絡みは頭一つ抜けている。逆にいうと、それでもなお幼馴染・なごみがストレートに可愛すぎたということか。

個人的には千坂みたいなのはすごい好きなんだけれど、残念系のヒロインは一定の支持は集めるものの、なかなか広範な支持を集めづらい傾向がありますしなぁ。メインが残念系でサブがストレートに可愛い場合、サブが人気出ちゃうパターン、けっこうあるしねぇ…。。。

キャラいいなと思うだけに

千坂の残念可愛さも、なごみの素直な可愛さも、中盤から出てくるもう一人のヒロイン・璃瑠の腹黒キャラも、絵の可愛さも相まって、みんなよかったわ。

問題は主人公の黒井やねんなー……いや、コイツも設定は面白いんだけど。ただ、恋愛嫌いなのはいいとして、それでやることがヒロインをおざなりにするばかりっていうのがどうもなー。せっかく、無意識状態で覚醒すると最強のラブコメ主人公的振る舞いを見せるようになるっていう、面白い設定もってるのに。物語前半に一回出ただけ。そういうところもっと見せてよ。しかも終わったら記憶なくすってそんな御無体な。思い返して悶えるとか可愛い姿をやな。

黒井のクラスメートのサブキャラも面白そうなやつたくさんいたのに顔見せ以外空気だしなぁ。なごみの友人も恋愛アシストキャラとしていい感じやのにあんまり活躍できんし。千坂も黒い手段で生徒会長になったっぽいが、最初の演説以降、そのへんの設定はなかったことになっているし。

せっかくの設定が全然活かされていない感じがまたB級っぽくて、そのざっくりさがある意味ではこの作品の味になっているのであるけれど、これちゃんとやったら普通にかなり面白くなったんちゃうやろかーとも思えてちょっと残念ではある。千坂がなごみに押されて最終的にタイトルリストラされてしまったのも、黒井との関係性で特別になりきれなかったのがあると思うし、一人ひとりのキャラは面白くても、その関係性が今ひとつであった。ギャグも一つ一つ見るとけっこう好きなんだけど、その繋がりがどうもなー。

俺ガイルはよく出来ているんだなぁなどと思いつつ、勢いでざーっと読むB級ラブコメ漫画としては、ラブコメ好きとしては楽しめると思う。あとこれは尺の短さ故かなとも思うけれど、ハーレムものとしてもいいかも…個人的には黒井・千坂のカップル路線でいってほしかったが!

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