あー、これは、いろんな人の青春が、いろんな意味で、終わらせられたなー、、、と、なんとなく察した。
僕はTVシリーズを1回見たのと、漫画版を途中まで読んだだけだから、エヴァルートはとおってないのだけれど、エヴァについては常に語っている人たちがいたことはよく知っているので、彼らの気持ちは如何ほどだろうか、というのが気になった。
作品そのものというか、僕なりのオタク的な歩みの中で、常にどこかで誰かが話していたもの、という観点から、エヴァは僕にとっても重要な作品だったらしい。
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ずっと気になる作品だった
僕はガチ世代よりちょい下くらいだ。エヴァについては、後追いで中学の時にTVシリーズの再放送を一度通してみたのと、古本で手に入れた漫画版を途中まで読んだくらいだったかな。
昔の僕はゲームがメインだったし、その次は漫画で、アニメ自体あまり見てこなかったんだよね。ストリーミングサービスができた今になって始めて、アニメを見るようになった。また、若かりし頃はアニメを見るのに若干の気恥ずかしさを感じていた。宮崎事件からオタクが受け入れられるようになるまでの、ちょうど狭間の世代だった。
そういう感じだから、僕はエヴァそのものについて取り立てて思い入れがあるわけじゃない。なんだけれど、それなりによく知っているような錯覚を覚えるのは、やはりそれだけ、語っている人をずっと見てきたからだろう。僕にとってエヴァは、「常に誰かがなにかを話している」作品だった。
したがって、いわゆるファンとは違う形だが、僕にとってもエヴァは長年気にかかる作品であったことには違いないのだと思う。だからこそ、Amazon Primeでやっていたから、ではあるけれど、これを機会に、見てみようかなと、そんな気になったのだろう。
だから、丁寧に新劇場版の序・破・Q・シンエヴァと、2日かけて全部見終わった時、「自分が何を思うか」よりも、「あの熱く語っていた人たちは、何を思ったのだろうか」ということのほうが気になった。
これは、僕自身驚くべきことだった。僕は普段、自分の感想以外にまったく興味がない。実際、このサイトには1000記事以上の漫画のかんそー文があるのだが、どれもこれも、「僕が何を思ったか」しか書いていない。さらにいえば、僕は数年間漫画の感想ブログなんてやっている癖に、他人の感想ブログを何一つ知らないし、知る気もなかった。
そんな僕が、Amazon Primeで何時間も、ずーっと、いろんな人の感想を読み漁っているのである。多分映画見ている時間より長かった😁
感想が面白かった
いや、どの感想もね、面白かったよ。感想の一つ一つに、一人のオタクの人生が詰まっていたね。
一緒に卒業できた人
いくつか紹介させてもらうなら、たとえばこれなんかは、一緒におとなになったオタクの、比較的中立的な見方じゃないかな。
「作風が大人になった」、とはフツーの映画ではちょっと出てこない感想だよね。お前誰だよっていうね。でもエヴァに限っては、この感想はそれこそフツーなのだ。多かれ少なかれ、皆同じようなことを言っている。その言葉の裏返しには、「俺も大人になったなぁ」という想いがあるだろう。
最後に「さようなら、ありがとう」と気持ちよく「卒業」している様は、模範的なファンのあり方ですらあるかもしれない。
ファンでは一番多いタイプじゃないかな?
