『恋文-山本崇一朗短編集-』感想:作者さんが好きなら買い

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山本崇一朗, 恋文 -山本崇一朗短編集-, 2018

からかい上手の高木さんで大ヒットを飛ばした山本崇一朗の短編集。男のラブコメ好きでもはや高木さんを知らない人はいないのではなかろうか。

取り立てて美少女が出るわけでもなければ、サービスシーンもない。にも関わらず野郎の心を掴んで離さない。

高木さんに続けとばかり、同じような作品が最近乱発されているような気がしなくもないのはちょっと思うところがないでもないが、しかし男がラブコメに求めるものも案外ピュアなことが業界全体に知れ渡ったのは、作者さんの大きな功績じゃなかろうか。

本作は作者さんらしい小品を一通り楽しめる短編集。高木さんのプロトっぽい感じの作品などファン的に嬉しい作品が。なので作者さんの作品が好きなら買いかと。逆に言うとファンブック的ではあるんだが、まぁ短編集ってそういう面もあるしね。以下感想。

目次

売れっ子ですよね

山本崇一朗といえば、今や男のラブコメ好きの間では知らない人はいないのではないだろうかというほどに有名だ。それくらい、特に高木さんの衝撃は界隈でも大きかったようで、高木さん意識しすぎちゃうかーと思ってしまうような作品がちょいちょい見受けられるのはまぁアレにしても、すごいことである。

なにしろ作者さんの作品は、目を引くようなわかりやすい美少女や扇情的なお色気シーンなど、一般に男向けラブコメで必須と思われていそうな要素がまるでなく、ただそこらへんにいそうな普通の男女がやりとりしているだけなのだから。実際、本作にはいくつもの作品が描かれているが、どれもこれもそんな感じだ。

だがそこに描かれているのはは明確に男のラブコメ浪漫であり、だからこそ大ヒットを飛ばしているわけだ。スピンオフまで出てしまっているわけだ。それがまた面白い。

男向けラブコメの偏見

高木さんの大ヒットは本当に大きいと思っている。なにしろ、男のラブコメにはかなり偏見があるからなぁ。たとえば、ちょっと前にラブコメ好きという妙齢の女性と話して、「ここだけの話……実は僕もラブコメ好きなんすよ」と打ち明けたところ、「そうなの?でも男性向けのやつってエロいだけじゃない?」みたいなことを言われて、あー偏見があるなー、でも世間一般のイメージってそんなもんかもなー、なんてことがあったり。

まーね、実際そういう漫画はある、というかむしろラブコメの代表格として扱われてさえいるのはたしかに事実。まぁあえて名前あげなくてもアレとかアレとか皆さん想像できるかと思うが。

でもそれは違うんだ、そういう作品も目立つけれど、別にラブコメ好きはエロを求めているわけじゃないんだ……と言いたいのだが、売れ線がアレだとあまり説得力もないよね。業界全体も、結局エロいのが売れるんでしょって意識になっちゃうだろうし。実際エロい回はアンケがよいそうですし。まぁ確かにそれも事実ではあるんだけどさぁ!

そこへいくと、山本崇一朗の作品は、明確に男向けでありながら、お色気シーンなんてものはほとんどないし、高木さんにしても本作に出るヒロインたちにしても、言うほど美少女、というわけでもない。にも関わらず、野郎たちの心を掴んで離さないのは、男がラブコメに求めているのはエロじゃないってことの証左じゃなかろうか。実際、あ、これでいいんだ、と思った人は多いハズ。これはでかい。

作者さんは偉大である

ということで、自分は作者さんをたいそう偉大であることだなぁと思っているし、作品もポチっているものの、実は作品自体には取り立てて感想というものがなかったりする。や、もちろんネガティブな印象はないのだが、なんというか、楽しい夢から覚めたとき、その夢の内容はまったく覚えていないが、しかし心地よさだけはこの胸に残っている、そういう感じなんだよね。だから特に言うこともない、という。

本作もそうでした。ははは。強いて言えば高木さんやキョーコちゃんのプロトタイプという感じで、ファン的に面白かったです。こんな感じですが、作者さんを応援してます。頑張ってください。

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