『かぐや様は告らせたい』9巻感想:ラブコメで主人公の友人ポジションの話で巻の半分使える確かなベース

作・赤坂アカ。2018年9巻。

石上巻。表紙の通り。野郎向けラブコメ漫画の表紙で野郎のツーショットとはやるな!

石上がなぜ会長に恩義があると忠義を尽くしているのかがわかる巻。そして伊井野が石上を邪険にする理由がなんとなくわかる巻でもあり、石上が伊井野に執着する理由がなんとなくわかる巻でもある。

これ作者さんやりたかったんやろなぁ。ラブコメでこれができるって、すごいことやと思うよ。

以下9巻感想。

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石上巻なのだ

今回も見どころ満載な巻だった。見どころ満載だったが……やはりこの漫画は凡百のラブコメ漫画とは違うなぁと思わされる。会長に触れられるだけで救急車待ったなしになりつつあるかぐやとか、白金家家庭の事情とか、嫉妬する会長とか色々な見所を見せつつも、この巻は石上巻である。表紙、偽りなしである。昨今野郎向けラブコメとして、これは快挙と言って良いのではなかろーか……。

しかし、ここで使うのか…制服交換という重要なイベントを。いや交換ではないけれど。でも、応援団で制服を借りるなんてね、ラブコメでは珍しくないイベントかもしれないけれど、重要なイベンドだよな。たとえばカップル系ラブコメ漫画の一つ、恋愛ラボにおいても、体育祭の制服交換が重要なイベントとして扱われていたのは割と最近の話(歳を取ると5年くらいは最近として扱われる)。白金とかぐやならいくらでもよさそうな話が描けるだろうに…。それを、石上とかぐやでやるか!

これは、すごいことだと思うよほんとに。ってか体育祭編を丸々石上のために捧げたようなもんだしね。会長は走るだけとか飛ぶだけみたいな、基礎体力を問われる競技は卒なくこなすっぽいから、あまり課題はなかったのかもしれないけれど。それでも、ラブコメにおいて、主人公の友人ポジションにあたる石上の、しかも直接ラブに絡まないような話で、1巻の半分くらい使ったわけだよ。しかも制服交換という重要なイベントを、ヒロインにやらせたわけだよ。

それができる確かなベースが、この漫画にはあるということだなぁ。まぁそのとおりだよ。石上の過去話なんてね、本筋には直接関係のないことで。ラブコメって、普通はどこまでもヒーロー・ヒロインの話でさ……それが、石上で巻の半分……うーん、すごい。

確かなラブコメ

まぁ、美味しいとこ会長が持ってった感はあるけどな。ハチマキ巻いたの会長かー。まぁそれが一番自然な形ではあるのだけれど。男同士でそういうのも、確かにいいもんだけどさ。しかし花火大会に続く構成をまさか石上と白銀でやるとは。なんだったらBL好きにもウケそうだよね。

まーでも、思えばラブコメってのはこうあるべきだよなーなんて、ちょっと思ったりもする。色々な男女がいてね。らんま1/2だってそうやん、とか最近読み直して思ったのだが。

だから石上で巻の半分使ったのは、この漫画が確かなラブコメであることを逆説的に証明している、なんてわけのわからんことを思ったわけだが、それはそれとして、石上のこの生き方は、恐らく伊井野が石上を邪険にする根本的な理由であるような気がする。

石上と伊井野

伊井野は恐らく、石上の事件の真相について、かなり真実に近づいているのだろうと思われる。そして、伊井野の価値観からすると、正義感を途中で捻じ曲げて、妙な自己犠牲で悪者になる、なんてのは許されることではない。石上の選択は、伊井野の価値観の否定でもある。

だから伊井野は石上が許せないし、逆に石上にしてみれば、伊井野にかつての自分を重ね合わせてしまうところがあるのだろうとも思う。石上の伊井野に対する物言いは自分のようになるな、という警告であり、それが伊井野には許せないわけだ。

まぁ実際、今の石上のスタンスも、また伊井野のスタンスもどちらも成熟とは言い難いのは確か。とすると、この二人が合わさることで、何かしら人間的な成長があったりするのだろうか、などと思うと、それはまぁラブコメ的にはたいへん楽しみなことなのである。

会長とかぐやはもちろん、こうして複数のカップリングに期待できるのは嬉しいことだ。嬉しいことなのだ、が……藤原書紀とはいったい。石上は藤原さんかなーと思ってたんだけどなぁ。むしろ会長とのほうが近いやね。人物紹介であった、白銀・かぐやが主人公で藤原がヒロイン、石上が裏主人公、伊井野が裏ヒロイン、という位置づけはラブコメ的にも間違っていないらしいわ。そうかー。

それにしても次でいよいよ二桁の大台……次あたりは会長とかぐやでまた一歩進めてほしいところだ。

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