水あさとのラブよりギャグがきいてるタイプの作品。まぁいつもどおり女子は可愛いし展開的に可能性はあるんだけれど、今の雰囲気だとラブコメ期待するもんでもないかなという感じ。最初は「タイトル詐欺の類では」と思ったら最後に伏線回収されて看板に偽りなしのミステリー。
ギャグ漫画なんだけれど、笑うよりも胸がキュッとなった。こういう漫画を読むとつくづく「ギャグは笑う人と傷つく人が半分」という新井理恵の言葉を思い出す。まぁでもギャグって本質的にそうなんだと思う。でも最後まで読んだ。
以下終始空笑いした1巻感想。空笑いも笑いには違いない。
内容
- 俺たちの現実世界がつらい
男女平等正論パンチ
読んでて胸がキュッとなった。第一話のクソ上司の詰めもイライラしたけど、主人公・氷見のヒロイン・メイに対する激詰めも怖かった。第一話でヒロイン激詰めする主人公とはいったい。まぁ社会においては男も女もラブコメもないんだけどさ。仕事はね。はい。俺が社会人ラブコメはあまり好んで読まないのはこれ。ラブに偏ると仕事はどうなってるんだ仕事はと思うし、仕事面が強いとラブも何もあるかとなってしまう。
実際本作は仕事の面がやや強いので、ラブコメ的な展開の可能性自体はあるものの、あまりそういう楽しみ方はできない気はした。氷見の正論パンチこえーよこわいです。
しかし正論パンチをきかせすぎているものの、氷見は別に相手を追い詰めることが目的ではない。むしろ彼の奥底には優しさがある。優しさがなければ、どうして人を庇おうか。
氷見の正論パンチは彼の人生で会得した処世術であろう。まぁもちろん生来の性格として、ルールに対して厳しいのはあるだろうが、それよりも向かってくる火の粉を振り払うのに、彼の場合は規則を盾にする必要があったのだろうと思われる。
彼が本当に守りたいのは規則ではなく人であり、であればこそ部下も庇うし、相手の過失を見逃すこともある。課長の無理難題にある程度柔軟な対応を見せるのは、そうしないとより被害を被るのは部下だということを知っているからであろう。
そりゃそんな重荷を背負えば、目つきも鋭くなるし口癖が死にたいにもなるわなぁ!
俺たちの現実世界がつらいよう
そんなわけで氷見が異世界転送されては帰ってくるのを見て、こぼれる笑いが空笑いとはいえ面白くはあったのだが、「タイトル詐欺では」という一抹の想いもないではなかった。
そう思っていたところで、メイが氷見を調査するべく現実世界に転送され、氷見の元で働く展開になったところ、パワハラクソ上司にいびられ、ぶったおれる同僚と誰も助けない現場に、泣きながら「異世界に転送されてつらいよう」と嘆く伏線回収で「おまえかよ」となるのであった。
ただ僕はここまで殺伐とした現場にはいたことがないが、実際のところあるもんなんだろうか。まぁあるか。まぁ彼らは冷たいというより弱いというほうがよかろうね。でも普通はみんな弱いのよ……。逆に、優しくあるには強くないといけないし、また見返りも求めてはいけない。優しくした相手に裏切られることもある。そりゃ表情筋も強ばるし、一人になれば弱くなって死にたいと言うこともあろう。
……などという感じで、このテンションでこの先も続くとけっこうつらいなぁと思いながら、本を閉じたのであった。
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