『賭ケグルイ』4-5巻感想:ギャンブルと書いて生き様と読め?

河本ほむら, 尚村透, 賭ケグルイ 4, 2015, スクウェア・エニックス

なぜ賭ケグルイを今更読んでいるかというと、BOOKOFFに100円で売っていたからである。そして数年前に読んだ時にはあまり楽しめなかったが漫画が、30代半ばも過ぎて後半にさしかかった今、どういうわけかまた楽しめるようになったからだ。

さて、4,5巻はvs学園アイドル編とvs王道メガネ。アイドル編は夢子のアイドル衣装がミスマッチ過ぎてイメクラ感があったこと以外なんとも言えない感じだったが、生爪ハーガスと共闘した王道メガネ戦はなかなか読み応えがあった。ラブコメだからか?感性が鈍化したとはいえ、それでもやっぱりボーイミーツガールが俺の性癖には違いないらしい。

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100万人目の計算メガネ

4巻の学園アイドル編は、続くvs王道メガネの前哨戦だったようで、インディアンポーカーのブタゴリラほどとは言わないがあまり印象に残っていない。強いて言えば夢子のアイドル衣装があまりにもキャラと合っていないためにミスマッチ感があり、さながらイメクラのようになっていたのが逆にエロい、というクソみたいな感想しかない。

それに対して、5巻のvs王道メガネはなかなか面白かった。王道メガネっていうか、いや、名前が出てこないんだわ。夢子、早乙女、鈴井以外覚えてない。この歳になるとキャラクターの名前を覚えられないんだよ。それで、桜木花道のごとく勝手に脳内でキャラにあだ名をつけてその名で呼んでしまう悪癖が身についてしまったようだ。まぁ、この漫画はキャラ自体は割とテンプレに則っているのであだ名にしやすいのも大いにある。

王道メガネもキャラ自体は漫画ではよくいるメガネかもしれない。「王道」「王道」とうるさいが、「次に君がそうする確率、95.4%」とか言い始めそうな漫画メガネはいかにイケメンでもラスボスにはなれんのだよ。そこそこ強い中ボスくらいが関の山である。

そもそも夢子のことを単なる「ギャンブル狂」と断じている時点でその人間像を見誤っている。作中でこれでもかと敗北コインを積み上げていく様は壮観ですらあった。なので、読者的には「コイツがどんな劇的な負け方をするんだろうか」という目になる。

話を盛り上げたのは、最終的な敗因を「夢子」ではなくて、「生爪ハーガスを見誤った」にしたことだろう。ハーガスがいなければ夢子は王道メガネが邪道メガネになることはなく、負けていた可能性について夢子は示唆している(いなくても勝ってそうだけど)。

とはいえ、生爪ハーガスについては、読者的に「いやいや、かわいこぶってるけど、無理矢理生爪ハーガスしてきてしかも自分がされそうになったら嗚咽をあげて退散したクソ雑魚やん」とつまらんことも思ってしまうわけだが、それについては、ハーガスが自分の生爪を食いちぎるという覚醒描写を通して、ミソギということにもなるんだろう

伊月覚醒物語

まぁ結局のところ、今回の話は生爪ハーガスの話のである。もっといえば、ハーガスと王道メガネの関係の話である。彼と彼女の間には、単なる生徒会以上の機微があったに違いない……とロマンスの話をするのに、王道メガネと生爪ハーガスではいくらなんでもアレなので、名前を調べよう……。

えーっと、メガネが豆生田楓、ハーガスが皇伊月、だった。豆生田と伊月にしようか。お互い「豆生田先輩」「伊月」という呼び名だったようなので(会長は楓と呼んでいたようだ)。よし、覚えた。

豆生田と伊月は、生徒会の中でも特別な関係があった。伊月が最初、生徒会に入れてくれと豆生田に頼み込んだ時、豆生田はどこか疲れた顔で「一生徒でいるほうが幸せだ」といってやめさせようとした。それは紛れもなく豆生田の本音であり本心だっただろう。それに対して、親に言われた道を超えて「王」になると啖呵を切った伊月に、豆生田は笑い、共感した。そして二人は、「不遜な野心をもつ共犯」として繋がった。

あの殺伐とした学園において、この仲間意識は、伊月にとって、また豆生田にとっても心地よいものだったに違いない。特に二人は、どうやら「取り巻き」もいなければ、「側近」に相当する者もいない。ただ二人だけが、共に頂点を目指す「仲間」だった。

……と、少なくとも伊月は思っていたわけだが、自身の敗北によってそうではなかったと思い知らされたわけだ。あるいは、少なくともそうではなくなったということを思い知った。家とか王とか以前に、伊月はそれが我慢ならなかった。

だからこそ、豆生田を見返してやるという一念で、伊月はあの場で覚醒できたのだ。豆生田の敗因は、夢子が言うように確かに伊月を見誤ったことなんだろうが、しかし、伊月はまさにあの場で「変わった」のであり、その直前までの伊月は、豆生田の考えるとおりの他人限定ハーガスでしかなかった。

そしてリアルタイムの変化に弱いのは、計算メガネの伝統である。覚醒した伊月に対し、変わらなかった豆生田は、数多の先輩メガネたちと同じく、不合理の前に破れるのであった。真っ白にな……。

ロマンスなんです?

ということで、形としては夢子vs王道メガネだったわけだが、その実態は伊月vs豆生田であった。熱いボーイミーツガールであり、こうして長文感想書けるくらいには楽しめた俺を見つけて、なんだかんだでやっぱり俺はこれが性癖なんだなぁと、どうでもいいことを再確認した。真っ白メガネを見た伊月の思い出すことが、生徒会室での他愛ないおしゃべりっていうのも、ベタだけどまぁいいよね。

しかし、では二人の関係はロマンスだったのかというと、それ自体はYESであるものの、やや芯から外れるとも思う。芯を取り巻いているものの一つであることは確かなのだが、主ではない。下手にラブコメ浪漫で括ってしまうと、浅くなる感じがある。前の夢子と鈴井の「信頼」もそうなのだが、本作は全体的にボーイミーツガールが芯にならんのよな。

まぁそういう漫画ではないということだろうが、基本的に人間劇場である本作が、この先どういう方向に行くのか、BOOKOFF 100円で手に入るレンジでわかればいいなぁと思う。

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