作・衿沢背衣子。2016年1巻。2017年、全3巻にて完結している。
タイトル見て笑ったよ。だいたいどのクラスも女子はヤバいんちゃうかなぁ 笑。今も昔も。男子目線やけどね。
話の内容は群像劇ですこしふしぎな思春期ラブコメ。思春期の女子のわからなさを、「無用力」とかいうさらにわからん力で表現しつつラブコメっている。女子と言いつつ、一番印象深く面白かった話は男の娘の話かな。
「週刊少年ガール」と同じようなテーマかしら。以下1巻感想。
ラブコメ群像劇
群像劇的なラブコメ漫画の良いところは、絶対に長編では描かれなさそうなカプの話があるところだと思う。この漫画もそうで、登場人物は皆特別目立つところがあるわけでもない普通の少年少女たち。彼と彼女が、なにげない日常の中で思春期を小爆発させている情景が、なんともノスタルジックだが、別に俺にこんな過去があるわけではなかったなとか思うのであった。でもやっぱり懐かしい感じがするもんなんだよ。
女子力(謎)
んー、目立つところがないと言ったけれど、一応妙な能力を持っていることは持っている。女子が。そんな女子を集めたクラスがあって、それでタイトルが"うちのクラスの女子がヤバイ"というわけだが……しかし、その力というのがドキドキすると人の身体が透けて見える(内臓まで)、とかテンパるとモスキート音を発するとか、おおよそ役にたたないものばかり。その名も"思春期性女子突発型多様可塑的無用念力"なるほどわからん。
この力は"無用力"と呼ばれ、思春期の女子にのみ発言することがある無意味な力として、作内の世界ではそれなりに有名な力であるらしい。もちろんそんな無意味な力を使って異能力バトル……になるはずもなく、ただただ役に立たないばかりである。
作中では、この力が発現する理由も、また力の内容が何故そういったものかということも、まったく言及されない。思春期の女子だから、で済まされる。つまり、どうでもいいんだろうと思う。
女子たちの、自分自身にさえよくわからん感情が、よくわからん力となって発現している。その事実だけが重要で、能力の中身とか、理由とか、そんなのは瑣末なこと。このあたり、「週刊少年ガール」を彷彿とさせる。これも一つの女子力だろうか。
もっとも、中には"記憶を消す"という大技を持った子もいるので、すべての能力が本当に無意味というわけでもないようだ。
女子力(男)
そんな思春期女子の謎めいた女子力を背景に紡がれる話は、たいていなにかしらラブが絡んでいる。お互いちょっと照れていたり、素直になれなかったりする距離感の甘酸っぱさよ。うーん青春ラブコメ。
だが一番ラブコメしていたのが、男の娘・リュウとその友人・鱈橋の話。どう見ても女子な女装男子に女子力が発現して、喜びが滲み出ている男の娘と戸惑う友達↓。
「無用力あったら女子じゃん…!」
嬉しそう。その反応に唖然とする友達。
その後、自分の無用力を見せつけようとするリュウに対し、リュウが来る時部屋をノックしろと言ったり急に部屋を片付けたり、一緒にいるのを避けたりと、あからさまに態度が変わる鱈橋のやりとりが、とっても青春で思春期。急に冷たくなった鱈橋にリュウはしびれを切らして、二人は喧嘩。
「言いたいことあんなら言えよ 鱈橋 最近おかしいぞ!」
「おかしいのは そっちだろ! 急に女子かもってなんだよ!」
「どっちだって変わんないだろ」
「変わる!そこめちゃくちゃ重要だから!」
鱈橋の言葉に、リュウは何も言わずその場を去る。
まぁ……重要だよね。だからこそ、リュウは無用力が発現して喜び、その後もウキウキしながら、その世界の女子の象徴たる無用力を、鱈橋に見たか、見たかと、しつこく問い詰めたわけだ。
必ずしも恋愛的感情があるとは言い切れないが、まったくないとも言い切れないこの感じが……よかった。
愛だの恋だの言う前に、まず二人はいい友達なんだろう。だからこの話は、リュウが一番の"友達"として、まず鱈橋に認めてほしかった……という風にも取れるんだけれど、そうだとすると、「変わる!そこめちゃくちゃ重要だから!」という鱈橋に対して、言い返すことができたろうとも思う。
でも、そんなら恋愛感情なの?というと、それはそれで逆に浅薄な気がする。だって二人は友達だから。その関係を恋愛の一言に収束させてしまうのはよろしくないだろう。
このもやもやした感じがなんとも味わい深い。やー、うん、よかったね。
他の話も、思春期らしいわからなさを残したまま、けれどどこか爽やかに、味わい深いラブ入ったコメが多くて素敵な漫画やったよ。全3巻なので、折を見て2,3巻も読もうかな。
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