作・小川麻衣子。2012年1巻、2016年11巻。ボーイ・ミーツ・ガールもので楽しみにしている作品の一つ。
本巻はまるまる大鳥先輩・岬一vsマーヤ・凪、つまり弟妹兄姉バトル。派手な見た目とは裏腹に、本質的に精神戦なのは女性作家っぽいなぁと思う。先輩のちょっと黒い本音も垣間見れたりしつつ、凪と岬一の兄弟関係に迫る。
以下11巻感想。
精神バトルですよ
今回は全編にわたって大鳥先輩・岬一withアイラvsマーヤ・凪(ゾキ)戦。つまりバトル巻ですよ。ということで少年漫画っぽいバトル展開で、見開きも存分に使った派手な画が続くのだが、これは実のところ精神バトルである。
たとえば大鳥先輩の派手な立ち回りでマーヤを翻弄する時も、その動き自体に意味があるのではなくて、その動きを見たマーヤが「私もあんな風に 手足を伸ばしたかった」と自身や姉たちのことを省みるのが重要なのだし、岬一vs凪(ゾキ)にしても、どちらが強いかとかではなくて、岬一にとって凪の存在はなんなのかということが重要。
つまり精神的な戦いを、言葉ではなく身体で表現してるんやね。そういやPEACH-PITのローゼンメイデンのバトルもそんな感じだったなーと思い出すにつけ、こういうのは女性作家特有の描き方やなぁという気がする。
画が派手な割に迫力を感じられないのは、肉体的にどうこうというより、どこまでも精神的な話だからというのもあろう。一応アイラが参謀的に立ち回ってもいるし、戦闘の駆け引きもあるんだけれど、最終的にはどちらが精神的に強くいられるかというところに帰着する感じ。だから戦闘中の動きよりも、むしろ戦闘の合間合間に何を言ったか、何を感じたかのほうが重要で。
凪・岬一兄弟の絆に対する大鳥先輩の黒い本音
その中で特に印象的だったのは、やっぱり大鳥先輩の「嫉妬」発言かな↓。
大鳥先輩のこの表情はちょっと珍しい。岬一と凪の間にある、自分たち姉妹にはない特別な絆についての大鳥先輩のちょっと黒い本音。
まず、自分たちとは違う特別な関係に対する嫉妬はもちろんある。希には岬一が凪を心から信頼できるのがわからない。希はそこまで凪のことを信頼できないし、また姉のマーヤのことも岬一が兄の凪を想うようには想えないのだろう。そして、マーヤも自分を信頼していないことを知っている。兄弟の強い絆に対する羨望。
加えて、直前の「私は心臓をあげたのに…」というセリフ、これは多義的に解釈できると思うが、素直に解釈すると、凪に向けられた岬一の無条件の信頼そのものにもまた、羨ましさを感じているのだろうか。心臓まであげた自分より、凪との絆のほうが深そうに思えるのか。
希は何故突然、あまり美しいとは言えない本音を吐露したか。それはマーヤと歩み寄るだめなのだろう。希の発言にマーヤは大笑いする。そしてひとしきり笑った後、共感を口にする。そうして二人は再び対峙し戦闘態勢に入るのだが、この時に、この姉妹は少しだけ分かりあったのだろう。
凪も嫉妬してるよ
さて、嫉妬しているのは大鳥先輩ばかりではなく、凪もまた、妬心のようなものを抱いていることが、一時的に正気に戻った凪の言葉からわかる。
凪「病気にゾキ…大鳥先輩、みんな俺から奪うのが好きらしい」
岬一「先輩…」
凪が自分から何かを奪ったというもののラインナップに、大鳥先輩が含まれている。病気とゾキはともかく、ここで大鳥先輩が出てきたことは、岬一にとっては意外だっただろうか。凪が大鳥先輩のことを良く思っていないことは、岬一も知っていたが、その理由についてはわかっていなかったろう。その解答である。大鳥先輩が凪から奪えるものは一つだけ。岬一だ。岬一モテモテやね!
愛憎入り乱れる弟妹兄姉対決は、本巻最後からの岬一vs凪(ゾキ)広瀬兄弟対決でいよいよ決着を迎えそう。見た目には兄弟対決ではあるものの、キーは大鳥先輩の心臓であるし、凪とマーヤの関係だってこれで終わりじゃなかろうし、こう、色々期待してしまうね。ラブコメ脳的に。
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