作・こんちき。いくらなんでも3体目の表紙の子はさすがにロボットとしか言い様がないだろう。
ハイレゾ、VR、ARなど流行りのテクノロジーも取り入れる。そしてアイちゃんが増える話が凄まじい。ああ量産品なんだなと覚めて帰る客たちが、なんだか示唆的である。この話が一番面白かったな。データを同期さえすれば、同じ個体といえるのか?SF的な一大テーマである。
全体的にはいつもどおりのギャグベースで、新妻気取りのアイちゃんとチョロインであざといケイちゃんが可愛い。それでいながらさりげなくシリアスな要素も紛れている。
以下3巻感想。
増えるアイちゃん
新キャラも出ているが、本巻で一番印象的だった話は、増えるアイちゃんの話だろうか。まったく同じソフトウェアを搭載し、かつ記憶も共有しているアイちゃんは、完全に同一。どちらが本物、ではなく、どちらも本物である。
この現実を目の当たりにした喫茶店常連たちは、一気にさめる。
「所詮 量産品だよな」
「なんか目が覚めたわ」
は、は、は。これは中々、示唆的だ。やはり人間、「唯一無二」のオリジナリティにこそ愛着を感じるものだなと思う。それこそ、デジタルな家電においても、昔付けた擦り傷の跡だとか、そんなところに愛おしさを覚えるのだろう。俺も使い古したボロボロのiPodを今でも取っているけれど、かつてピカピカの鏡面だったボディについた無数の擦り傷を見ていると、たまらない気持ちになる。
たとえ同一のデジタルな量産品であっても、使うことで、それは世界の一つのオリジナルになる。だから理屈のうえではどちらも「本物」だけれど、ヒロトにとってそれはちょっと違う。なので、「どちらが先にいたアイなんだ?」と最初から疑問を呈する。こういう疑問が湧くのは、客たちと違い、ヒロトにとって二体のアイは同一ではないからだ。そして、暴走したアイちゃん二体がバトルを起こし、片方を壊してしまった時、ヒロトは改めて星野さんに聞く。
「ところで星野さん 残ったのほうアイって…
先にいたアイ 後から来たアイ どっちなんですか?」
星野さんは笑いながら、「後とか先とかないですよ」と答えて、気にしないでくださいという。そう言いながら、星野さんはヒロトの電話の向こうでじっと"製造番号"を見ている(ゼロの多さに野心を感じる 笑)。製造番号は振られているのだ。製造者、管理者として当然だろう。しかし、アイ自身にはそれを教えていない。星野さんは、ヒロトの疑問の本質を理解している。そしてそれが、決してバカにできない疑問であることも。そのうえで、誤魔化しているのだ。
などと考えると、ぼかされてはいるものの、壊れたのは先にきたアイなのだろうなと思う。そうでなければ、恐らくちゃんと答えたのではないだろうか。「そ… そうですね」と、腑に落ちなさを見せながらも引き下がったヒロトは、星野さんが絶対に答えないであろうことを、そしてその理由を、なんとなく察したのかもしれない。
とはいえ、今後も同じような試験をした時に、同じ言い訳ができるようにと考えて言ったのかもしれないし、わからんのであるが。後からきたアイならいいのかとかもあるしね。読者としてはヒロトと同じように釈然としないものを感じるわけだけど、わかったところでどうしようもないし、ぼかすくらいが、ギャグベースの作品としていいバランスなのかも。
ケイちゃん…
そして相変わらずあざといケイちゃん。ストレートに可愛く、本当に理想の彼女さんのような反応……そして普通に高性能。アイちゃんとは違う方面で需要を満たしてくれる。
しかし、最後……まさかの不穏な展開なのだけれど、ほんとに止まったりせんよね?大企業だけに損切りもきっぱりしているのだろうが。正式にヒロト家行きするフラグだよね……と思いたいのですが。が。が。が。
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