『異世界おじさん』1巻感想:魔剣フラグブレイクを異世界で振るってきたおじさんの英雄奇譚

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殆ど死んでいる, 異世界おじさん 1, 2018

若干アスペな感じのあるおじさんが、異世界で死闘を繰り広げた後どういうわけか現実世界に帰ってきた、異世界帰還後の話。

なろう系異世界のテンプレをハイレベルにギャグでまとめ上げた作品。特に2000年代前半から2010年代後半の世相を反映しており、異世界ものであるにも関わらず時事ネタ漫画である。

表紙だけ見るとラブコメ感があり、実際ラブコメしているのだが、おじさんはハーレム主人公も真っ青の朴念仁さで、ラブコメのテンプレを笑う感じではあるし、なにより確定した過去なので、まぁ期待しないほうがいいのだろうと思う。この漫画のフレームワークを端的に言うと、フラグブレイク漫画なんだよね。ラブコメ界隈でも時々ある(「『共学高校のゲンジツ』ラブコメの定石をフラグブレイクして楽しむ – 少年は少女に出会う」とか。でもこれよりだいぶ徹底してブレイクしている)。でも俺はまだラブコメ展開を諦めていないぞ。

個人的にはなにげに家族ものとしてちょっといいよなと思ったりもした。甥の成長を嬉しそうに見るおじさんとてもよい。以下1巻感想。

目次

よいギャグ漫画

これはよいギャグ漫画。よくある異世界系……のテンプレートを少し生々しく調理して笑う。異世界の住人は美男美女揃いで、現実世界でもあまり器量が良いとは言えないおじさんは、オーク、つまりモンスター扱いでさんざんつらいめにあったという。

とはいえおじさんの性格にも確かに問題はあったと思われ、厳しい世界の中で着実に実力をつけ、また性根は良くどんなに扱われても人助けをするその性格から、慕う者もいたようだし、中には明確に異性との出会いもあるのだが、すべてフラグを折っているようだ。まぁそういう漫画。

秘剣フラグブレイク

特にツンデレエルフとは出会いからその後の展開まで完璧にラブコメなんだが、残念ながらSEGAハードで格ゲーに明け暮れていたおじさんのラブコメ偏差値は2しかなく、ツンデレを理解できず尽くフラグブレイクする。というか本編の半分くらいはそのネタの気がする。

すると、ラブコメ的にはラブコメのテンプレをたたっ斬るフラグブレイク漫画という見方もできて、それは『共学高校のゲンジツ』ラブコメの定石をフラグブレイクして楽しむ – 少年は少女に出会うなんかでもやられたのだが、あくまでラブコメの範囲内で展開された共学高校のゲンジツと違い、この漫画の場合はギャグ分が強いためか、徹底的にブレイクしてしまったようだ。

作中ではツンデレの概念が一般的に共有されたのは2000年代半ばとされ、歴史の生き証人の一人の俺もそれは同意するものの、それはテンプレとして認知されたというだけであって、別に概念があろうがなかろうがツンデレ的な振る舞い自体は、テンプレなぞ知らなくても理解できて然るべきものである。作中でもエヴァのアスカが出ていたが、らんま1/2の天道あかねなんかもよく語られるし、皆ツンデレという言葉を使っていなかっただけで、彼女らの気持ちについては十分理解できていたわけだ。

なので、フラグをブレイクし続けたのはひとえにおじさんの捻くれた性格ゆえである。これがSEGAの定めなのか……俺は普通にPSでFF7をプレイしていたが、SEGA派のやつはいて、SEGAユーザーは不思議な連帯感を持っていたなぁ。

しかしラブコメについてはこのままブレイクしたままだと俺としてはちょっと残念で、まぁラブコメは紆余曲折あっても最後にくっついたらハッピーエンドですべてよしなんだけれど、確定した過去って感じなのがつらい。

でもまだちょっと期待を諦めていなかったりする。異世界のアイテム持って帰ってこれてるし、それならしつこいツンデレエルフがやってきたっていいじゃない。それやると世界観が一発でラブコメにやられるから、劇薬だけど。ギャグすら飲み込むラブコメのパワーよ。

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