作・宮原るり。2011年1巻より、2017年9巻。
ついにここまで…宇佐くんだけでなく律ちゃんも頑張った。人のいるところじゃ読めないねこれ。読み始めたが最後、巻末までノンストップでニヤニヤニヤニヤ。しかもニヤ度右肩上がりの天井知らず。
青春の迸りがあまり眩しくて、もはやシロさん程度のサングラスでは到底防ぎきれず目が焼けそうになるのを、麻弓さんが身を呈して影を作り読者を守ってくれている。麻弓さん素敵。麻弓さんにもロマンスの光は差し込んでいるのに、本人が気づく日はくるのだろうか。
こんなにも祝福したくなるカップルのラブコメはそうそうない。読み終わった後は何かありがとうという気持ちになった。何に感謝したのかはわからない。以下9巻感想。
おめでとうやわ
急転直下。閾値超えたら早かった。祝福の気持ちで胸がいっぱいんなってもう吐きそう。こんなん口から脳出るわ。
定例の宇佐律カラー扉絵、赤面して緊張で引きつった笑みを浮かべながらも、互いの手を取り見つめ合っている二人が、本巻の内容を示唆していたわけだ↓。
なんだこいつら可愛いな。最高か。振り返ってみると、確かに進展を予感させる絵である。
だがここまで遅々として関係が進まなかっただけに、このスピードは予想外。宇佐くんと律ちゃんがそのうち結ばれるであろうことは、読者の120%が承知把握していることなので、物語としてはその過程をいかに描くかなのだが、この予定調和の展開を実に劇的に描いている。
唐突っぽいけどそうでもない
唐突な印象だけれど、よくよく考えて見るとそうなるだけの布石は十分に打たれており、納得性も持ち合わせているんだから、文句のつけようがない。律ちゃん自らが林と椎名に語った内容がまさにその解説にあたる。
それも最初の描写ではこの期に及んでまだ律ちゃんウジウジするのかと、あからさまに読者のミスリードを誘うような描き方をしているのが小憎らしい。律ちゃんならありえるもんなー。でもさすがにまたその展開は勘弁してくれよと思ったところで、今度は違った。
「ラッキーだったのは 私なの」
このセリフに象徴される律の自覚は衝撃的であり、林と椎名も唖然とするが、しかしこれもまた律ちゃんらしいのだ。
典型的な文学少女の律ちゃんは、劇中の人物の心理は読めても現実の人の心がわからない。限られた紙面の必然性ある描写を、いくつものお約束に則って解釈する小説と違って、現実の姿は不必要なノイズが99%で、そこにはお約束もなければ結末もない(代わりに「空気」がある 笑)。小説の読解力と現実のコミュ力はまったく異なる力と言える。
コミュ力欠乏症の律ちゃんは、普通の人がそうするようには宇佐くんのアプローチを受け止めるこができない。だから、ミステリー小説の謎を読み解くようにして、これまでの宇佐くんとの関係を思い出し、解きほぐし、ようやく自分の気持ちを自覚した。
このやり方は普通ではないので、椎名はもちろん、同じく文学少女でありながらもコミュ力もそこそこ兼ね備えた(身につけた)林にも理解できず、二人にとっては非常に唐突感があったようだ。だが律ちゃん的にはこれが自然、というか精一杯。得意とする読解力で以て、宇佐くんの好意と、そして自分の好意を受け止められたのだから、実に律ちゃんらしいと言うべきかな。
もちろんそれが出来たのは、宇佐くんがめげずに律ちゃんとの関係を積み重ねてきたからだし、それはつまり宇佐くんの頑張りがついに報われたということで、そして今回は律ちゃんもすごく頑張ったと、なんだもうお前ら早く結婚しろクソァという思いでこっちはいっぱいいっぱいだよもう!ゲロ吐くぞ!
祝福させろ
女の子が可愛いっていうだけなら、野郎向けのラブコメじゃ掃いて捨てるほどあるけれど、こんなにも祝福したくなるカップルとして描かれたものはそうそうない。ヒロインを描くのではなく、カップルを描くのがラブコメなんだと当たり前のことを声を大にして言いたい。祝福させろ!
可愛さが生々しい
とは言いつつもヒロインが可愛いことはやっぱり重要ではある 笑。だいたい律ちゃんの顔がいいからこそ始まった恋だし。だが、この可愛さを引き出しているのは主に宇佐くんの功績であることを忘れてはならない。U・S・A!U・S・A!
ただ、今回は律ちゃん自身が、自分をよく見せようとするのがポイントだろうか。花火大会の時に着物きて髪型セットして化粧までしたのは、大きな大きな変化だろう。
おおぅ……本当に可愛くなっているのが素晴らしい。元々可愛いキャラを、化粧でさらに可愛く描けるのは、やはり女性作家だからなんだろうか。
特に作者さんの宮原るりは、可愛さの描き方が生々しい。ヒロインのルックスの序列が明確で、しかもそれが作内における扱われ方と概ね一致する。これは、メインヒロインからモブまで女キャラは全員横並びで美少女になっていることすら珍しくない二次元萌え漫画界では、稀有と言っていいと思う(同著者の恋愛ラボは特にその傾向が顕著…しかし面白いのは、カップリングとしてのよさはまったく別の話であるところ!ザッツラブコメ!)。
だからこそ、本当に一番綺麗な瞬間が描けるのかもしれない。コントラストがあるから形が浮き立つ。本巻の律ちゃんはとても綺麗。宇佐くん良かったなぁと言祝ぎたい。
麻弓さん
色々な人に支えられ発破かけられて、ようやくくっついた二人であるが、一番の立役者はまぁ麻弓さんだろう。宇佐くんが最後ヘタレずに律ちゃんと向き合えたのは麻弓さんのクソ童貞がここにきて効いたのだろうし。
河合荘の人たちは皆大人で、宇佐律のもどかしい関係もどこか達観した目で見ている中、一人痛々しくも同じ土俵で相撲を取っている麻弓さんが、一番宇佐くんを応援していたと思う。そして同時に一番ダメージを受けてもいる超絶面倒臭い人。素敵です麻弓さん…。
そして何より、一読者として、麻弓さん抜きでこの話を直視するのはたいへん厳しいというかなんというか。宇佐律眩しすぎるんで。麻弓さんが身を呈して影を作ってくれるから、なんとか見られる。前巻まではシロさんが頑張ってくれてたけど、この巻までくるとシロさんではもう無理。麻弓さんクラスの影でようやくだよ。
麻弓さんは恐らく作者さんのことも守っていると思われる。麻弓さんを入れずにこの甘酸っぱさで脳みそ溶けそうな話を描けるとは思えない。
ありがとう麻弓さん。
ありがとう
晴れて両思い(なんだこの小っ恥ずかしい単語)になった二人であるけれど、嬉しいことにまだお話は続くみたい。カプものはくっついてからがまたおいしいよね。どこまで続くのかはわからないけれど、本当にありがとう。ありがとう。
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