中退した人
で、キレイに卒業できた人は「よかったね😉」でいいんだけれど、中にはそうじゃない人もいる。感想としては、そちらのほうが熱いかもしれない。
庵野氏自身は何度も何度も留年を重ねて、なんとか吹っ切れて「卒業」出来たのかも知れない。
では、私は、今の心境はどうなのかと問われれば「退学」ではないが、そう、もう少し「留年」して、
最終的には「中退」ですかね。
「中退」という表現が秀逸かつ、率直な想いだと思った。特に最終的なヒロインについては不満が大きいと見て取れて、その気持ちはカプ厨である僕もよくわかるつもりだ。実際見ていて、「これ、ずっとシンジxアスカを心の糧にしていた人大丈夫かなぁ」とよくわからない心配をしていた。
中にはかなり辛辣な意見もある。
「死んだ」という痛烈なタイトルから始まる批評は、あまりにもボロカス過ぎて逆に笑ってしまった。いやでもごめん、本人は笑い事じゃないよね。最後の「今まで費やしてきた時間とお金を返してほしい」にすべてが込められている気がした。
実際、この人にはそれだけのことを言う資格があるんじゃないかと思う。映画の制作費にはこういう人たちの落とした金も少なからず含まれていただろうし、また何より、エヴァという作品の名声を下支えしてきた人たちでもあるからだ。
「卒業できねぇよ」という生徒の想いも、受け止めなきゃいけないんじゃないかな。
まぁ、この人も「中退」だろう。中退勢も相当数いるものと思う。
そもそも入学してなかった人
さて、もしかしたら実は一番多い、サイレントマジョリティなのではないか?と思うのが、僕も含む「そもそも入学してなかった人」である。入学はしていないが、「入学する人をずっと見てきた人」である。作品とこういう距離感の人は、通常の作品ではまずない。というか、なりえない。
こういう人の感想は、どんなに長文でもどこか冷めたところがある。
「たいしたファンじゃない」と言っているが僕からするとけっこうファンに見える。ただこの人はディープなファンを知っているので、「たいしたファンじゃない」ということになるんだろう。
変な話だが、「卒業者」「中退者」よりもシン・エヴァを一つの作品として評価する姿勢がうかがえるように思える。というより、卒業者も中退者も、「評価」をするにはあまりにも距離が近すぎるんだろう。
なので、作品そのものに対してはこの方くらいの見方が公平であるように感じた。まぁ、単に僕の感覚がこの人の感想に近いというだけかもしれないんだが。
しかし、「就活サイトのCMみたい」という身も蓋もない表現には思わず笑ってしまった。
あと、そもそも入学してない勢の中には、エヴァないしエヴァファンに対し反感を抱いていた人も少なからずいて、それはひょっとすると本作をもっとも高評価した層かもしれない。
「カタルシス」とまで表現するこの方は「いったい何があったんだ」という感じですが、まぁきっと色々あったんでしょうね。エヴァオタは強烈なのもたくさんいたからなぁ……(遠い目)。
この方の物語に対するスタンスは特徴的。
万人にはオススメしません。25年分の鬱積と物語を巡る様々な「円環」を知る人でなければ楽しめない作品だとも思います。
世界は円環であってはならない。世界は螺旋であるべきだ。迷い逡巡しながらも前に進む世界であってほしい。私は、そう考えます。
僕は物語で描かれる理想系には大別して二種類あると思っていて、一つは「永遠の周期関数」型、もう一つは「インパルス関数」型だ。どちらも現実には存在しえないという意味で理想には違いない。
物語に実質的な意味を求める人は、インパルス型の理想を求める傾向にあると思うんだが、シン・エヴァは典型的なインパルスタイプだったので、そういう人でも評価できるんだと思う。
なお、カップリングは典型的な永遠の周期関数型の理想なので、カプ厨とか絶対理解できないタイプでもあると思われます。エヴァのCPにハマった人は、シン・エヴァ受け入れられない人多いと思う。
他人の感想は面白い
みんな思い思いのことを語っていて、本当に面白かった。これだけ多くの人に、内面を率直に吐露させる作品は、今後果たしてお目にかかれるだろうか。なんとなく、このインターネット時代にはもはや無理なんじゃないか、という気がする。最後のテレビ世代が残した、再現できない一大ムーブメントだったように思う。
エヴァという作品は庵野監督のものだとしても、エヴァが巻き起こしたブームはファンみんなによるものだし、また、その過程でファン一人ひとりが築いた内面の世界観は、各々のかけがえのないものだから、一緒に「卒業」してもいいし、「中退」してもいい。何をしても、自分の人生は続く。
僕としては、祭りの渦中にいた人を羨ましく思う気分と、「あー、あそこにいなくてよかったー」という気分の両方がある。まぁ後者のほうが強いかな😂
そして、「ああ、他人の感想を読むってのは、案外面白いんだなぁ」と、5年以上も漫画の感想ブログなんてやっておきながら、いまさらになって気づくのであった。
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