作・久米田康治。元は1995年1巻。数年の時を経て、2002年大人の事情で描き下ろして完結。時期的にはかってに改蔵の頃か。
びっくりするくらい普通のラブコメ。ジャンルは逆源氏物語なおねショタカップルもの。供給少なめなジャンルなので、貴重ではある。作者らしいひねたギャグを交えつつも、社会風刺ネタもなく、一話一話が綺麗に落ちる。20代だったから描けたのだろう。作者的には眠らせておいてほしかったらしい。もう気恥ずかしくて仕方なかったろうなぁ。
途中までの部分と、数年後に描かれた描き下ろしの最終回の差は、作者自身の成長譚にも見える。ある意味ファンブック。2017年になって感想記事書かれるとか作者的にも勘弁してくれだろうが以下感想。
綺麗過ぎてびびる
新装版の表紙はかってに改蔵の絵柄だけれど、1995年に元単行本が出たくらいなので実際の絵柄は南国アイスホッケー部(の後半)の頃。
←これが昔の表紙で、本編の絵柄はこちら。よく見ると「だんな様は小学生」とかいう恥ずかしいサブタイトルがついている。新装版では削られているのもむべなるかな。耐えきれなかったか。
話は、主人公の女子高生うららが、許嫁の小学生男子・坂本冬馬を理想の男子に育てようとする逆光源氏物語。いわゆるおねショタものに入るかもしれないが、性格的にうららのほうがガキなところあるので、おねショタ好き的にこれがどう映るのかは微妙なところである。
正直言うと、話の内容自体にはあまり言うべきことがない。一話一話が本当に綺麗に落ちる。綺麗過ぎてびびる。なんだったらお涙頂戴するよ。教訓性さえあり、きっちりした少年向けのラブコメ。ほんとに久米田康治?って感じだけれど、随所に散りばめられた小ネタのギャグは確かに久米田康治である。久米田康治の名を冠しているからと思いつつ読んだが、やはり作者的にも本作については色々思うところあるらしく、「これは何かの罰ですか?」「眠っていてくれればいいものを!!」「なぜ20代の時の過ちを掘りかさにゃいかんのだ!!」と作中で嘆いている。
描き下ろしの最終回は実に「らしい」
そして唐突に始まる最終回は、数年の時を経た描き下ろし。当時の面影ゼロの改蔵な絵柄で、初っ端から作者ご本人が登場して「何かの罰ですか?」と叫び、SFめいたタイムリープネタを前触れなくぶちこみ、世界観を自ら壊しにかかる。…のだけれど、その後の話の展開は、今までのどの話よりも、本作の根幹にダイレクトにつっこむものだった。
「年の差っていう恋の障害に酔ってるだけなんじゃない?」
「どんなだろ?冬馬と同級生だったら。」
「一度だって私たちカップルに見られたことないし!!」
「同じクラスで机並べる。そんな恋がしたかった…」
うららの発言をいくつか引用してみたけれど、もう矢継ぎ早にテーマを並べ立てられている気分だ。やりたかったこと、やり残したことを全部一気に吐き出しているかのようだ。そしてうららの辿り着く答えが!
「生まれてからの月日は違っても、出会ってからの月日は同じ…
恋人同士はいつでも誰でも、同級生なんだ。」
元本編のどのセリフよりも恥ずかしいセリフいただきました。しかし、唐突に始まった非現実的な展開と、あくまでコメディカルな調子のおかげで、臭くなりすぎず演出されていて、じんわりと心にくる。
そして最後の最後は、大学生の冬馬とうららを、やはりコメディカルに描きつつ、
一緒に学んでいただきましょう。
同級生みたいですしね。(笑)
などとほんわかしたトーンを背景にナレーションいれて終わりと、眠らせておけばいいと愚痴愚痴言っていた割に、きっちり愛のある仕上げであった。綺麗に落としたがるところは全然変わってないんだ 笑。やっぱりラブコメの人だわ。