作・おーはしるい。全2巻。
性根が体育会系で見た目もそんなでもないのに、アニメ声で自分の声にコンプレックス抱いている女子と、悪声だけど無駄に明るく自信持ちな男子の漫才カップルもの。付き合う手前系。凸凹漫才カップルいいよね。ボケ男ツッコミ女タイプ。
さりげなく性格悪い人が多いのがリアル。でも人間そんな感じだと思うわ。
以下感想。
漫才カップル
漫才カップルいいな。主人公・うららとダミー先輩の夫婦漫才を楽しむ漫画。ダミー先輩が愛すべきバカ過ぎる。この男大物やで。
男がボケでツッコミが女のスタイルは、逆パターンと比べるとツッコミきつすぎることが多いように思うけれど、この二人の場合、ダミー先輩が強キャラ過ぎて何も気にならない。ダミー先輩何があっても絶対へこたれない。ラブコメは男のメンタル強いと安定するなぁ。っていうかダミー先輩が好きな子いじめたくなる小学生男子レベルの精神年齢で微笑ましいわ。
話のテーマ的に、主人公・うららが体育会系で見た目もそんな感じなのに、萌え系アニメボイスで自分の声にコンプレックス、っていう設定なのだけれど、放送部以外でほとんどしゃべらないからダミーの悪声ばかりが目立っているという。
でもそれは、ダミーがさりげなくフォローしてるからだ。声にコンプレックスを持つうららが、前面に出なくて済むように取り計らっている。ダミー自身は、あまり人のためにフォローするタイプではない。だからこそ、二年生でダミー以外は幽霊部員化したんだろうし、良くも悪くも自分中心で周囲までは目がいかないタイプ。そんな彼が、うららのためならば影でこっそりフォローに動くというのが、ポイントである。
うららが他の男に褒められて照れると、普段は憎まれ口を叩いているけれど、本当は自分が一番うららのことを良く思っているんだと、照れながらアピールするのが愛らしい。ニヤニヤする。
うららとダミーの、遠慮のないやりとりは、傍から見ると夫婦漫才。これがラブコメ的に本当においしいんだわ。
癖のある人たち
しかし、この二人の関係の良さを理解しているのは、作中ではうららの友人・えりちゃんだけであった。最後、うららがダミーとようやく付き合ったときも、その結果を唯一当然のものとして受け入れ、納得したのもえりちゃんである。恐らく、作中でもっとも人間関係の機微に敏感な人であった。他の人たちは、中々個性的というか癖があるというか、単なるいい人でなかったのが面白い。
特に烏丸先輩は相当癖がある。敵対する人間として会長のみ描かれていたけれど、けっこう疎んじていた人はいたかもしれない。ダミー以外の二年生は幽霊部員化したわけだし、烏丸にべた惚れの部長以外上級生がいないのも、みんな烏丸についていけなかったからだろう。そのことについて本人がまるで自覚がないのはけっこう絶望的で、このまま大人になると、無自覚に人を潰してしまう可能性はある。とはいえダミーの一日バイトは見逃すなど、放送に対する姿勢が厳しすぎるだけで、性根が悪いわけではない。
多分この漫画で一番の嫌な奴は、ブラックメール未遂などをさらっとやらかす副会長であろう。うららへの好意がどこまで本気かは微妙なところ。ダミーとなにがあったんかな?
文句なくクソ野郎なのは、うららの声に惚れて勝手に声の主を妄想した挙句、えりちゃんが声の主だと勘違いしてストーキングし、実際にはうららだとわかった途端、侮蔑発言をしたオタク野郎であることは間違いない。もっとも彼はダミー先輩から鉄拳制裁をくらう。ダミー男だ!
そういった人間の黒いところを、特に最後までフォローするでもなく、人間そういうもんだわさ、と描ききっているところが特徴的で、個人的には好ましく思った。
そんな中、なにげに一番人間ができていたのは、前述したとおり、うららの友人・えりちゃん。放送部の人間関係を円滑にしていたのはこの子だった。うららが放送部でやりきれたのは、ダミーはもちろんだがえりちゃんの存在が大きい。また、この子自身は、烏丸先輩ラブなので、部長と同じく放送部でも問題なかったパターン。
そういや部長は最初だけ烏丸先輩とくっつきそうな感じの描写されていた気がするが、最終的にほぼモブ化。その恋が実るかは、なかなか厳しそうだ。だがなにげに烏丸に合う(というか烏丸とやっていける)男の一人ではあろう。メンタルこそ弱いものの、能力があり、人を立てるタイプで、烏丸にべた惚れ。烏丸にはこういうタイプが多分合う。合うは合うだろうが……うーん、頑張れ!長期戦だな。
と、2巻と決して長くないうえ、ほとんどうららとダミー先輩の夫婦漫才であった割に、周囲の人間模様もなかなか面白くて、なかなかどうして楽しめた。もちろん夫婦漫才はとてもよかったし。こういうの、安心する。
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