『葬送のフリーレン』1巻感想:気づく前に終わった恋を顧みる旅

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久々にビッグタイトル。実はだいぶ前に1巻は読んでいたんだが、記事を書く機を完全に逃していた。そしてそのまま積んでいた。いや別にいつ書いてもいいんだろうけれど、めっちゃ流行ってる時に書いたらミーハーっぽいし(めんどくさいオタク仕草)。それで続きを読まず三国志を読んでいたのだが、曹操と検索したらサジェストでフリーレンと出てきた時にはコーヒー吹いた。そんなにか。

葬送のフリーレンはオッサンたちの心を深く打ったようで、普段は漫画アニメにさほど傾倒していないと思われる、ビジネス系のコミュニティで大いに受けたような印象がある。話に教訓性があるからだろうか。

一方で俺が感想記事を書く気にならなかったのは、このサイトの特性を考えればわかることだろう。このサイト的な見方をするならば、終わった恋の自覚をする話だからなぁ。楽しくないんだよ。……のみならず、それだけの話でもないから、というのもある。書きづらいんだよ。以下今更の1巻感想。

目次

オッサンを殺す漫画

この漫画はオッサンたちの心を打ち抜いた。その理由の一つとして、魔法が現代における技術のアナロジーに見える、というのはあるだろう。まぁこれは僕が技術者だからそう思うのかもしれず、ひょっとすると各々の専門性に重ね合わせて見られているのかもしれない。しかし魔法の性質を考えれば、やはり技術がもっともしっくりのではなかろうか。人を殺す魔法(ゾルトラーク)の話はすべての技術者が呻いたはずだ。フリーレンが最後、一般魔法に過ぎないゾルトラークを「ゾルトラーク」と詠唱してクヴァールを倒したのは、憐憫と敬意の入り交じった複雑な感情を感じる。しかしその感情について彼女は無自覚であろう。

この無自覚さが非常に厄介だ。フリーレンはとにかくそっけないが、時々感情があふれ出す時もあるように、彼女は確実に何かを感じており、むしろ繊細とすら思えることもある。感性を心の奥深くに閉じ込めており、その結果外から得られるのは脳波測定のごとく微弱な信号だ。そこから彼女の感情を読み解くのは無理難題のリバースエンジニアリングである。それが全編にわたって続く。有り体に言うと、言語化めっちゃ苦労するから感想記事を書きづらい。

一方でわかりやすい話もあるにはあって、たとえば日の出の話はそうだ。楽しそうなフェルンを見て少し楽しくなっている自分に気づいて、「私ひとりじゃこの日の出は見られなかったな」というのは、それ自体はまるで国語の問題のごとく読み方が明確でわかりやすい。

が、この話の主役はフリーレンではないだろう。日の出の話は、ヒンメルがいかにフリーレンをわかっていたのか、という話だ。つまり、ヒンメルの話なのだ。なので、話の筋そのものはわかりやすい。まー、あのヒンメルが好きになった女なのだから、フリーレンはいい女に決まっているのだよな、という話でもある。

恋情だけでは足りないが

というように、脳みそが溶けた本サイトにかかれば本作も当然のようにラブコメとして扱われるが、そのラブですらも別の言葉で表現される尊ぶべき感性と結合しているため、非常に書きづらい。ヒンメルがフリーレンに抱いた感情には、友人としての敬意も深くあるだろう。だがそれだけならば、ハイターやアイゼンが老いてなおお節介を焼くこともなかった。そこには、確実に恋情というべきものがあった。

なぜヒンメルがフリーレンにその気持ちを明かさなかったのかについては色々と考えられるが、1巻においては材料が少なすぎるためなんとも言えない。ただ打ち明けたところでフリーレンにそれが処理できたとも思えない。当時の彼女にとって、恋はあまりにも難しすぎる。しかもその難しさに対する自覚もない。

そもそも、果たして恋という言葉で表現していいのかどうかもわからない。正直少し、いやだいぶ足りない気がする。二人はパーティーメンバーであり、共に死地をくぐり抜けた仲間であり、友人であった。そこには恋と呼ばれるものもあったにしても、それだけではない。

そして彼女はヒンメルが死に立ち会って初めて、己の深いところにある感情に気づきを得た。それを自覚する旅というのは、ラブコメ的にヒジョーにエネルギーを要するので、そのまま積んでしまったのもむべなるかなといったところだ。また、ラブの上にもっと大きな概念が見え隠れしているため、書きづらいんだよな。今更になって感想記事を書くとはおもわなんだ。

という自分の気持ちを、先を知らない1巻だけ読んだ時点で記事を書いた。というのも、2巻以降を読むと、恐らく、いや間違いなく、多分感じるところが相当変わるんだよ。だから、知らないうちに書いておきたかったね。己の気持ちというのは、フリーレンじゃなくてもわからないものだ。

2巻以降も読んでいく。間に合えば池袋のフリーレン展もいく。

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