ということで、原作21巻が出たのに20巻読んでないし19巻も感想書かないままなぜかスピンオフの最新巻だけ読み挙げ句感想記事まで書くのであった。まぁもはや原作だからいいよね。
10-12巻に相当とのことで、原作もちょろっと読み直してしまった。原作を読み直させるスピンオフは良いスピンオフ。
いやほんと理想的だよね。原作の世界観を損なわずに、楽しいところを抽出して濃縮還元し、それでいながら新しい一面をそっと覗かせる、なんだったら原作知らなくても楽しめると思う。
というか、原作知らない人に本作から進めて原作に入ったらどんな感想抱くのか知りたい。特にラブコメラヴァーズの諸兄にやってもらいたい。そんなドキュメンタリーあったら確実に見るわ。超面白そうだよ。
以下4巻感想。なにげに本作を一番楽しんでいるのは早坂ファンでは?と思ったりもする。
本作で描かれているもの
久しぶりのかぐや様。もうずっと原作読むのストップしていて、気がつくともう21巻。本サイトではまだ18巻までしか感想記事を書いていない。
こういう状態に陥ったのは今回が初めてではなくて、ちょうど本作が取り上げている10-12巻あたりも、一時的に読むのをストップしていた時期でもあった。かぐや様は本当に楽しみである反面、俺にとって読むのにエネルギーが必要な作品でもあるんだね。
多分俺にとって、かぐや様は純粋にラブコメだけを描いたものではなくて、もっと深い世界観を描いたものだという風に感じられるのだろう。特に原作の「やさしさ」論とでも言うべきものは特筆に値する。その世界観は原作者の前作ib(ib -インスタントバレット- – 少年は少女に出会う)においては中二的な世界設定の中で剥き出しに描かれていたが、かぐや様では控えめに、世界の基礎として、一見目立たないように描かれている。
その土台の上に、見るも愉快なラブコメが展開されるのが通常なので、そういう時はただひたすらに楽しめるわけだけれど、ひとたびその世界観の根幹に触れようとすると、その圧の前に足がすくんでしまうわけだ。
このスピンオフは、原作が深い世界観を土台にして作った愉快ならラブコメ世界をさらに下敷きにして作られているため、原作の持つ底知れない深淵さの影響を少なくしながら、しかし話だけはとても愉快なので、存分に気兼ねなく、上澄みを楽しめる。
しかし、本作は決して原作の世界観を損なっているわけではない。それは主に早坂や藤原書紀、石上会計など原作と共通した主要人物の描かれ方からわかる。まさに原作を再現しながら、視点をかれんとエリカに置くことによって、原作では見えなかった一面が窺い知れるのは魅力的だ。藤原書紀なんかはいつもどおりだけれど、石上会計は相手によって態度をだいぶ変えるしね。
苦労人早坂は世界の架け橋
特に早坂はかれんたちの世界と生徒会の世界を行ったり来たりしており、本作と原作を繋ぐ架け橋として重要な位置にいる。そして原作でも苦労人の彼女は本作でも苦労人なのであった……エリカから妄想かぐやの尊みを、かれんから会長×かぐやの妄想絡みを聞かされている時の早坂の死んだ目好き。
とはいえ、かれんとエリカはただのおばかさんではない。会長合コン抜け駆け事件を聞きつけたかれんが、同士(と思っている)早坂に会長の意図を聞く話などは顕著だ。
まぁいつものノリで早坂にあしらわれるのだけれど、かれんは早坂のお利口さんな答えに満足しつつも、100%本心ではないことを察している。また、そのようなかれんの行動そのものにエリカは違和感を感じ(いつものかれんなら自分が語るだけのはず)、どういう意図があったのか、二人の時に尋ねている。このような微妙な心の機微をコメディに描くのは原作の持ち味を感じさせられる。
また、この時の早坂の答えもまた秀逸。
注目すべきは表情で、1コマ目のきゃぴった感じから1転、2コマ目は何か物思いでもしていそうな、遠い目をしている。まさにあの日あの時のやりとりを思い返しながら言葉を紡いだに違いない。
早坂の回答は、「かれんの欲しい言葉」として作り出したものだが、そこに自分の気持ちがこもっていないわけでもないのだろう。だからこそ、かれんも納得したのだと思われる。
かれんはバカだが愚かではないし、賢い女である。早坂が100%嘘をつけば、それを見抜いただろう。特にこの時、かれんは「早坂の本心を知りたい」という明確な意図を持って聞いていた。かれんの欲しい言葉では、その場をやりすごせても、拭い難い違和感を与えてしまったかもしれない。早坂の本心が幾分かでも感じられたからこそ、かれんもよしとしたわけだ。
もっとも、100%嘘ではないが、100%本心でもない、ということもまたかれんは見抜いている。
早坂にとって、ハッキリと明確にかぐやのほうが良いと言われたのは、なんだかんだショックで面白くない思い出と思われ、かれんの言葉は古傷を抉るようなものだが、なぜ早坂にとってそれが傷つく行為かと言えば、そこに、なにか想いとでも言えるような気持ちがないでもないからだろう。かれんの追い打ちを受けた早坂のオーバーキルっぷり好き。
そだねー……
本人すら意識していないことだろうけれど、早坂自身にとっても、会長に対してはなんとなく思う所があるのだろうなぁ、と。それが、かれんに僅かな引っ掛かりを感じさせたのではないかと思う。
さらにちょっとつっこんでみる。先の早坂の回答は100点満点ではない。「会長は言い寄って来た人に"簡単に"揺らぐ人じゃないよ」の"簡単に"は明らかに余計だ。この装飾をつけてしまったのは、人を信じられない彼女の人間観なのか、それとも……などとかれんばりの妄想をしてみる。そういう解釈が一番楽しいよね!
……同人版はこの報われない女を報わせてほしかった……いやもう読んでないから、実は最近そういうことをしている可能性もあるが……いやしてないだろうな……。同人版はなー……頑張ってほしいんだけどね。。。
ということで、今回も面白かったですわ。さて積ん読になっている原作読むか……。
是非同人版最終巻も読んでみて下さい。原作の深淵さとは無縁なので、読む心理的ハードルは皆無かと。
え、マジですか。読みます。