3人旅が始まって戦闘が増えてきたのだが、試験の時と異なりバトル漫画だという感じはしない。いわゆる力比べではないからだろう。なのでけっこう楽しく読めた。同じような人も多いのではないかな。本作の連載雑誌は週刊少年サンデーのようだが、実際の読者層は少年だった人たちが多そうに思うので。この前池袋でやっていたフリーレン展に野暮用のついでに立ち寄ったのだが、同じ施設でやっていたプラレール展から年齢層が界王拳10倍という感じだった。10倍は言い過ぎか。なお入らなかった模様。
以下8-9巻感想。ラブコメ回はなかった。
今回の話
いまさらに過ぎるが、多少は話をまとめるべきなのではないかと思い、メモ。
8巻
- 皇帝酒(ボースハフト)がクソまずかったので大いに酒盛りした話
- 死体を守る話で死に損なう
- シュタルク様は化物
- 貸し借りを作らないため、報酬としてくだらない魔法は絶対もらう
9巻
- 自分で自分の伝記を書く黒歴史の回収
- デンケンの墓参り
- マハト「趣味は人間観察です」
誰かさんの人生劇場
冒頭で力比べではない、つまりバトルものではないと言ったものの、ではこの話は何なのかというと難しい。冒険譚というにはあまりにも大人しい。冒険部分はコマ送りで描かれている程度で、あきらかにフォーカスされていない。そもそもの目的を辿れば、言ってしまえばヒンメルに会うことなので、にべもない言い方をすればデンケンよろしく墓参りと言えるかもしれないが、別に慰霊が目的ではないし。巡礼という感もあるが、別に宗教的なものではないしなぁ。なんの旅なんだろうねこれ。
なんの旅かよくわからんなと思ってしまうのは、色々な人の人生劇場が交錯する一方で、フリーレンの心情に触れるところがあまりないからだろう。8-9巻の範囲で言えば、エルフのいたずらに100年踊らされた哀れなドワーフのヤケクソ酒盛りが楽しかった話と、報酬を必ずもらう話くらいだろうか。特に報酬を必ずもらう話は示唆的……ではあるんだけれど、どちらかというとヒンメルの話なんだよなこれ。その意味ではクソマズ酒のほうがフリーレン的には思うところもあったであろう。
皇帝酒のように、生涯をかけて求めたものがスカという話自体はまぁ割とよくあると思われ、そういえばワンピース初期の島で宝を守るオッサンの話や、やや毛色は異なるが、星新一の拾った鍵に合う鍵穴を求め続けた男の話なんかは本質的に同じテーマかなと思い出しなんだりした。結局人にとって結果は大した話ではなく、結末にたどり着くまでのプロセスが人生なのだというところに落ち着くように思える。これは人にとっては共感しやすいが、長命のエルフにとってどのように感じられるかはわからないところではある。
しかしまぁ8-9巻の主たるところは魔族との戦いであろう。いまさら魔族と交戦する理由をもたないフリーレンは基本的に及び腰であるということもあって、どちらかというと誰かさんの人生劇場に巻き込まれる形で話が進んでいく。これは面白くないわけではない、というより面白い話ではあるのだが、話の中心にフリーレンがいないのはややつらみ。まぁでも彼女の旅はそういう旅でもあるか。
爺さん最後の戦いとフリーレンの交錯
今回出てきたムキムキ魔族と似非黄金魔族のマハトであり、マハトはかつてフリーレンが勝てなかった魔法使いの一人でもある。なのでそれなりに因縁もあるのだが、フリーレンは彼には勝てないと踏んでいるし、またそもそも誰かに勝ちたいという欲求から遠いところにいるのが彼女なので、マハト戦もあまり熱は入っていない。ヒンメル関連の話もマハトではなさそうだし。
ということで少なからずフリーレンも関わりはあるものの、マハト戦は基本的にはデンケンの話だろう。デンケンの話はNever Too Lateというよりもすべてが遅すぎた男の悪あがきといったところで、これまた多くのオッサンを呻かせるものかもしれない。客観的にはなぜその情熱を失う前に持てなかったかと思われるが、主観的には失ったからこそ持てたとは言えるだろう。失って初めてそこにあったことがわかるものというのは存外多い。というか世の中そんなのばかりだ。
ここまで書いて思ったが、デンケンのやっていることと、今まさにフリーレンがやっていることは本質的に同じ事なのかもしれない。という観点で見れば、マハト戦の結末とそこに至るまでにデンケンを真横で見ることは、彼女にとっても意味あることではあろうな。
ところでマハトの人に対する興味の持ち方が、完全に昆虫に興味を覚えた少年なのはまぁそうなのだろう。人間に興味を持ったサイコパスってこんな感じなんかもしらんね。
11巻までは……
帰省しているため、自分のリアルお姉さん(ババアと言えば命はない)の力によりフリーレンの続巻を読めているが、11巻までしかない。正確には13巻はあるのに何故か12巻がないというブックオフみたいな嫌がらせを受けている。とりあえず11巻までは読む。