『今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。(漫画)』1巻感想:嘘つき村の住人たちの世界で生きていく

積ん読消化の季節。おさいもが略称らしい。だいぶ前にポチっていたんだが、最初のほうを読んだところ、設定の羅列に疲れてそれっきりだった。これはラノベ原作かな。脳が漫画モードの時に小説の勢いで設定を開陳されるとキツい。しかし今回は溶けかかった脳みそに少しだけ頑張ってもらったところ、最初の数ページを頑張ったら後は比較的楽だった。ってか面白かった。キツいのは最初の峠だけだったよ。

以下1巻感想。1巻記事だけどネタバレ含むので、読んでいない人はこの先注意。基本的に描かれている世界がすべて不完全で、どいつもこいつも嘘つきないし隠し事があり、ミステリー要素入ってる。そんな嘘つきの世界で生きていくには、漫画のレビュアーのような態度が必要である。……2巻で漫画終わってるっぽいんだけど、終われると思えないんだが……。

目次

ワケありなんです?

最初のカラーページは、好き好きオーラを発する愉快な後輩・灯火に対して「彼女は僕のことを好きでも何でも無くむしろ僕は彼女の敵」とか言って冷めた面する主人公・伊織。これを読んだ時、不思議さよりも「嫌いな女がこんなことするわけねーだろ鈍感系もいい加減にしろよこの態度どう説明すんだよ」などと偏った見方で思い込んでしまった。いやだってそういう漫画あるやん……。見ていて腹が立つ主人公のラブコメ……。

しかし読み進めると「どうもなんか色恋どころじゃない事情がありそうだな」ということは感じた。どうやらこの男には色恋以外で接触する理由があるらしい。それは本意ではないが、その源になるものを渡すわけにはいかない(渡せるものかどうかは知らんが)と考えているようだった。であれば確かに、あからさまに不自然な好意を向けてくる女子を警戒するのは、よく理解できることだ。ということで、すんなり納得した俺はチョロい読者だと我ながら思う

分析的に動く主人公

伊織はたとえ不自然でも灯火からの接触を拒める明確な建前を持っていないため、灯火を無下にすることはないが、「警戒」は怠らない。しかし同時に、自分に接触を試みる灯火に対して「興味」もある。これは星の涙のことはもちろんあるだろうが、灯火個人に対しての心情も何かしらありそうだ。

伊織の思考回路として特徴的なのは、常に「第三者的な視点」で物事を捉えようとしているところだろう。自分の気持ちや相手の意図を重視していない。というより、相手の意図はわからないので考慮できない、そして自分の気持ちについては押し殺している、といった感じだ。これによって、伊織に残された行動原理は「事実に基づいた第三者的な視点からの合理的な行動」となる

だからといって、伊織に感情がないわけではない。だから灯火にデートが楽しくなかったか聞かれた時には、寸時「楽しくなったといえば嘘になる……か」と、自分に自分の気持ちを問いかけて答えるわけだ。

この態度、何かに似てるなぁと思ったら、あれだ、漫画の感想記事書いてる時の俺のスタンスと一緒だこれ。「この漫画……面白くないと言ったら嘘になる……か」マジでこんな感じだよ漫画の感想記事書く時って。

つまり彼は、わからない何かを解き明かそうとしているんだな。この態度は、そういう態度だ。そしてそのわからない何かには、他ならぬ自分の感情も含まれている。まぁ実際、灯火に意図があるという伊織の直感は正しいだろう。だがそれが何かまではわからない。また、意図だけでもなさそうなボーイミーツガールの気配もある。実際この娘は演技だけで男にお近づきになれるタイプではないだろう(小悪魔キャラは自分を鼓舞する彼女なりの精一杯)。意図だけではない気持ちもあるのだ。伊織は疑いながらもその気持ちを察してもいる(だからデートは楽しい)

嘘つき村の住人しかいないねぇ

とかなんとか書いていたら、灯火は既に死んでいるというどんでん返しが発覚。しかもそれを当の伊織が認識していない。しまいに認識改変とかいう物騒な単語まで出てくる。え、そんなことできる世界観なの?

実際友人の言う姉と付き合っちゃうのが自然だというのは灯火の存在をまるっと無視していて明らかにおかしいので、伊織の認識する世界のほうが正しそうではある。正しそうだが、食い違いが発生していることも事実。つまりこの時点で、読者から見える風景は、全部疑ってかからなければならないということだ。おら疲れてきたぞ(脳が年老いている)。

その後、フツーに教室でぼっちしていた灯火を連れ出すのだが、こうなってくるとこの娘が本当に灯火という名前なのかも怪しい。そしてまた、今まで受け身だった伊織が突然アクションを取ってきたことについて、今度は灯火のほうが警戒心を露わにする。やはりこの女、言っていない意図があるんだな、とは思う。そしてぼっちなのもまた、どうも認識改変?とやらの影響っぽい。

2巻で終われるわけないと思うんだけど

読者視点だと軸がほとんど定まらない状態で謎が謎を呼ぶといったところであり、気になるだけ気になって1巻終わり。えーもう2巻どうしよう。って思ったら漫画版2巻で終わってるんだけどあと1巻で終わると思えないんだが。え、もしかして打ち切り?ちゃんと原作消化してるんだろうか?えー、どうしよほんとに……。

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