原作・岡本倫。作画・横槍メンゴ。2013年1巻、2017年2巻。
雑誌でたまたまこの話を読んだ時は衝撃を受けた。その後、だいぶ探し回って1巻を手に入れたのはもうずいぶん前のこと。
そして2巻があることに衝撃を受けた。蛇足じゃね?と思ったからで、実際これは多分蛇足だった。けれども、この物語を完全無欠なものにする内容でもあった。
変態どもに光あれ。以下全2巻感想。
衝撃を受けた
この漫画を読んだのはたまたまだった。自分は漫画雑誌というやつを買う習慣がなく、基本的に単行本で追いかけている。しかも発売日なんてものを気にすることもなく、本屋にも足を運ばなくなってしまったから、ふと思い出したときにネットで検索して、新刊が出ていれば買う、そういうスタイルをずっと続けている。リアルタイムに読者人気を知りたいだろう雑誌社にとっては、やっかいな読者かもしれない。
だからこの漫画を雑誌で読んだのは本当に偶然で、多分お目当ては他の漫画だったんじゃないかと思うんだが、それがなんだったのかはちっとも思い出せないし、正直に言うとこの漫画の内容さえも記憶は朧げなのだけれど、とにかくひどく衝撃を受けた、ということだけはよく覚えている。
しばらくして単行本化されたことを知り、手に入れなくてはとAmazonを覗くも、新刊は既に売り切れていて、しかも中古品は若干割高だった。自分と同じような人が多かったのだろうか。少なくとも、集英社は人気を推し量れていなかったと見える。そのうえ集英社はKindle書籍を遅らせるという悪い習慣があったので(今もあるのか?)、手に入れるには待つか、割高な中古を買うしかない……。
結局どうやって手に入れたかは覚えていないのだが、あまり割高ではないくらいの価格で、なんとか中古を手に入れたように記憶している。Amazonで購入履歴を調べてみたが、なかったので、Amazon以外のどこかだろう。古本屋だろうか?なんとなく、少し苦労して入手したとだけ覚えている。
純愛劇場
自制心をなくしたヒロインというのは本当によくできた設定で、そして岡本倫という作者さんはその設定の魅力を完全に引き出すのだからたまらない。普通なら躊躇ってしまうような直截な表現もガンガンやる。卵子だの精子だの受精だのといった言葉がこれだけ乱舞する漫画も珍しい。どう考えても一番自制していないのは作者さん。
それでいながら、その内容はどこまでも純粋な恋愛劇場であった。だからこそよかった。互いを想い合う気持ち、その美しい感情を抑圧した末に生まれた、歪な愛情表現。自制心をなくすと恋人のパンツしゃぶるなんて、最高過ぎる。
最低なようだけれど、たいていの人は自制心をなくしたらもっとドロドロした陰鬱なことや、それこそ犯罪としか表現できないような行為に出るんじゃないかな。自分の場合は、犯罪と呼ばれるものはしないんじゃないかと思うんだけれど、しかしかなり最悪な、それこそ正気に戻った瞬間誰も知らない土地へ行こうとするだろうな。
そこへいくと、自制心をなくした昴がやることといえば、あっちゃんに発情するばかり。それはつまり、あっちゃんに対する想い、それだけが、普段は凛として冷たい表情をした彼女の中にあるわけで、それはとても美しい心根であると俺は思う。
蛇足かもしれないが…
物語自体は多分にご都合的主義だったのかもしれないし、親に決められた結婚をご破断にする、なんてのもこの手の設定ではお約束といえばお約束。まぁそんなことはどうでもいいのよ。
まぁそんなこんなできれいに終わっていたので、まさか2017年に2巻が出ているなんて思いもしなかった。1巻がよくできたボーイ・ミーツ・ガールの2巻はとても恐ろしい。一番美しいところで時を止めた作品は、なにか芸術的な美しささえ感じるものだけれど、一度時の流れに巻き込んでしまうと、煌めくような美しさはたちまち褪せて、代わりに現実的な生々しさに包まれる。
いやまぁ、この漫画に現実感なんてないんだけどさ。ないんだけれどね。それでもやっぱり、時を動かすとそれなりに失うものがあるもので。
それでもやっぱり、物語の結末は読みたい。蛇足だろうなーと思いつつも、読みたい……。
ということで、ポチッとな。電子書籍は便利やね。これならば中古と違って作者さんも潤うし、売上という形で人気も測れようというもの。なんで電子書籍にもっと力を入れないんだろうね。古本で流通するよりもよっぽどいいと思うんだけれど。
完全無欠のラブコメ
2巻は1巻に輪をかけてメチャクチャな物語だったかもしれないけれど、どこまでもハッピーで幸福なエンドでもあった。あっちゃんが自制心をなくして、ロリコン野郎をぶっ飛ばしたのは愉快痛快。「16歳の女を!!金の力で剥くのが暴力じゃないとでも言うのか!!」正論すぎて笑ったわ。まぁ家族だって、娘や姉を犠牲にして生活を楽にしようと思わなかろうよ。
何ももたないものだからこそ、最後の最後、すべてをかなぐり捨てて持てる者をぶん殴れるってのはあるかもね。そんな狂気の男とやりあうなんて、まったくもって合理的じゃない。コストとリターンが見合わない。だから、ロリコン野郎はそそくさと立ち去る。
そしてアキラは、己の人生を棒に振ってでも、昴を助けたいと思った。24時間自制心がなくなる、そりゃもう人間やめるってことだ。自分が自分でいられなくなる、その恐怖と釣り合う気持ちってのはなんだろうね?そんなもんはありはしない。合理的には。
どこまでも不合理な感情。この相手を想う気持ちなんてのは、何十億あっても手に入るもんでもない。それは金なんて尺度では測れない別次元のなにかだ。理屈を超えた感情が、ただひたすらに相手を想い、そして想い合う……うーんなんてラブコメ浪漫。そりゃ神様も大盤振る舞いしますわ。そしてなにげに妹も一緒に願っている。そら、身内を犠牲にしてまで守りたい生活なんて、真っ当な家族だったらあるわけないわな。しれっと家族愛。
ということで、変態たちの物語は、完全無欠のラブコメになった。理屈は知らん。素敵だったからそれでいいんだ。
コメント
コメント一覧 (2件)
私もこれを初めて読んだ時は衝撃でした。一般誌でここまでしていいのかという…。
「推しの子」よりよっぽど面白い……というのは贔屓目が過ぎるでしょうか?(笑)。
当時、単行本即売り切れ状態だったので、この変態系純愛作品を買い求めた人は出版社の想定以上に多かったんでしょうね。
当時の岡本倫も味のある絵を描いてましたが、本作については横槍メンゴ作画なのも大きかったかもしれません。
推しの子既にポチってるんですが永遠に積んでます。
あっちは原作赤坂アカなわけですが、この組み合わせだとドシリアスでエネルギー使いそうだなーと思ってなかなか読めていません。
ってかかぐや様も最終巻積んでる、、、